( 188308 )  2024/07/07 01:02:51  
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岸田文雄首相 

 

【森永康平の経済闘論】 

 

6月から始まった定額減税。岸田文雄政権の目玉政策といってもいいのだろうか。同27日に首相官邸で岸田首相が「定額減税の効果がだんだんと出てきている」と発言したことが報じられたが、一方で定額減税に対する世論調査をみてみれば、「評価する」が35%なのに対して、「評価しない」が56%となっており、どうも政策への評価が正反対になっているようだ。 

 

【イラストで解説】「中間所得者にもうれしい」収入で変わる定額減税 

 

実質賃金のマイナスが過去最長の25カ月連続となるなかで、定額減税の評価が低いのは、1回限りであることが理由だろう。また、所得税の減税額を給与明細に明記することが企業に義務付けられたことも評判が悪い理由の1つとなっている。帝国データバンクの調査によれば、企業の約7割が「事務負担が増えた」と回答している。 

 

そもそも今回の定額減税は仕組みが複雑であり、一括で4万円が振り込まれるわけではなく、所得税については所得額によって減税分にあたる3万円の振り込みタイミングが分かれ、住民税についても昨年の所得に応じて計算され、確定した税額から1万円を減税して残った額を11カ月に分けて毎月徴収されることになる。定額減税によって企業は負担が増え、家計は効果を実感しにくい複雑な仕様なのだ。 

 

実施のタイミングもよくなかった。電気・ガス料金への補助金が終了し、6月の使用分から家計の負担は増加する。なかでも関西電力や九州電力の管轄エリアでは標準世帯で前年から4割を超える値上げ幅となる。経済産業省は、8月の使用分から3カ月間、電気・ガス料金への補助金を再開すると発表したが、暑くなりクーラーの使用量が増える6月と7月は補助金がなく、再び寒くなり暖房の使用量が増える11月以降は再び補助金が切れるという、なんともちぐはぐな状態だ。 

 

岸田政権は無策のように批判されることもあるが、減税や補助金など政策自体は複数行っている。しかし、そのやり方やタイミングに問題があるため、いまいち支持率の向上にはつながっていない。 

 

政策はシンプルな方がいい。せっかく減税策を打つのであれば、消費税の減税に踏み込み、さらには電気代の補助金についても再エネ賦課金の見直しをして目先の家計支援をしつつ、中長期でのエネルギー戦略に基づいた巨額の投資プランを国民に提示すべきだろう。 

 

森永康平(もりなが こうへい) 経済アナリスト。1985年生まれ、運用会社や証券会社で日本の中小型株のアナリストや新興国市場のストラテジストを担当。金融教育ベンチャーのマネネを創業し、CEOを務める。アマチュアで格闘技の試合にも出場している。著書に父、森永卓郎氏との共著『親子ゼニ問答』(角川新書)など。 

 

 

 
 

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