( 188833 )  2024/07/08 16:05:45  
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長野市街地を走るちとせ代行の車両。ガソリン価格高騰に悩まされながらの営業が続いている 

 

 長野県のレギュラーガソリン1リットル当たりの平均小売価格が17週連続で全国最高値となった。長野市で個人で自動車運転代行業を営む村岡孝さん(73)は「人件費も車両の維持費もかかる中、ガソリンの高騰は痛い」と漏らす。新型コロナウイルス流行下の需要低迷期は脱した。走ればその分ガソリン代はかかるが、売り上げを伸ばすことで影響を食い止めようとしている。 

 

【ひと目で分かる】長野県が17週連続最高値 ガソリン価格を全国平均と比較 

 

 2日午後5時半ごろ、小雨が降る長野市街地。村岡さんが営む「ちとせ代行」のあんどんを屋根に乗せた軽自動車が、南千歳町の営業所を出発した。「途中でなくなるのが怖いので、営業前に給油します」と、ハンドルを握る70代の男性。給油所に寄り、レギュラーを千円分給油した。 

 

 店頭に表示された1リットル当たりの販売価格は188円。ちとせ代行は給油所の運営会社との契約で10円安く給油できているが、男性は「何年か前まで110円台だったのに…」と言った。県内の平均小売価格は、2016年には110円台だったのに比べると1・6倍の水準だ。 

 

 軽自動車を10台所有するちとせ代行。19年に台風19号豪雨で長野市内に大きな被害が発生し、需要が激減した。20年からは新型コロナの感染拡大。飲食店利用者が減り、稼働車両を4台に絞ったが、利用が3件しかない日も。4台を動かすには、2人一組の運転手8人と電話番の計9人が必要。仕事がなくても人件費に加え、車両には1台当たり年間約37万円の維持管理費がかかる。それでも「飲酒運転撲滅やお客さんに離れないでいてもらうために毎日、車を出した」と村岡さん。4年苦しんだ後に、今度はガソリン高が襲ってきた。 

 

 現在、需要が回復し、記者が同乗した車両は2日の夜に計11件の代行をこなした。ちとせ代行は平日には7台、利用客が多い週末には9台ほどを稼働。村岡さんによると、燃料費は月に計約35万円かかり、台数を絞った新型コロナ下の3年前と比べて毎月5万~6万円ほど余分にかかっているという。村岡さんは昨年10月、ついに利用料金の5%値上げに踏み切った。 

 

 

 「便利だと感じてもらえるための工夫を重ねないといけない」。村岡さんはこの間、クレジットカードやQRコード決済に対応できるよう運賃の支払いシステムを整備。現金で支払った顧客には、おつりに新紙幣を渡すことも準備するという。運転手をつなぎ留めるために、昨年5月と10月の2度、時給を50円ずつ上げた。 

 

 「ガソリン高が経営を圧迫しているのは事実だが、売り上げを伸ばすことしかできない」と村岡さんは言う。「お客さんの心をつかむサービスを、もがきながら探しています」(浜田朝子) 

 

 

 
 

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