( 189168 )  2024/07/09 16:10:00  
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アベノミクスを進めた故・安倍晋三元首相 Photo/gettyimages 

 

2023年度、世界の株式は大きく上昇した。それに伴い、GPIFの(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用成績も過去最高を記録した。 

 

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7月5日に発表された2023年度のGPIFの運用実績は、45兆4153億円の黒字となった。国家予算の半分近くを1年間で稼いでしまった計算だ。 

 

2月22日に日経平均株価が1989年に記録した最高値を約34年ぶりに更新した。このときは、証券会社や経済系のメディアは歓声をあげ新NISAへの注目も高まったが、総じて国民は「庶民には恩恵がない」と冷ややかだった。 

 

しかし、株価は企業の利益を反映しているもので、その利益の一部は国民にも還元される。それが現在の賃金の上昇である。利益に対して賃金の上昇が少ないという声があるかもしれないが、利益がなければ賃金の上昇もない。 

 

なにより、庶民に恩恵があることを証明しているのがGPIFの運用状況である。将来の年金の足しになるわけだから。 

 

テレビや新聞は「株高の恩恵は大多数の庶民には乏しい」と主張し、実質賃金がなかなか上回らないとネガティブな報道も散見された。 

 

たしかに実質賃金はマイナスが続いているが、それでも名目賃金は上がり続けている。株高が一般国民に恩恵がないというのは言い過ぎだろう。 

 

日本株の上昇は、2012年12月に発足した安倍晋三内閣によるアベノミクスによって始まった。当時の株価を皆さんは覚えているだろうか。1万円を割れていたのである。 

 

民主党政権が倒れ自公連立による安倍内閣が発足してから株価は上がりはじめ、今年2月についに4万円に到達したのだった。 

 

このような株高に対してその利益は一部の人のもので、一般国民には恩恵がないという声もあるが、一面的な見方にすぎないだろう。 

 

この日本株の上昇は、NISAや今年からの新NISAなどを通して、若者や中堅世代の自己資産の形成や運用についての理解を深めているのが一つの例だ。 

 

日本証券協会の資料によれば、2024年の新規口座開設数は3月までに170万件に達して前年同月比の3.2倍になったという。 

 

さらに国民に株高を均霑する経路がGPIFだ。 

 

 

GPIF「2023年度 業務概況書」より 

 

GPIFとは、政府が集めた年金保険料を運用している組織である。この運用益が株高で上がっていれば、年金として国民に還元されるので国民にも利益がある。 

 

実際、今回のGPIFの発表によって、GPIFの運用資産は年間に45兆円も増えた。 

 

■GPIFの2023年度の運用実績 

 

GPIFは2006年に発足したが、市場で年金運用を始めたのは01年からだ。これまでの累積収益は約153兆8000億円にのぼっている。特に日本株が上昇を始めたアベノミクス以降に顕著に運用成績があがったのだ。 

 

では、どのようにしてGPIFの運用成績が上がったのか。これを知れば、株高が国民の恩恵になることをよく理解していただけるだろう。 

 

つづきは、後編「なんと150兆円超も儲かっていた…!日本の「年金運用」がここにきて絶好調な「本当のワケ」と、アベノミクスとGPIFがもたらした「株高の真実」」でお伝えしていこう。 

 

原田 泰(名古屋商科大学ビジネススクール教授 元日本銀行政策委員会審議委員) 

 

 

 
 

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