( 189223 ) 2024/07/09 16:56:28 0 00 親の感情的な反応は、思春期が終わって普通ならまた以前のような親子関係に戻れるような時期になっても、子どもの気持ちが元に戻らないことも…(写真:horiphoto/PIXTA)
「ウザい。消えろ」など思春期、反抗期の子の暴言……。親としては頭にきますよね。まったく平気という人はいないと思います。つい頭にきて「いいかげんにしろ!」と叫ぶなど、感情的な反応をしてしまうこともあるかもしれません。
でも、その気持ちは本当によくわかるのですが、それでも親御さんたちに伝えたいのは、そうした反応が完全に逆効果になるということです。
火に油を注ぐことで暴言の応酬になり、子どもはますます反抗的になります。家の中の雰囲気が最悪な状態になり、親子ともどもストレスがマックスに達します。
■親は「存在否定」「人格否定」してしまいがち
さらに一番気をつけなければならないのは、怒りのあまり言ってはいけない存在否定や人格否定の言葉を子どもにぶつけてしまうことです。
存在否定とは「お前なんかいなければよかった」「生まなければよかった」など、その子の存在そのものを否定する言葉です。人格否定とは「お前は卑怯だ」「本当にずるい」「口ばっかりだ」「うそつき」「情けないやつ」など、その子の人格を丸ごと否定する言葉です。
こういう言葉は深く子どもの心を傷つけ、親に対する不信感につながります。そうなると、思春期が終わって普通ならまた以前のような親子関係に戻れるような時期になっても、子どもの気持ちが元に戻らないことがあります。
このようなことにならないために、私は思春期の子どもが暴言を吐く背景を親がしっかり理解しておくことが大事だと思います。理解すれば怒りが少しは和らぐのではないでしょうか?
怒り(イカリ)の反対は理解(リカイ)です。暴言の背景にあるのは、ひと言でいうと思春期特有の体と心の不安定さです。具体的には次のようなことです。
●増加する性ホルモンが扁桃体を刺激して感情が爆発 第2次性徴である思春期には性ホルモンがたくさん作られます。その性ホルモンが扁桃体を刺激します。扁桃体は感情をつかさどっているので、性ホルモンが増えることで感情が爆発しやすくなります。それがイライラや暴言を引き起こします。
●体の急激な変化で自分のトリセツがわからない 思春期には今までにない速さで自分の体が変化し、そのことに戸惑いを感じます。同時に性への関心が高まることも気持ちの不安定さにつながります。とにかく自分のトリセツがわからず、自分でも持て余している状態です。
●前頭前野の未発達でキレやすくなる 京都大学の森口准教授によると、12才~15才(中学生)の頃は小学生の頃より欲求をコントロールする力が一時的に下がりキレやすくなるそうです。というのも、中学生は小学生よりさまざまな欲求が増えるのに、欲求を抑えるブレーキの前頭前野がまだ十分に成長していないからです。
■高校・大学と成長するに連れてバランスが取れるように
小学生はブレーキも未発達ですが、アクセルもまだそれほど強くありません。それでうまくバランスが取れていて、それほどキレないのです。
その後、高校・大学と成長するに連れて前頭前野が成長するので、またバランスが取れるようになっていきます。
●自我の確立という大きなテーマに挑んでいる 思春期の子は精神的にも自我の確立という大きなテーマに挑んでいます。例えば、「自分は何者なのか? どう生きるべきか?」などと悩んでいたりします。自分の土台を確立するための葛藤でありこれも不安定の要因です。
●権威的な存在への反発 「親や先生は本当に正しいのか? 言うこととやっていることが違うのではないか?」など権威的な存在への疑いや反発も感じています。また「世の中はこれでいいのか? 間違っているんじゃないか?」などの疑いも持ち始めています。それもまた不安定さにつながります。
●友達関係での気づかいや悩み 思春期の子は親や先生などの権威に反抗して自我を確立する時期ですが、それは簡単なチャレンジではなく不安に満ちたものです。そこで、一緒にチャレンジしてくれる同士としての友達の存在が重要になってきます。
その結果、友達とよい関係を築くことに非常に気をつかうようになります。つねに友達との関係で自分の立ち位置や振る舞いに気を配り、自分がどう思われているか、孤立していないかなど、必要以上に心配しています。これもまた大きなストレスです。
●学力や将来への不安 勉強がどんどん難しくなり、学年が上がれば上がるほど学力差が大きくなるので、勉強について焦りを感じる子も増えていきます。学力は進路の決定にも影響してきますので、同時に将来への不安も感じるようになります。気にしてないように見えても実は気にしているのです。
●多忙ですり減っている 思春期の子たちは本当に忙しいです。学校、部活動、委員会、塾、習い事、リアルとオンライン両方での友達との交流など気が休まるときがありません。家に帰っても宿題やら何やらで追いまくられます。以上のようなことが反抗期の子の暴言の背景にあります。つまり、仕方がない面があるのです。このことをしっかり理解しておきましょう。
■まずは深呼吸をしてその場から離れる
もちろん、それでもイラッとすることはあると思います。そういうときの私のお勧めは、深呼吸とその場から離れることです。
とりあえず胸いっぱいに息を吸って、できるだけゆっくり吐き出しましょう。1回やるだけでかなり違います。また、イライラしながらその場にいると結局子どもにぶつけてしまいますので、その場から離れるようにしましょう。
この他にもいろいろな方法があると思います。アンガーマネジメントで検索して自分がやりやすい手法をいくつか身につけておくことをお勧めします。
とにかく、できるだけ家を子どもにとって居心地のよい場所にしてあげてください。そうすれば、子どもは外でイヤなことや大変なことがあっても家に帰ってきてくれます。そして、家でリラックスして充電することができます。
家が居心地が悪くて居場所がない場合、家に帰ってくるのがイヤになります。そして、居場所を外に求めるようになってしまいます。これは大変危険なことです。
反抗期の子への具体的な対応方法については、こちらの過去記事もご参考にしてください。
反抗期の子を絶望させる「親たちの最悪な対応」 難しい時期を乗り越えるための「心得6か条」
親野 智可等 :教育評論家
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