( 189373 )  2024/07/10 01:54:57  
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松本剛明総務相 

 

ふるさと納税の利用者に対しポイントを付与する仲介サイトを通じた寄付の募集を禁止する告示を巡り、総務省とサイト運営大手の楽天グループが対立している。同社はポイントの原資が自社負担だと主張し、9日に告示への反対署名が100万件を突破したと発表した。総務省は原資に自治体からの手数料が含まれる可能性を指摘し、制度改善へ理解を求める。ただ、ポイント禁止は自治体の収入増につながらないとの声もあり、制度のさらなる適正化が求められる。 

 

【画像】総務省告示を巡り、反対の署名を呼びかける楽天グループのホームページ 

 

■総務省「手数料高止まり」 

 

「コンセンサス(合意)も取らず『ポイント禁止』とかいうやり方に憤りを感じる」 

 

楽天グループの三木谷浩史会長兼社長は6月28日、X(旧ツイッター)にこう投稿した。 

 

仲介サイトの多くは、返礼品を掲載する自治体から手数料を受け取る一方、寄付者の囲い込みのため寄付額に応じたポイントを付与している。総務省はポイントの原資に自治体の手数料が含まれており、サイト間の競争激化によって、平均して寄付額の1~2割とされる手数料が高止まりしている可能性があると指摘。令和7年10月から、ポイント付与の事実上の禁止に踏み切った。 

 

■楽天「ポイントは自社負担」 

 

楽天は「ポイントは自社負担だ」と主張する。ポイント付与ができなくなれば、同社が確立しているポイント経済圏の弱体化につながりかねないという事情もあるとみられ、撤回を求める署名活動を開始。9日に署名総数が100万件を突破したと発表した。 

 

松本剛明総務相はルール変更について「(制度の)適正化を目指すものだ」と理解を求めるが、実際に手数料の高止まりが解消されるかには疑問の声も上がる。自治体側はより多くの寄付を集めるために、高い経費を払ってでも知名度のあるサイトに頼りたいためだ。 

 

また、ポイント付与ができなくなることで、各サイトは差別化へ向け使いやすさ向上などに資金を投入する必要もある。 

 

こうした背景を踏まえニッセイ基礎研究所の高岡和佳子主任研究員は、今回のルール変更による手数料高止まりの改善は「うまくいかないのではないか」と分析。自治体の収入増へ向け「自治体に、安く寄付を集めるほうがメリットがあるというインセンティブ(動機付け)を与えることが必要だ」と指摘した。(根本和哉) 

 

◇ 

 

 

ふるさと納税を巡っては、寄付額の拡大に伴って自治体による過度な返礼品競争や、仲介サイト間のポイント競争などが過熱し、制度の趣旨にそぐわないとの声が出ている。総務省は適正運用に向け、継続的に規制を強化してきた経緯がある。 

 

ふるさと納税は地方自治体の活性化を目的に平成20年に開始。当初は手続きの煩雑さなどから利用が広がらなかったが、27年に確定申告が不要となる「ワンストップ特例制度」を導入し、寄付額の上限を引き上げたことなどにより、利便性が向上。同年を境に寄付額が爆発的に増加した。 

 

一方で、寄付の獲得を巡る競争は過熱。返礼品として過度に高級な商品や地場産品でない商品券などの提供が相次ぎ、制度の趣旨に反するとの批判も出た。こうした事態を受け総務省は29年に返礼品を寄付額の3割以下の金額に抑えることを、30年には地場産品に限定することを要請。令和元年には、返礼品と募集経費を寄付総額の5割以下とする基準も設定した。 

 

近年は仲介サイト間でポイント競争が過熱。総務省は今年6月、ポイントを付与する仲介サイトでの寄付募集を、来年10月から禁止することを発表した。 

 

寄付額は令和5年度に1兆円を突破する見込みだが、行き過ぎた競争に対して行政が規制強化を繰り返す状況から、早期に脱する必要がある。利用者の混乱を避ける上でも、制度の安定した運用が望まれる。(飛松馨) 

 

 

 
 

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