( 189523 ) 2024/07/10 16:24:42 0 00 毀誉褒貶(ほうへん)の渦中にある「FRISK SPARKLING(フリスク スパークリング)」。希望小売価格は税抜き183円で、今後は量販店などでも順次販売を予定している。なお、一時的な精神的ストレスや疲労感を軽減するとされるGABAを配合
ダイドードリンコが新感覚の炭酸飲料「FRISK SPARKLING(フリスク スパークリング)」を発売した。強刺激と冷涼感、すなわち「FRISK(フリスク)」を食べた時の感覚を味わえるという。ところが、実際に飲んだ消費者がネガティブな内容をXに投稿すると、インプレッション数は2300万超えに。毀誉褒貶(ほうへん)の渦中にあるこの新商品はどうして生まれたのか。同社に疑問をぶつけた。
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2024年5月下旬、飲料業界がどよめいた。タブレット菓子として有名な「FRISK(フリスク)」ブランドを商品名に冠した飲料が発売されたのだ。
その名は「FRISK SPARKLING(フリスク スパークリング)」。日本はおろか、世界を見渡しても初のコラボだ。
この衝撃の飲料を商品化したダイドードリンコ(以下、ダイドー)によると、特徴はやはりFRISKタブレットをイメージしたミント成分による強い刺激と持続する冷涼感。仕事・勉強の合間や運転中など、気分をリフレッシュさせたい時に向くという。現在の販路は同社の自動販売機が中心で、一部ローソンでも取り扱いを始めている。
そして、発売早々、実際に飲んだ消費者が「まずい」とネガティブな感想をXに投稿したことで、FRISK SPARKLINGへの注目はより大きなものに。インプレッション数は驚異の2300万超えだ(24年6月19日時点、投稿は同月10日。関連する話は本文後半)。
なぜ、あのフリスクなのか。そして、Xでの悪評についてのダイドーの率直な見解は? 本記事ではこうした疑問について、同社への取材を基にして展開していく。
まず、ダイドーはなぜフリスクコラボ飲料を商品化したのかについてだが、その経緯はとても驚くものだった。
というのも、FRISK SPARKLINGはFRISKの名前がダイドー社内で出る前の段階で、中身の開発からスタートさせている。当時は新型コロナウイルスが猛威を振るい、消費者の生活が激変した21年。コロナ感染に対する不安や行動制限によるストレスなどが原因で、メンタルの不調を訴える人が続出していた時期だ。「心の健康」を意識する風潮が生まれたことは、まだ記憶に新しい。
ダイドーはその機運に着目した。同社はブランドメッセージに「こころとからだに、おいしいものを。」を掲げており、コロナ禍の心理ストレスに焦点を当て、心の疲労やストレスに働きかけるリフレッシュ飲料の開発を目指したのだ。
ダイドーでマーケティング部の部長を務める坂本大介氏によれば、開発で苦労したのはリフレッシュに欠かせない「刺激」の調整だ。「まずは刺激があり、その刺激がきっかけとしてリフレッシュにつながる」と考え、リフレッシュに直接的・体感的につながるミント系をセレクト。そのミントの強さとおいしさのバランスに最も苦労したのだという。
刺激を強くするのはそう難しいことではないが、し過ぎるとおいしさは損なわれる。そのバランスの調整について試行錯誤が続いた。
では、FRISKブランドの話はどこにいったか。まだこの段階では、その文字は見当たらない。開発が進み、中身の商品化が現実味を帯びたところで、より精緻なコンセプトや商品企画の検討を始めたという。
そこで浮上したのが、「刺激を通して、心をリフレッシュする」というコンセプトが消費者に伝わりにくいのではないかという懸念だ。そして打ち出し方を模索する中で、「FRISKのミントの刺激と持続する冷涼感は、当社が目指しているリフレッシュの印象に近い」という意見が出てきた。FRISKとは原料が異なるにもかかわらず、FRISKがイメージされたというのは興味深い。
そこから「温めているコンセプトは、『FRISK』の一言で実はシンプルに伝わるのではないか」と話が膨らみ、コラボ案が具体的な検討課題に入った。そして試作品を持参し、実際にFRISKブランドとの交渉に臨むことになる。
結果はどうだったか。当のダイドーサイドは「このコラボは一筋縄ではいかない」と覚悟していたが、蓋を開ければ高評価。FRISKブランド側は「FRISKの感覚に近い、面白い飲み物」と好意的だった。
その後の本格的な検討の末、ダイドーが目指した「心の疲労やストレスに働きかけるおいしいリフレッシュ飲料」がFRISK SPARKLINGとして生まれることになったという。
他社の巨大ブランドの力をいわば借りることになったわけだが、一企業としてためらいはなかったのか。ダイドーの奇策にそんな疑問が湧くが、坂本氏の答えはこうだ。
「世に問える新しいコンセプトをせっかく生み出しても、それが消費者に伝わらず、評価されないままで終わってしまったら意味がない。当社の意図をきちんと伝えられるFRISKブランドとのコラボはベストな選択だったと思う」
●流通業界の評価は高いか、低いか
長い年月をかけて誕生したこの世界初コラボ商品だが、冒頭で示したように、Xではネガティブな投稿内容が話題になり、幸先がいいとは言えないスタートを切った。出ばなをくじかれたように思えるが、ダイドーはどう受け止めているのか。
坂本氏は「冷涼感や刺激を求める人にはぴったりな飲料だと自負しているが、求めていない人の間では好みが分かれるのは当然だろう」と説明。ただ、良くも悪くも消費者の話題に上がれば、「FRISK SPARKLINGを求めている人に届く可能性が広がる」と前向きだ。
なお、卸やバイヤーなど流通業界関係者から寄せられる期待は大きい。「今までにない新しいジャンルの飲料」「FRISKを食べたことがある消費者が想像するであろう刺激や冷涼感を上回るサプライズがある」と、新規性を中心に高く評価する声が多い。
最後に、参考までに筆者の感想をお伝えしておこう。一口飲むとサイダーを連想させるほのかな甘さと控えめな炭酸の刺激が口の中に広がり、喉から食道あたりを冷涼感が覆う。まさにフリスクを食べた時の「すーすーする」感覚だ。
味そのものはミントの刺激を好む人なら「はまる」という印象で、このあたりについて賛否が分かれるのは納得だ。ただ、中毒性が高い味わいで、気に入った人はまた手に取ってしまうと感じた。
筆者はおいしく味わうことができ、1本飲み終わるころには体の内側が冷涼感で満たされ、体全体が冷たくなった感覚を覚えた。しゃきっとしたいシーンで重宝されるコーヒーや強炭酸飲料とは一線を画した「リフレッシュ飲料」と言える。
星野 真唯
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