( 191018 )  2024/07/15 02:07:20  
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社会問題化する保育施設の不適切な保育。保護者として、我が子を守るためにできることはあるでしょうか(写真:yuu / PIXTA) 

 

暴力や激しい叱責など、保育施設において子どもの心身を脅かす「不適切」な行為が発生しています。いま保育の現場はどうなっているのでしょうか。長年、保育問題に取り組んできた「保育園を考える親の会」アドバイザー・普光院亜紀さんの新著『不適切保育はなぜ起こるのか──子どもが育つ場はいま』から一部を抜粋し、その背景を3回シリーズでお届けしています。2回目の今回は「保護者が不適切保育から子どもを守る方法」について考えます(前記事:“お利口な”子が多い保育施設に潜む「不適切保育」) 

 

【画像】不適切な保育が問題になる今、親にできることを確認しよう 

 

■保護者が子どもを守るために 

 

 不適切保育の問題を、施設を選択した保護者の自己責任にしてはならない。しかし、そういった保育に出遭ってしまわないために、あるいは出遭ってしまった場合に保護者はどうすればよいのかについて、ふれておきたい。 

 

 「不適切保育」から子どもを守るために保護者にできることとして、次の5点が考えられる。 

 

①園選びを子ども中心の目線で行う 

 保育施設を選ぶときは、なるべく見学などで園の様子を見るようにする。 

 

 たとえば、保育者が子どもに接する様子、園長が保育について語る内容から、子どもを尊重する意識があるかはある程度感じ取れるだろう。保育を営む人たちの信頼性を、親の利便性や習い事などよりも重視して園を選んだほうがよい。 

 

②入園後、子どもの様子に注意を払い、保育者とコミュニケーションを深める 

 入園後は、送迎時の子どもの様子に異変がないか確認する。子どもが保育士におびえる様子があった場合は注意が必要だ。言葉が話せる子どもとは、日々の会話を大切にし、子どもの話に耳を傾けよう。 

 

 ただし、保護者が保育者をネガティブに見る発言を繰り返すと、子どもを不安にしたり誤った認識に誘導してしまうこともある。また、子どもはまだ事実を正確に伝えられない場合も多いので、気になることは率直に担任に相談するなどして、信頼関係を基本にアプローチをしたほうがよい。 

 

 連絡ノートや送迎時の会話などでコミュニケーションをとり、保育参加や保護者懇談会などの行事にもできるだけ参加して保育者との信頼関係をつくることは、不適切保育の防止にもつながるはずだ。 

 

 

③「不適切保育」を見聞きしたら確認し、冷静に交渉する 

 疑いをもったという程度であれば、保育者に「こうするのはなぜなんですか?」と保育の意図を確認したほうがよい。その答えがおかしい場合や、明らかに不適切な行為を見聞きしてしまった場合は、園長や主任に相談したほうがよい。 

 

 見聞きした問題行為や問題と思う理由を具体的に説明する、子どもが苦痛を感じている事実を伝えるなど、冷静に交渉する必要がある。 

 

 「しつけです」と言われたり不誠実な対応しかない場合は、市区町村の担当課などに通報する。市区町村が頼りにならない場合は、都道府県の指導監査部門に連絡する。 

 

■保護者にもできることはある 

 

④保護者同士のつながりも大切に 

 保護者同士のつながりもつくっておきたい。父母会などの組織がない場合も、クラスごとにSNSでつながるなどできるとよい。 

 

 保護者同士で情報交換ができれば、実際に起こっていることを客観的に把握することができるし、園に伝える際も複数の証言があれば伝わりやすい。何も問題がない場合も、園と信頼関係を結び保育に協力する応援団として機能させたい。 

 

⑤保育の制度にも関心をもつ 

 

 ここまで見てきたように、「不適切保育」が発生したりエスカレートしたりする背景には、保育士に適格な人材が不足していたり、保育士の仕事の負担が重すぎたりする構造的な問題がある。 

 

 改善するためには、保育士の待遇改善や配置増が不可欠で、そういった保育制度の問題に保護者が関心をもち、声を出していくことも、不適切保育の防止に役立つ。 

 

■カメラ導入の是非 

 

 不適切保育防止のために保育室等にカメラを設置する保育施設もあるが、監視カメラのように使うことには賛否がある。カメラがとらえるのは部分的であり、出来事の一部だけが切り取られてしまう場合も多いからだ。 

 

 特に、保護者が施設内のライブ映像をいつでも見られるようにしていた保育施設では、カメラに映った一場面が誤解されるようなトラブルが相次ぎ、結局カメラを外したという話もあった。 

 

 たとえば、子ども同士のぶつかり合いも成長に必要な体験であること、この時期の子どもは一見わがままな自己主張を繰り返し試行錯誤しながら成長する存在であること、子どもの発達のペースは一人一人違ってよいことなどについて、保護者の側に理解がないと、無用な不安や不満、保護者同士のトラブルにつながってしまう場合もある。 

 

 

 子どものプライバシーの問題も考えなくてはならない。ただし、映像を公開するのではなく、ドライブレコーダーのように記録として撮っておき、検証が必要な場合のみ見返せるようにするのであれば、メリットがあるかもしれない。 

 

 子どもが園での遊びや仲間とのかかわりを通して育つことを保障するためには、保護者が保育者を信頼し、その見守りのもとで子どもが泣いたり笑ったりさまざまな体験をすることを、育ちの場のあり方として認めてくれることが必要になる。 

 

 保護者には、カメラで保育を監視しようとするのではなく、まずは保育者とコミュニケーションをとり信頼関係を深めることから始めることをお勧めしたい。 

 

普光院 亜紀 :「保育園を考える親の会」アドバイザー 

 

 

 
 

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