( 191733 )  2024/07/17 15:10:50  
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記者会見する兵庫県の斎藤元彦知事(16日午後、同県庁) 

 

 7月16日、パワハラなどの内部告発を受け百条委員会(地方自治法100条に基づく調査特別委員会)が開かれている斎藤元彦・兵庫県知事(46)の定例会見が行われた。そしてこの日も、記者が何を訊いても斎藤知事はのれんに腕押し、同じ答えの繰り返しが続いた。ところが、会見開始から1時間を回った頃、その顔色が変わった瞬間があった――。 

 

【写真をみる】“お土産”を「俺がもらっていく」と堂々お持ち帰り 高級ガニを手に満面の笑みを見せる“パワハラ疑惑”の斎藤知事 

 

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 デイリー新潮は13日配信の「斎藤兵庫県知事 県政史上最低の会見、副知事辞任で四面楚歌に…『告発した元局長が亡くなってもパワハラを証言する人はいる』」で、県職員労働組合から辞職を求める申し入れ書が提出されるも本人はその意向を示さず、一方で側近の片山安孝・副知事(64)が辞職を表明、斎藤知事が四面楚歌の状態にあることを報じた。 

 

 14日には、自民党兵庫県連会長の末松信介・参議院議員(68)が神戸市内で開かれた県連大会で「県庁職員のモチベーションがこれ以上、後退することは許されず、その先にある県民へのサービス提供が滞ることがあってはならない。知事には大きな正しい決断をしていただきたいと強く願っている」と発言し、斎藤知事に事実上の辞職を迫った。 

 

 3年前、県知事選に立候補した斎藤氏を推薦したのは日本維新の会と自民党だった。そのうちの一方が、公然と辞職を迫っているのだ。 

 

 さらに、知事のパワハラや視察先で贈答品をほしがる“おねだり”体質などを内部告発した元県民局長が自ら命を絶つ直前に「死をもって抗議する」というメッセージと百条委員会に向けた陳述書や疑惑にまつわる音声データを残していたことが判明した。 

 

 それらを受けての定例会見だったのだが、知事はまさに“壊れたテープレコーダ”の如く同じ言い分を繰り返した。曰く「選挙で県民から85万票の付託を受けた。一歩一歩、県政を進めることが私の責任」。 

 

 記者から「3年前の付託は今、ズレが生じているのでは?」と指摘されても「今は私が一つ一つ仕事を進めていくしかない」と馬の耳に念仏。「付託は県民が判断することでは?」との問いにも「施策を通じて評価していただくだけです」と答えるのみ。全国紙やテレビ局の記者が様々な角度から追求しても同じだった。とにかく、兵庫県知事のイスを手放す気は全くないようだ。 

 

 ところが、会見開始から1時間が過ぎた頃、ある質問に知事の表情は明らかに変わった。丹波市を中心に週2回発行されている丹波新聞の記者が手を上げた。 

 

記者:22年9月6日に第3回ワーケーション知事室で丹波市の廃校活用施設を訪れて、知事は女性企業家ネットワークや丹波木材活用の可能性などをテーマに関係者と車座で対話をされました。その際、会場にあった家具、その施設用に作られた木製のサイドテーブルとイスを「これいいですね。是非、知事室で使いたい」と知事自身がおねだりされたという証言を、私は複数から聞いております。持ち帰られた事実はありますでしょうか?  

 

――ワーケーション知事室とは、兵庫県知事が県内各地に滞在し、地域と交流しながら働くことと県のホームページで説明されている。これまでと違う新たな疑惑を問われ、戸惑う知事。 

 

 

知事:えーと、ちょっとそれは詳細を覚えていないということはありますけども、確かにワーケーション知事室で、廃校を活用したところに行かせていただきました。そこは丹波市の重要な産業である県産材を活用して家具やイスを作ったというところです。そこで私は、いいイスだと思ったんで、これは県政のPRのために知事室などで使わせていただくことはいいんじゃないですかということで、あくまで県として県産材の利活用のPRという観点で申し上げたという風に認識しておりますけども、実際にそれを受け取ったり持ち帰ったかと言いますと、私自身は知事室では使ってはいません。発言の主旨としては決しておねだりというものではなくて(中略)地場産品のPRになるという政策目的から申し上げたものと認識しております。 

 

記者:当該事業所も「是非、知事室で使いたい」と言ってイスとサイドテーブルをお持ち帰りされたと記録しておりまして、知事が持ち帰った同型の机とイスがこれなんですけども……。 

 

――と記者が掲げた写真を、知事が目をむいてのぞき込む。ここまで表情が変わったのは初めてのことだろう。 

 

記者:知事室で使っておられないとしたら、この日に即日、持って帰ってらっしゃるんですが、実際、この机とイスはどこに行ったんでしょうか?  

 

知事:ちょっとそれは……詳細は把握しておりませんので、えっと、私が認識している限りは今、知事室にはありません。知事応接室にあるかどうかは確認をせねばなりませんので。ただ、いずれにしましても県産材の大事な事業ですから、それを知事室や県庁で使わせていただくことは県産材の利活用のPRになると……。 

 

記者:施策目的であれば、贈答を受け取らないという内規には抵触しないものでしょうか?  

 

――「事実関係を確認する」と約束して終わらせようとする知事。ここで別の社の記者が応援に入る。 

 

記者:今のご指摘に関してですが、例えば職員の方に確認に行ってもらって、知事応接室にあるかどうかぐらいだけでもできると思いますが、その指示をすることは今できないでしょうか?  

 

――知事がその場で秘書課長に声をかける。以後、別の社の記者からの質問に答えながら数分が経つと、秘書課長が報告した。 

 

秘書課長:知事応接のほうにサイドテーブルを置かせていただいております。倉庫のほうにイスもございましたのでご報告させていただきます。 

 

――やはり、おねだりしていたというわけだ。当然、別の社の記者からもツッコみが入る。 

 

記者:PRのためにおねだりしたということでしょうか?  

 

知事:おねだりをしたという認識ではないことはご理解いただきたいと思います。あくまで県産品の木製品、木を使った丹波地域の大事な地場産業です。(中略)多くのお客様が来られる県の知事応接室に置かせていただくことでPRになると考えております。 

 

記者:PRのために知事応接室に置いたにもかかわらず、知事ご自身はもらったことも認識はなかったのでしょうか?  

 

知事:日々の業務でも適切に使わせていただいて……。 

 

――そもそもイスは倉庫の中にあるのだから、適切に使うことなど無理である。おねだりしたものならちゃんと使えばいいのに。最後に再び、丹波新聞の記者が質問に立った。 

 

 

記者:すみません、知事、今のお話、続けさせていただきますけども、この家具って施設用に作られたもので、値段も付いてないようなものだったんですね。それを大勢いる前で、知事が「いいねえ、知事室で使いたいねえ」と言われると、事業主として断るのが非常に難しい状況になります。贈答という形になっているのかもしれませんけど、半ば贈答を強要されているようなところが雰囲気としてある。となったときに、知事が県の振興とおっしゃられる意味はわかりますけれども、一方で言われる側はパワハラではありませんが、それに繋がりかねません。(中略)県内には同様の類似例があるかもしれませんので、その辺を点検されてはいかがでしょうか。 

 

知事:はい、大変貴重なご指摘だと思います。そういったご指摘を真摯に受け止めまして、これからルール作りや私自身の対応の仕方は真摯に反省をして改めていきたいと思います。県産品のPRをしっかりさせていただきたいと私の強い思いというものはご理解いただきたいと考えています。 

 

 定例会見はここで終了した。19日に開かれる百条委員会の3回目の会合 では、亡くなった元県民局長の陳述書や音声データが公開され、県職員7000人を対象にしたアンケート調査のやり方が決定される予定だという。 

 

デイリー新潮編集部 

 

新潮社 

 

 

 
 

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