( 192001 )  2024/07/18 01:47:21  
00

開成中学に進学した生徒が入学後に燃え尽き症候群になり、勉強時間が減少してしまった事例が挙げられている。

中高一貫校では先取り学習が行われ、学校の勉強についていけなくなることもある。

一方で、推薦入試を利用して特殊な入試で大学進学を果たす例もあり、学校の成績だけでなく課外活動の実績が重視されることもある。

超進学校で落ちこぼれた生徒には、推薦入試が選択肢として広がる傾向がある。

(要約)

( 192003 )  2024/07/18 01:47:21  
00

開成中学(写真: MARODG / PIXTA) 

 

 「最も偏差値が高い中高一貫校に進学させてしまったのが、この子の教育に対する最大の失敗でした」 

 

【写真】推薦入試で、早稲田大学の合格をつかんだ。 

 

 これは43年連続で東大合格者数1位を誇る開成に息子が進学した、母親からの一言です。 

 

 オンライン学習指導塾のクラウドセンバツを運営する私の元には、「中学受験で成功した」といえるような中学に子どもが合格したにもかかわらず、入学したことを後悔する親からの相談が相次いでいます。 

 

 なぜそう思うようになってしまったのか。開成中学の笹岡君(仮名)の事例をみてみましょう。 

 

■入学後に燃え尽き症候群に… 

 

 笹岡君は、小学校3年生から某中学受験塾に週3で通い、母親の献身的なサポートを受けながら高い成績を維持しました。小5からは塾内でいちばん上のクラスに在籍し、模試でも好成績を収め、ずっと第1志望にしていた開成中学に入学。滑り止めにもすべて合格します。 

 

 我が子に中学受験をさせている親からすると、とても理想的な結果であると言えるでしょう。当然ながら塾代などのお金もかかります。笹岡君の家庭では教育投資として、小5、6年生の期間で550万ほどの費用がかかりました。 

 

 ところが笹岡君は開成中学校に入学した後、自由な校風が逆に合わず、緊張の糸が切れて“燃え尽き症候群”になってしまったことで、勉強時間が大幅に減ってしまったそうです。 

 

 「小学生の低学年からずっと勉強を続けていた反動で、もう机の前に座りたくない、と思うようになってしまいました。学校が終わってから寝るまでの時間を、オンラインゲームや動画を見て過ごしていました。中学受験を応援してくれていた、母親には申し訳ない、とずっと思っていました」と笹岡君は当時を振り返ります。 

 

 笹岡君は中学校2年生の段階で、校内順位が下位10%まで落ち込みました。周りから「できないヤツ」と思われていると感じた笹岡君。開成で生活することに耐えられなくなり、通信制の高校に進学しました。 

 

 超進学校は優秀層にとっては、どこまでも実力を伸ばせます。その一方で入学後の最初の段階でつまずいてしまった生徒にとっては、とても過酷な環境です。 

 

■先取り学習でついていけなくなる 

 

 例えば中高一貫校では、一般的には高校で習うような内容を中学の授業でも触れるなど、いわゆる「先取り学習」をしています。そのため、授業は信じられないような速度で進むのです。ついていけなくなったら最後、先生が話していることの意味がわからないという状態に陥ってしまいます。 

 

 

 学校によっては、中学生までで基礎を固めて、高校1年生からは東大や京大、早慶など難関大の過去問の演習が授業の中心を占めることもあるようです。 

 

 さらに中高一貫校に対応している塾や予備校では、学校よりも早いペースで授業が進んでいきます。学校の勉強についていけない子が、塾の授業についていくのは難しいでしょう。 

 

 中高一貫校の難関校に合格したとしても、授業についていけない場合は、大学受験で全落ちして浪人するケースもあるのです。 

 

 私が知っている中でも、名門中高一貫校に進学したにもかかわらず、学校の勉強についていけず、その中高出身者が進学しないようなレベルの大学に進学するケースも多々あります。 

 

 こうした上位中高一貫校で落ちこぼれてしまった生徒の進路の選択肢の1つとして考えられるのが、推薦入試です。 

 

 現在推薦入試の1つである総合型選抜入試(旧AO入試)は「学校の成績が必要ない」ケースが増えてきています。つまり、学校の成績が低い生徒でも推薦入試の道は開けており、元の学力が高く知的好奇心が強い傾向がある進学校の生徒は、この方式がマッチするケースもあります。 

 

 開成中学で落ちこぼれてしまい、高校からは通信制に移った笹岡君も、推薦入試で早稲田大学の合格をつかむことができました。 

 

 先述のとおり、開成の自由な環境にうまくなじめなかった笹岡君の成績は急落してしまいます。一方で通信制高校に進んだ後に、幼いころから強い興味を持っていた建築系の学部を本格的に目指して、早稲田大学創造理工学部建築学科を第1志望に設定しました。 

 

 高校の学習内容は最低限こなしつつ、学外での活動である課外活動に没頭する3年間を送った笹岡君。結果は第1志望に現役合格しました。 

 

 早稲田大学の建築学科には「創成入試」という名前で、さまざまな課外活動の実績を記載する必要がある特殊な入試があります(活動実績は7項目まで記入可能)。学校の成績に比べると、活動実績がより重視されます。 

 

 彼は「普通の学校の勉強」についていけなくなった代わりに、課外活動が重視される入試で早稲田への切符を獲得しました。 

 

■超進学校で落ちこぼれた生徒の選択肢の1つ 

 

 進学校で落ちこぼれてしまった原因は人それぞれ。学校の授業についていけなくなった、人間関係でうまくいかない……などさまざまでしょう。そのため、理由は一概には言えませんが、私が運営している塾でも笹岡君のほかに、超進学校といわれる学校で、落ちこぼれてしまった生徒が推薦を目指して対策しています。 

 

 

 例えば名門女子校出身で、中3以降成績が下がってしまったある生徒は、評定がほとんど取れないなか、高校2年生から課外活動の実績を積んでいます。今年受験生ですが、すでに活動実績は十分で、今は書類の準備や自分の大学での学びを深化させるために専門書を読み進めています。 

 

 ほかにも「名門私立男子校で評定が急落したものの、その後推薦でGMARCH出願」「偏差値70の地方高校で学年ビリから、地元の国立の推薦に出願」など、この子は厳しいだろうな……と普通は判断されるような状態から、偏差値が高い志望校を目指す生徒がいます。 

 

 「学校の成績が取れないから大学受験は無理」という時代から「自分の専門性や強みで受験する」という選択肢が広がりつつあるのです。 

 

孫 辰洋 :リザプロ代表取締役 

 

 

 
 

IMAGE