( 194258 )  2024/07/24 16:05:17  
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小林製薬の本社(23日、大阪市中央区で) 

 

 小林製薬の「紅麹(べにこうじ)」成分入りのサプリメントを巡る健康被害問題で、23日に公表された検証結果では、影響が拡大した背景として、経営陣のリーダーシップの欠如や情報開示に消極的な姿勢があったことを指摘した。後手に回った対応が続いた結果、同社の経営トップから創業家が退く事態に発展した。(松本裕平) 

 

【図】いろいろありました…謝罪記者会見 

 

(写真:読売新聞) 

 

 公表された検証結果では、今年1月に健康被害を把握してから3月下旬に発表するまで時間がかかったことについて、「危機管理における経営のリーダーシップを発揮できず、適切な経営判断ができなかった」とした。 

 

 小林製薬は23日、外部の弁護士でつくる「事実検証委員会」の調査報告書と、それを踏まえた取締役会としての総括に関する二つの文書を公表した。両方の文書から浮かび上がってきたのは、企業統治が十分に発揮できなかった実態だ。 

 

 検証委の報告書によると、同社の規定には、重大な製品事故や大規模な回収が予想される場合は、社長を本部長とする危機管理本部の設置が定められている。しかし、社長の小林章浩氏は、危機管理本部を設置しておらず、報告書は「有事における危機管理のあり方として疑問」と苦言を呈した。 

 

 また、経営陣による毎週の会議では、被害の発覚後に問題が議題に上がりつつも、対応策にまで議論が至らなかった。報告書は、この点について「社長が率先して製品回収や注意喚起の実行という判断をしなかった」と指摘した。 

 

 100年以上の歴史を持つ小林製薬は、6代続けて創業家出身者が社長を務めている。「今回の問題がなければ、小林家以外が社長を務めるなど考えられなかった」(小林製薬社員)という。 

 

 中でも、今回、会長を退いた一雅氏は4代目として大きな影響力を保持してきた。一雅氏は、医療品の卸会社から身近な消費財を手がけるメーカーへの転身を主導した。「熱さまシート」「のどぬ~るスプレー」といったヒット商品は、一雅氏が社長だった時代に世に送り出されたものだ。 

 

 

 だが、創業以来最大の不祥事への対応が後手に回り、企業イメージは悪化の一途をたどっている。23日にはトップの交代や調査報告書を発表したが、記者会見などの説明の場は設けず、情報開示の姿勢には疑問符がついたままだ。 

 

 武見厚生労働相は「指摘を真摯(しんし)に受け止め、再発防止策を早急に策定し、社内ガバナンスの立て直しに取り組んでもらいたい」と述べた。 

 

 今後は、健康被害の原因究明とともに、被害者への補償対応などが大きな焦点となりそうだ。サプリとの因果関係を調べている死亡事例は約100件に上っており、全容解明はいまだ道半ばと言える。 

 

 また、文書では、問題を起こした「紅麹」事業からの撤退については触れられなかった。紅麹事業は同社の経営の中では、売り上げに占める割合はそこまで高くなく、今後の判断に注目が集まる。 

 

 企業統治に詳しい山口利昭弁護士は「今後は被害者への対応に加え、消費者からの信頼回復のためにどのように取り組むかを公表するべきだ。対応が進んでいるか、第三者機関の監視や情報開示などで継続的に示す必要がある」と話した。 

 

 

 
 

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