( 195397 )  2024/07/27 18:06:14  
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あいテレビ 

 

※この記事には性被害に関する記述がありますので、読まれる際はご注意ください 

 

「お父さんとは、何回かした」 

 

性被害に遭ったのは、13歳の時。加害者は実の父親だった。 

 

そして被害者となった娘が妊娠していることに気付いたのは、一緒に入浴していた母親。その相手を知ったときの心境について「目の前が真っ暗になった」と証言した。 

 

「被害者からの『アプローチ』を受け、してはいけないと思いつつ『アプローチ』されて、自分の性欲と、徐々に罪悪感が薄れ、回数を重ねていってしまった」 

 

被告として法廷に立った父親は、複数回に及んだ行為について問われ、振り返った。 

 

プライバシー配慮の名目で、全てが匿名のうちに進められた裁判。 

審理が進められる中で「家庭内という閉鎖的な環境」で行われた異様な犯行の実態が明らかになった。 

裁判で示された証拠や、認定された事実などを元に振り返る。 

 

(前編・中編・後編のうち前編) 

 

■◇◇7回くらい性交渉 恋愛感情はなかった 

 

2024年3月26日。 

当時13歳だった実の娘と性交渉を繰り返し妊娠させたとして、不同意性交の罪に問われた父親の初公判が、松山地裁で行われた。 

 

「間違いありません」 

 

年齢は40代くらいだろうか。 

被告として証言台に立った男が、起訴内容を認めた。 

 

裁判では、プライバシーに配慮するため、登場する人物の名前を伏せられたまま進行されたことから、被告となった父親の氏名や年齢は分からない。 

 

検察官による冒頭陳述が行われる。 

 

被害者となったのは、離婚した前の妻との間にもうけられた娘だった。 

被告人の供述が読み上げられる。 

 

「これまでに7回くらい性交渉をした。恋愛感情はなかった」 

「被害者と性交渉を重ねるうち、罪悪感が薄れていった」 

「妊娠してはいけないと思い、避妊具をつけた」 

「家族らに迷惑を掛けて申し訳ない」 

 

■◇◇「お父さんとは何回かした」「目の前が真っ暗に」 

 

5月7日の裁判では、証拠調べが行われた。 

傍聴人はまばらで、報道機関の記者もほとんどいない。 

黒っぽい上着に猫背姿の被告が、3人の刑務官に付き添われて入廷する。 

 

検察官が、証拠の内容を読み上げる。 

まずは、被害者の証言が提出される。 

 

「お父さんとは何回かした」 

「一番最近は去年(=2023年)12月だった」 

 

続いて、被告の現在の妻の証言が読み上げられた。 

 

「娘の上に乗って腰を振っていたのを目撃した」 

「去年(=2023年)12月、被害者となった娘と一緒に入浴した際、体を見て異変に気付き『もしかして』と思ったが、流石にそれはないと信じないようにした」 

「その後、妊娠の事実を知り『相手は誰? もしかして私が知ったら困る人?』と聞いた際、娘がうなずき目の前が真っ暗になった」 

 

 

■◇◇『お父さんだけが悪い訳じゃ…』寛大な処分を求める妻と娘 

 

6月4日の裁判。 

引き続き証拠調べが行われた。 

 

「性行為は、許されることではない、反省して欲しい」 

 

弁護士が、現在の妻と元妻、そして被害者の娘が、被告に対して寛大な処分を求めていること、社会復帰後には監督を約束する旨を記した上申書を読み上げる。 

 

「(被害者の)娘は『お父さんだけが悪い訳じゃない』といった趣旨をSNSに投稿したり、ノートに書き込んでいる」 

「子どもたちは、被告と早く一緒に暮らしたい、家族一緒に暮らしたいと思っている」 

 

その上で、社会生活の中での更生を望むと結んだ。 

そこにどのような背景があり思いが込められていたのか、触れることはできなかった。 

 

■◇◇罪悪感が薄れていき、止めることができなくなった 

 

続いて、被告人質問が行われる。 

弁護士が問いかける。 

 

――被害者(娘)からの『アプローチ』があったことは間違いない? 

「間違いありません」 

 

――何度か性交渉をしたと思うが、親としては、本来どうすべきだったのか 

「そういうことはしてはいけないと言うことが、親としての務めだと思う」 

 

――なぜ止めることができなかったのか 

「回数を重ねるたび、罪悪感が薄れていき、止めることができなくなった」 

 

――妻や元妻への相談はできなかったか 

「考えてはいたが、この事件以外にも、被害者とは色々とあり…。相談することができなかった」 

 

被告の父親は、涙声になりながら答える。 

弁護士からの質問が続く。 

 

■◇◇「親」という言葉を何度も口にして 

 

――上申書で妻と元妻は寛大な処分を望んでいる。被害者の娘を含め、子どもたちも戻って来て欲しいと望んでいるが 

「家族の皆さんに対して、父親である僕が、このような事件を起こしてしまい、誠に申し訳ないと思う。家族の元に帰ったら、二度と同じことを起こさず、親としての務めを果たしたい」 

 

被告の父親は、何度も「親」という言葉を口にして、反省と後悔の弁を述べた。 

 

「被害者に対して、精神的、肉体的に苦痛を与えてしまい申し訳ないと思っている。本当に申し訳ない。親として、謝りたいと思う。(娘には)こういう事件を起こして反省して更生するために、一緒に暮らせないと伝えたい。そして、離れ離れになっても、親としての務めを果たしたい」 

 

――(社会での)監督を約束することは、とても勇気のいる決断だったと思うが 

「奥さんに対しても、普通ならば離婚になってしまうような事件なのに、最後まで支えてくれると言ってくれた。今の奥さんに対しても、すごく感謝しています」 

 

弁護士の質問に答える形で、我が子と家族への謝罪、寛大な処分を求める妻への感謝、そして「親として」果たすべき務めについて述べた被告の父親。 

再び過ちを犯すことはないと、言葉を結んだ。 

 

「二度と同じようなことを起こさないと誓います」 

 

 

■◇◇父親「被害者からアプローチがあったから…」 

 

続いて、検察官から質問が行われる。 

 

――2023年に7回の性交渉を行ったのはなぜ? 

「被害者からの『アプローチ』を受け、してはいけないと思いつつ『アプローチ』されて、自分の性欲と、徐々に罪悪感が薄れ、回数を重ねていってしまった」 

 

――(最中に)他の家族が来るとは考えなかった? 

「考えはあったが、自分の性欲や欲望が勝ってしまった。…一番下の子が居合わせたことがあった」 

 

――実の娘との性交渉、どう思っていた? 

「してはいけないと思っていたが、娘からの『アプローチ』を利用して、性交渉してしまった」 

 

しきりに飛び出す「アプローチ」という言葉。 

裁判の中で、どのようなアプローチがあったのかなど、その詳細が明かされることは無かった。 

 

――あなたは、被害者がどんな気持ちで性交渉をしていると考えていた? 

「普段の生活態度からして、被害者(娘)は、僕のことが好きなのかと思っていた」 

 

――恋愛感情ということ? 

「そこまでは分からないが…他の子どもたちと比べて」 

 

――分別は誰がつけるべき? 

「親が…」 

 

■◇◇「普通の子だと感じていた」 

 

裁判の中では、被害者となった娘が、学校では一定のサポートを受けていると明かされた。 

 

――幼いと感じることは無かった? 

「普通の子だと感じた」 

 

――学校など、性教育について正しく学ぶ機会が少ないと感じたことは? 

「あったんじゃないかなと」 

 

また、父親は「一番下の弟の面倒を見てもらうために、たびたび学校を休ませていた」ことについても証言した。 

 

■◇◇性的な興味を満たす目的だった 

 

――恋愛感情は? 

「一切無かった。性的な興味を満たす目的だった」 

 

――被害者がまた一緒に暮らしたいと言っていることについて、普通だと思うか 

「普通ではないと思う」 

 

――妻と元妻が、厳しい処罰感情を持っていないのは何故だと思う? 当然のことだと思うか? 

「思わない」 

 

弁護士と検察官からの質問が終わる。 

最後に、裁判長からの質問が行われた。 

 

【中編】では、裁判所の判断の詳細を伝える。同時に「家庭内」という閉鎖された環境で行われる行為の根深さ、そこから見えてくる背景事情など、専門家の意見などを交えながら考察する 

 

あいテレビ 

 

 

 
 

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