( 195469 )  2024/07/28 01:02:10  
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資さんうどんの「肉うどん」 

 

 福岡県北九州市発祥の「資さんうどん」(すけさんうどん)が、7月13日に関東進出を発表した。13~15日には東京に3日間限定のポップアップ店もオープンし、そこに資さんファンが長蛇の列を作ったことも話題になった。九州北部では「我々の資さんうどんがついに東京に!」と歓喜する人も少なくなかったという。一体このうどんチェーンはどのような店なのか。佐賀県唐津市在住のネットニュース編集者・中川淳一郎氏が解説する。 

 

【写真】お酒に合う資さんうどんのおでん 

 

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 私自身、母の実家が北九州市八幡東区のため、資さんうどんのことは知っていましたし、おいしいことも知っていました。九州のうどんって、アゴ出汁を使った汁で柔らかい麺が特徴です。そしてトッピングとしてポピュラーなのは「ごぼ天」(ゴボウの天ぷら)です。牛肉を煮たものも人気です。 

 

 しかし、なかなか九州のうどんは関門海峡を越えられなかった。讃岐うどんブームもあり、「うどんはコシが重要!」といった空気感が全国的にあったのですね。そんな空気感の中、九州のうどんは柔らかすぎて歯応えがない!という扱いをされてきました。コシ至上主義の壁の高さもあって、なかなか関東進出はできなかったのですが、ついに進出することに。 

 

 これは理解できます。というのも、東京だって九州人が大勢いるわけで、その人々にとっては懐かしい味だし、柔らかいうどんを「これだよこれ!」と思うワケだから。だからこそ関東在住の九州人は喜んで、期間限定店舗に長蛇の列を作ったわけだし、福岡・佐賀・大分あたりの九州人も喜んだはずです。 

 

 私が「資さんうどん」の底力を感じたのは、唐津に出店した時のことです。県道沿いの良い立地に2021年にオープンしたのですが、実はこの店舗、元々は讃岐うどんを提供する「はなまるうどん」があった場所なのです。 

 

 九州人がうどんを好むのは事実ではありますが、讃岐うどんが万人に受け入れられるかどうかはまた別の話。そこに居ぬきで資さんうどんが入ったのですが、連日の大繁盛。ランチ時や夕食時は席待ちの人が椅子に座ったり外に行列をするほどです。 

 

 私にとって、資さんうどんの何がいいか。まず、「酒が飲める」というのがいいです。居酒屋としての利用ができるのです。おでんがあり、それをセルフで取って、後から申告するシステムです。 

 

 そこそこ安い金額で酒を飲み、おでんでプハーッ。こうして一日の疲れを取れるのが資さんうどんなのです。牛丼の「頭」のようなものもあり、コレも酒に合う。これらを食べ、締めにうどんを食べるのです。当然、最初からうどんを食べる方が大多数ですが、このように居酒屋的な利用もできるのも資さんうどんの魅力です。 

 

 うどんにしても、ごぼ天、肉うどん、ワカメうどんなど多数揃っている。しかも、私には意味不明なのですが、「おはぎ」が人気でうどんを食べた後におはぎを食べる方もいます。テイクアウトも充実しており、この店が東京で成功してくれたら都民も幸せになるだろうな、と思います。 

 

 かくして私の周りでは、資さんうどんの関東進出に喜ぶ九州人が多いのですが、もう一つ有力な北部九州のうどんチェーンがあります。それは「釜揚げ 牧のうどん」。とにかく量が多い! 卓上にはヤカンがあります。ここにはうどんのつゆが入っており、つゆが足りなくなったらこれを入れて食べるのです。 

 

 当然ごぼ天も人気メニューですし、北部九州名物「かしわ飯」もある。関東ではまだまだ讃岐うどんが強いかもしれませんが、これから九州のうどんブームが来てもおかしくないぐらいおいしいと私は思っています。 

 

【プロフィール】 

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう):1973年生まれ。ネットニュース編集者、ライター。一橋大学卒業後、大手広告会社に入社。企業のPR業務などに携わり2001年に退社。その後は多くのニュースサイトにネットニュース編集者として関わり、2020年8月をもってセミリタイア。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など。最新刊は『よくも言ってくれたよな』(新潮新書)。 

 

 

 
 

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