( 196414 ) 2024/07/30 16:57:34 0 00 誰が円高に誘導したのか…Photo/gettyimages
今日、明日と日銀の政策決定会合が行われる。7月の半ば以降、急激に円高が進行してきたため、注目度も高いだろう。少し前まで160円を超える歴史的な円安ドル高水準に達し、それに伴って外需のウエイトが大きい日本株市場も大きく上昇を見せていたが、完全にその需給が完全に逆流している格好だ。
【一覧】日本株に大相場到来!最高のパフォーマンスを示す「珠玉の34銘柄」一挙公開
なぜ、ここにきて急に円高が進行したのだろうか。偶然にも様々な要因が重なったことが大きい。
きっかけは、日本の自民党の要人および米国の元大統領のトランプ氏らによる、円安を批判的にとらえる発言が同時多発的に出てきたことだ。
まず、7月17日には、河野デジタル大臣が円安是正のために利上げを日銀に求める発言をしたことが市場で大きな話題となり、その直後から円高の進行が始まった。
また、ほぼタイミングを同じくして、トランプ氏からは米国内の製造業に不利な円安・ドル高を是正する考えを表明している。その後、7月19日に開かれた経団連のフォーラムにおいて、岸田首相からは金融政策の正常化の必要性を強調する促す旨の発言が、そして7月22日には茂木自民党幹事長からも日銀の金融正常化を明確するように要請する発言が続いた。
これらは、おそらく日米問わず秋以降の選挙をにらんだ国民への人気取りの一環であると思われるが、同時期にこれだけの数の要人が円安を批判したことで、日銀に何らかの引き締めへの強い圧力がかかっているのではと投資家が勘繰り、円高方向への大規模な需給を発生させたとしても不思議ではない。
出所:智剣・Oskarグループ
実際に日銀が近日中に利上げなどの政策変更に踏み切るかどうかは別として、ここまで各方面から批判を浴びてしまっては、遅かれ早かれ実行に移さざるをえないことには変わりはない。次回の会合が無風通過であったとして、円安・株高を引き起こしたとしても、それは一過性のものでしかないだろう。
また、そもそも現在は米国、欧州ともに物価高の抑制と景気の過熱感の是正を目的とした利下げなどの金融緩和政策へと転じる段階にいる。日本とは、金融政策の局面が真逆の状態だ。
つまり、そもそも日本と欧米の金利差は縮小しやすい地合いにあり、そこに各種発言が重なったことによって、これまでに積み上がり続けていた投機的な円売りのポジション(キャリートレードなど)の逆流が発生したと考えるのが自然だ。
それに加えて、仮にトランプ氏が大統領に再選した場合は、自身が標榜するドル安誘導政策の推進や、中国との摩擦の再来および中東における地政学リスクの高まりなども懸念されている。選挙の実施前にもかかわらず、すでにトランプ氏は世界各国に対して関税や規制強化に関する発言などで噛みついて物議を醸しており、遠くない将来に発生しうる「有事の円買い」に備えた動きも出始めているのかもしれない。
図:現状見えている円高の要因
出所:QUICK
ざっと思いつくだけでこれだけの要因が同時並行的に動いているため、今回の円高の進行は、タイミングの偶然が重なった結果としての必然的な流れだといえる。
では、こういった環境下において、日本株市場内でどのように立ち回ればいいだろうか。言うまでもなく、外需企業のシェアが大きい日本株にとって、円高の進行は為替差益の観点でマイナスの要素が大きい。とはいえ、依然として企業のドル円前提は140円台前半から半ばに集中しており、一見すると多少の円高が進んでも大きな影響はないようにも見える。
図:日本の上場銘柄のドル円前提
しかし、株式市場はこの為替前提との乖離をすでに株価に十分に織り込んでいるうえ、日産自動車のように前提を大幅に修正するケースも散見されている。
つまり、現状から円高が進行すればするほど、証券会社のアナリストによる外需企業の業績予想は切り下がっていくことになり、それに伴って株価も下落を見せることになる。
この状況を踏まえて、これからも円高が進行していく前提に立った場合に、どういった属性の銘柄に投資していけばいいのかを考えてみたい。
後編『「円高相場」に日本株は耐えられるか…直近の実績で洗い出した「円高に“強い企業”と“弱い企業”」の60銘柄リストを一挙公開する!』で、円高進行局面の銘柄についてじっくりと吟味していこう。
大川 智宏(智剣・OskarグループCEO兼主席ストラテジスト)
|
![]() |