( 196799 ) 2024/07/31 17:26:38 0 00 7月25日の大下落
日経平均は7月11日、終値で史上最高の4万2224円をつけていた。が、その後は下落基調に転じ、26日にかけて8営業日続落。なおも予断を許さない状況で、巷には「新NISA」で悲鳴を上げている投資初心者もいよう。専門家の見解は――。
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日銀は30日から翌日にかけて金融政策決定会合を開き、またアメリカの連邦準備制度理事会(FRB)も同じ日程で連邦公開市場委員会(FOMC)を開催。現在は大きく開いている日米の金利差が縮まれば円高ドル安が進行し、株価も上下するというわけだが、そうした展開に一喜一憂するのは投資のプロだけではない。政府の「貯蓄から投資へ」の呼びかけに促されて「新NISA」を始めた人々もまた、穏やかではいられまい。
「4月には日経平均が3万7000円台と、前月から3000円以上も値下がりしたこともあり、ネットでは『だまされた』『損切り民』といった書き込みも見られるようになりました」(経済部デスク)
さらに、長期投資の趣旨を解さず“早く多く”と急いて資金をつぎ込んだ結果、生活費に困窮する「NISA貧乏」に陥る人も出始めているというのだ。ファイナンシャルプランナーの深野康彦氏が言う。
「昨年末の日経平均は3万3000円台でした。それが3月には4万円台に入り、初心者も含めて“乗り遅れるな”とばかり株を買い始めた。そうした人が、今回の急落で嘆いているのです」
「新NISAのつみたて投資枠を利用している人は5年、10年後に結果が伴えばいいのだから何も問題はありません。高値づかみを避けるために毎月定額を積み立てているわけで、株価下落は、買付数が増えるのでむしろチャンスだといえます。一方、成長投資枠で個別銘柄を買っているような“攻めの投資”の人たちは慌てたかもしれません」(深野氏)
一例として、人気の「NTT」株は1月23日に192.9円の高値をつけたものの、6月には140円台にまで下落。7月30日の終値は158.7円にとどまっている。
「今回の急落でいえば『ソフトバンクグループ』株も成長投資枠の利用者には打撃となったはずです。7月11日には一時1万2000円を超えていたのが、2週間後には9000円台に落ちてしまった。NTT株は半年で約25%下がりましたが、あっという間に同じくらい下落したことになる。ただしNISAはそもそも『長期・分散・積立』がポイントで、毎月、無理のない金額を投じ長い時間をかけて増やしていくもの。個別銘柄を買う人にとっても、この視点は不可欠です」(同)
その一方で、経済アナリストの森永卓郎氏は、
「世界経済はバブルの真っただ中にあると私は捉えています。今回の下落は、ほんの入り口に過ぎません」
と、警鐘を鳴らす。
「株価とはじわじわ上がり、下がる時は急落するもの。今回の下落率は約11%ですが、たった1割下がってうろたえている人が、今後起こりうる大暴落に耐えられるでしょうか」(同)
要因は半月で10円と急速に進んだ円高だといい、
「これはまだ調整途上。購買力平価をみても、本来の均衡為替レートは1ドル90~110円です。110円に修正されていくのだとすれば、NISAで運用している米国資産を中心とした投資信託の価値も大きく下がる。オルカン(NISA利用者に圧倒的人気の「eMAXIS Slim 全世界株式〈オール・カントリー〉)といえど、3割の円高が来ればひとたまりもないでしょう」(同)
もとより確実に増える投資など存在しないのだが、
「新NISAがスタートした当初より、国は“株価はこのまま右肩上がりが続くだろう”といったあおり方を続けてきました」
とは、経済ジャーナリストの荻原博子氏である。
「そもそも、先を見通せてこその長期投資です。米大統領選のみならずガザやウクライナの現状など誰も見通せなかったし、今後も読めません。そんな状況での投資は博打と同じです。新NISAで投資するのであれば、借金のある人はまず返済し、土台を安定させた上で年収1年分の貯金をキャッシュで持つことです。先行き不透明な時代で自身がリストラされても、失業保険と合わせれば2年くらいは家族を養っていけます。その間に経済が変わるかもしれません」(同)
当然のことながら投資は自己責任。政府の口車に乗らず、自ら考えて行動していく必要がありそうだ。
「週刊新潮」8月8日号では乱高下する市場にうろたえないための「処方箋」について詳報する。
「週刊新潮」2024年8月8日号 掲載
新潮社
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