( 196989 ) 2024/08/01 02:23:02 0 00 是正命令書の手交後、記者団の質問に応じるトヨタ自動車の佐藤恒治社長=31日午後、東京都千代田区(三尾郁恵撮影)
国土交通省は31日、車の量産に必要な「型式指定」の認証を巡るトヨタ自動車の不正に関し、新たに7車種で不正行為を認定した。同社は5日に「新たな不正はない」との社内調査の結果を公表していたが、一転して追加の不正事案が判明したことは、トヨタに認証制度への重大な理解不足があることを露呈した形だ。
■佐藤社長は「意図的」否定
「われわれの調査の前提条件が甘かった部分、結果の理解に対して考えが甘かった部分があった」
国交省で31日、記者団の取材に応じたトヨタの佐藤恒治社長は自社調査で今回の不正事案を把握できなかった理由をこう説明した。
ただ、国交省が指摘した新たな不正事案には、ステアリング衝突試験で「量産時の選定品とは異なる仕様のステアリングで試験を実施し、成績書の写真を選定品と差し替えた」、歩行者脚部保護試験で「規定された速度を超過した試験データを規定速度に書き換えた」など、明らかなルール違反が並ぶ。同省の担当者は「規定と違っていることが分かっていたという点で意図的な不正だ」と厳しく指摘した。
佐藤氏は「意図的な隠蔽ということではない」と悪質性を否定。不正の背景のひとつとして「エンジニアリング(技術)的な考察が先に立ってしまって、(認証ルールの)手順に対して乖離(かいり)していることに対する問題と認識していなかったということがある」と述べた。だが、これは認証試験の制度の基本への正しい理解を欠いていたということになる。
■経営への影響抑えられるか
トヨタグループでは日野自動車、ダイハツ工業、豊田自動織機と相次いで認証不正が発覚したが、その教訓をトヨタ本体が自社の認証業務の改善に生かせなかったことは経営陣に自社の認証業務への過信があったことが否めない。
再発防止に向けて、佐藤氏は認証業務を現場に依存した体質になっていることを経営が反省する必要があると強調。「認証の試験結果の精度やそれを確認できるようなデータ、情報の管理体制そのものについて甘い部分があった」として認証業務の基盤も改めて整備する考えだが、佐藤氏が記者団の問いに対してたびたび口にした「甘さ」を拭い去ることが根本的な対策の前提だろう。
トヨタは、ダイハツの不正を受けて同社の認証業務も支援する立場だけに、体制の立て直しに時間がかかれば両社の新車投入の商品戦略に大きな影響が及ぶ。既にトヨタでは不正問題を受けた新たな型式指定取得の停滞で、主力の「クラウン」の新車種「エステート」の販売を延期している。今後の経営への打撃をどこまで小さくできるか、現場の改善を強みとしてきたトヨタの企業文化の真価が問われる。(池田昇)
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