( 198434 ) 2024/08/05 00:48:30 0 00 ワニ園のガイドと会話を交わすひろゆき(写真:大和書房提供)
世界を旅するABEMAの人気バラエティ「世界の果てに、ひろゆき置いてきた」は、2023年に配信されたひろゆき氏と東出昌大氏がアフリカ4か国を旅する番組。バックパックを背負い、英語を駆使して路線バスで旅をする2人の姿を通して、「幸せ」と「お金」、「生命」と「食事」、「教育」と「貧困」など、さまざまな視点で世界を見直すきっかけになったという人は多いだろう。 現在、『世界の果てに、東出・ひろゆき置いてきた』という続編(南米バックパック旅)も配信中だが、ここではアフリカの旅の後にロングインタビューしてまとめた書籍『世界の果てに、ひろゆき置いてきた』より、一部抜粋して、新しい幸福論を紹介する。
【写真】視聴者も驚いたひろゆきらしからぬ行動?
■「やりがい」を求める日本の職業観は特殊
ひろゆきのナミビア旅3日目は朝からワニ園へ。将来、カバンか靴か、なんらかの革製品になるであろう約4500匹のワニが見られる場所だが、ひろゆきにはガイドの言葉が印象に残ったようだ。
「番組ではカットされちゃってたんですけど、ガイドの人が何十年もワニの世話をしている人なんです。それを聞いた豊川Dが、ガイドのおじさんにインタビューして、ワニのことがどれくらい好きかと聞いたんですよ。そうしたら、おじさんが『いやいや、ワニとか好きじゃないから!』みたいな感じで(笑)。『この仕事は金がいいからやってる。これをやらなければ、もっと安い仕事をやる羽目になるんだ』と。これは正しいな、と」
つまり、ナミビアでは仕事の内容ではなく、「金が稼げるかどうか」が職業選択の肝なのだ。職業意識が日本とはまるで違う。
「仕事に“やりがい”はいらないんです。そんなことに価値を置くのは日本だけ。海外は『やりがいより金』なんですよね。もちろん、海外の人にもやりたいことはあります。けれど、日本人みたいにやりたいことを仕事の中で実現しようとはしない。
『仕事を通してやりたいことは何ですか?』って日本の会社がよく入社面接で聞きますけど、他の国なら『金儲け!』で終わりですよね」とひろゆきは笑う。日本の職業観が特殊なのだとしたら、これから違う働き方を見つけるヒントは海外にあるのかもしれない。
■ナミビアの「仕事」と「教育」
ひろゆきのナミビア旅のハイライトは、チャロとの出会いだろう。次の国へ向かうための中継地となる都市、グルートフォンテインに向かう車を探すひろゆき&豊川Dと、タクシー乗り場で偶然出会ったのがドライバーのチャロだ。
車中、豊川Dはチャロにインタビューをする。グルートフォンテインに生まれ育ち、今も家族と同地に暮らしていること、月給は日本円換算にして約1万円であること、夢はいつか自分の乗り合いタクシーを持つことなどを明かすチャロ。
ひろゆきはそれを聞き、彼の家族を呼んで夕食を一緒に食べないかと提案をした。
午後7時、グルートフォンテインのレストランに到着し、チャロとチャロの妻・ロレンツィア、2人の娘、2人の息子、チャロの父、ロレンツィアの兄、計8人と卓を囲むひろゆきと豊川D。
こんなことは人生で初めて! と喜ぶチャロ。ディナーに舌鼓を打ち、アットホームな雰囲気のなか、「虫歯があるけど怖くて歯医者に行けない」とチャロが恥ずかしそうに自身の弱みを吐露するなど、彼らの仲は深まっていった。
【写真】チャロさん一家とと食事をするひろゆき
翌日はチャロの自宅を見せてもらうことになった。やってきたのは、トタンの壁と屋根、電気はお金を払って誰かの家から引いていて、水道もない家々が軒を連ねるエリアだ。
「あの地域は、ここに住んでくださいって国が住宅地を無償で割り当ててるんですよね。余った土地を人に割り当てて住まわせないと、誰かが地権者を名乗って勝手に金を取ったり、治安が悪くなったりするから。それで自分たちで治安を良くしてくださいっていう意味で土地を割り当ててると思うんです」と特殊な住宅事情を説明するひろゆき。
■娘のオランダ留学のために…
チャロに家を案内してもらうと、冷蔵庫に昨日のレストランでの食事の残りやジュースが慎ましく入っていた。「どうせ番組が払うんだから、もっと注文して持って帰れ」といくらひろゆきが言っても、遠慮深いチャロ一家はせいぜい1人1品くらいしか追加しなかったという。
それでも、普段は電源を入れない冷蔵庫にしっかり電源を入れて、持ち帰った食べ物やジュースを大切に庫内に収めているところを見せてくれた。
家は広いとは言えないが、小さくも清潔な部屋たち。カメラの回っていないところでひろゆきは、チャロとどんな会話を交わしたのだろうか。
「チャロさんが長女のオランダ留学のためのお金を貯めているという話です。娘さんは、公衆衛生の専門家を目指して、オランダの大学に留学を予定しているらしくて。ナミビアでは国内に入ってくる商品やその品質をちゃんと管理するような公衆衛生の仕事が今後必要になる。だから、この分野の勉強をしたいということを20歳の女の子が考えているんです。日本と全然違いますよね」
その考え方のもとは、チャロ家のバックボーンにあった。
チャロの父はもともとナミビアの隣国である、南アフリカ共和国出身。南アフリカは当時アパルトヘイト政策下で、政情も不安定。白人に比べてアフリカ人は識字率も極端に低く、子どもの頃から労働するのが当たり前の国だった。
それだけに、チャロの父やチャロ自身も南アフリカを反面教師にして、教育に力を入れているようだ。自分たちが稼いだ金を教育に投資し、子どもを将来性のある仕事に就かせる。それは子を持つ父であるチャロにとっては、当たり前のことなのだ。
■「ナミビアドル持っててもしょうがないっすから」
いよいよチャロ一家に別れを告げ、ひろゆきたちを乗せた車が発車するタイミングで「忘れものをした」と言うひろゆきは、車を降りてチャロの妻のもとに走っていく。
「チャロさんが歯医者に行くなら、いくらかかる?」と聞き、怪訝そうな妻が答えた金額の4倍をひろゆきが手渡すシーン。
「チャロと、子どもたち3人分の歯医者代だから」
ここでひろゆきの意外な一面を見た視聴者も多いだろう。なぜなら、超の付く倹約家で知られるひろゆきがこんなことをするなんて、誰も思っていなかったから。本人に意外な行動の理由を問うと、「ナミビアドル持っていてもしょうがないっすからね」とそっけなく答える。
続けて、「歯は治した方がいいっすよ。歯が痛いときに鎮痛剤で我慢したって治るわけではないので、人生とお金の無駄ですから」と言うが、チャロの生真面目で人間くさいキャラクターに、ひろゆきが関心を寄せたのは間違いないだろう。
チャロのことを思い出すひろゆきの表情は柔らかく、その出会いが本当に楽しかったことを物語っていた。
ひろゆき :「4chan」管理人/東出 昌大 :俳優/高橋 弘樹 :映像ディレクター
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