( 198439 )  2024/08/05 00:55:02  
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悠仁さまの論文の舞台となった「赤坂御用地」(写真:イメージマート) 

 

 大学進学を控える秋篠宮家の悠仁さまは、トンボを題材とした学術論文を発表するなど課外活動が話題となっている。その実績を活かして東京大学の推薦入試(学校推薦型選抜)を受験するというシナリオが有力視されているが、その研究自体が「特権」を活かしたものではないか、という批判も一部にある。『中学受験 やってはいけない塾選び』が話題のノンフィクションライター・杉浦由美子氏がレポートするシリーズ「悠仁さまと東大推薦入試」。【全4回の第2回。第1回から読む】 

 

【画像】悠仁さまが共同執筆した「トンボ論文」。冒頭には英文での要約も 

 

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 悠仁さまのご進学先の大学がどこになるかということが注目されている。悠仁さまがトンボ研究の第一人者たちと論文を書いたことから、「この論文を探究学習の実績として利用し、東大に学校推薦型選抜で入るのでは」という憶測がされ、「一流の研究者との共著の論文を実績としてあげるのは『特権』ではないのだろうか」という批判も一部で起きている。 

 

 2024年6月12日配信の「デイリー新潮」では、“金持ちの子弟が高名な専門家を雇い共著論文を執筆してもらえば合格できてしまう”という意見も紹介している。 

 

 前回はその批判への疑問を呈した。論文を共同で書いた場合、論文全体のクオリティではなくその論文の中で悠仁さまが担当した部分が評価の対象とされるので「特権」には当たらないのではないかと指摘した。 

 

 また、現在、一般の受験生が推薦入試で提出するレポートやプレゼン書類、志望理由書(エントリーシート)には大人の手が入っていると考えるのが妥当だ。ようは学校の教師や推薦入試対策塾講師が添削をしているのだ。大手予備校だと添削に回数制限を設けているケースもあるが、中小塾だと無制限で添削をするところもある。これらのプロ講師の添削が入った提出書類には、「大人に添削してもらいました」という記載はない。 

 

 一方で、悠仁さまは学術論文としては当たり前だが、大人の研究者と共同で作成したことを明確に提示している。東大の推薦入試を受験することを目標とした場合、あそこまで完成度の高い論文にする必要はないようにも思える。それよりは誰かに指導を仰ぎながら、悠仁さまが一人で書いた体にした論文で勝負をすることもできたはずだ。しかし、そういったことはせず、今回の論文については、きちんと作成に携わった大人、宮内庁の職員の名前までを明記していて、正々堂々とされていると思える。 

 

 この件について、大手予備校で推薦対策の指導をしている講師たちも私同様に「悠仁さまが批判されるのは的外れだ。むしろ、ご立派だ」とコメントしている。 

 

 

 また、「赤坂御用地」を舞台に研究することも「特権」といえるのだろうか。確かに一般人は赤坂御所に自由に出入りできない。しかし、悠仁さまはもっと「自由に出入りできない場所」が多いではないか。 

 

 昆虫の研究の世界には、アマチュア研究者も多く存在し、プロの研究者とも共同で調査研究をしている。そんな彼らに共通するのは、日常的に、山や森などに行って、昆虫を追い求めたいという思いだ。彼らの「山や森に行って虫を探したい」という欲求がどんなに強いか。SNSでも、昆虫に関する情報が頻繁に交換されており、その思いの強さを窺うことができる。 

 

 しかし、悠仁さまは「○○山に○○トンボがいた」という情報を見つけても、週末にリュックサックを背負って気軽に出かけることはできない。夏休みに青春18きっぷを使って、SNSを通して知り合った仲間と遠くの地方の山に行き、トンボを求めにいくこともできない。本来なら赤坂御用地の研究も、他の地域のトンボの生態を悠仁さまが調査し、比較した方がテーマに広がりや深みが出るだろう。 

 

 しかし、悠仁さまはそのための研究調査が自由にできない立場にある。昆虫研究者として大きなハンデがあるといえよう。「特別待遇」というよりも、研究者として不利な立場でありながら、できる範囲で努力されていて、ひたむきな研究者に見える。 

 

 だいたい、一般人が入れない場所は赤坂御所以外にもたくさんある。地方の山や森の私有地などもそうだ。そういった私有地にも珍しい昆虫が多く棲息している場所があり、研究者たちはあの手この手で許可をとってそこで調査をしようとする。そういった私有地に地元の高校生が親のコネで許可をもらって調査をし、そのデータを元にレポートを書き、大学推薦入試に利用したとしよう。それは「特権」と強く批判されるほどのことなのだろうか。 

 

 今回は進学先が話題になっている悠仁さまの「トンボ論文」への批判を検証した。推薦入試を取材している記者からすると、特権という批判は少し的が外れていると思えるのだ。次回は東大の学校推薦型選抜について言及していこう。悠仁さまが一般選抜ではなく推薦で東大へ進学されることへの反発もあるように感じるが、東大の推薦入試自体は相当の難関なのだ。 

 

(第3回につづく。第1回から読む) 

 

【プロフィール】 

杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ)/ノンフィクションライター。2005年から取材と執筆活動を開始。『女子校力』(PHP新書)がロングセラーに。『中学受験 やってはいけない塾選び』(青春出版社)も話題に。『中学受験ナビ』(マイナビ)、『ダイヤモンド教育ラボ』(ダイヤモンド社)で連載をし、『週刊東洋経済』『週刊ダイヤモンド』で記事を書いている。 

 

 

 
 

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