( 198549 )  2024/08/05 15:28:18  
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 公設秘書の給与を国からだまし取っていた疑いがあるとして、広瀬めぐみ参議院議員の事務所などが捜索を受けた。広瀬議員は2022年12月から23年8月にかけて、勤務実態がないと知りながら公設第2秘書として届け出ていた女性に、国から支払われる秘書給与数百万円をだましとった疑いがもたれている。今年3月に週刊誌で秘書給与詐欺の疑惑が報じられた際は疑惑を否定していたが、捜索を受け「事情がわかったら説明する」などと述べている。 

 

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 一方、仮に事実であれば2002年、辻元清美氏に政策秘書2人分の給与約1870万円を国から詐取した疑いで辻元氏を含む4人が逮捕された事件に似ている。辻元氏は2004年に懲役2年、執行猶予5年の有罪判決を受けていた。X上では「辻元清美と同じ手口やん」といった投稿もみられた。 

 

 ルポ作家の日野百草氏が取材したーー。 

 

「広瀬めぐみ、同じ自民党だからかばうとか、私はありませんよ。ここまでひどいと何のために政治家になったのかと言われても仕方がない。本当ならあまりにひどい」 

 

 都内で中小企業を経営する70代の自民党員、昭和の時代から末端から自民党を支え続けた彼だが、広瀬めぐみ参議院議員(自民党を7月30日離党、議員は続投)をかばうことはなかった。 

 

 広瀬めぐみ議員は2022年の参院選、自民党岩手選挙区で1992年の椎名素夫以来、約30年ぶりに誕生した自民党の参院議員だった。椎名はその翌年に自民党を離党しているので本当に久々であった。 

 

 ゆえに期待も大きかったとされるが、活躍よりも騒動ばかり目立ってしまっているのが下記の通り、現実である。 

 

 2022年 旧統一教会との関係が発覚。「支援者に誘われて盛岡市の教会を訪れ、責任者に挨拶をした」と認める。(旧統一教会との認識はなかった、と意図的に関係したことは否定) 

 

 2023年 松川るい議員、今井絵理子議員らと参加した自民党女性局海外研修、いわゆる「エッフェル騒動」が研修ではなく物見遊山の観光ではとの批判を受ける。 

 

 2024年 いわゆる「赤ベンツ不倫」が発覚。 

 

 

 そして今回、国民の納めた税金である公設秘書の給与をだまし取った詐欺の疑いで東京地検特捜部が広瀬めぐみの関係各所へ家宅捜索に入った。議員会館、地元事務所、広瀬めぐみ議員の自宅など大規模なもので、きっかけとなった3月の週刊誌の取材には「事実無根」と反論していた。 

 

 真偽は捜査の行方次第ではあるが、広瀬めぐみ議員は7月30日に自民党を離党した。 

 

「どれだけやらかしたのか。裏金問題でただでさえ信用ないのに、政治のためならまだしも、個人の裕福な生活のために使っているんです。それが本当なら、党員だって怒りますよ」 

 

 彼は本音のところは「面従腹背」だと言った。仕事の関係上切っても切れない自民党との関係、社員や家族の生活があると。だから仕方がないと。自民党の末端党員なんてそんなのばっかりだと。これが自民党が作り上げてきたこの国のシステムだと。 

 

 あくまで彼個人の意見だが、それでも保守系、それも自民党の末端関係者の多くから、こうした党批判を近年、とくに聞くようになったと思う。多くは昭和からの支持層である中小の経営者や地方農家だ。 

 

「経営環境は厳しくなるばかり。税金や物価だってそう。それなのに国会議員ばかりが私腹を肥やして、最近ではやらかしても開き直って居座っている。経営者も労働者も末端は搾り取られるばかり、右だ左だなんて関係ない、偉ぶって贅沢したいだけ」 

 

 まさに左右でなく上下の問題。左が悪い、右が悪いで犬笛を吹き合っているが結局のところ踊らされているのが下の一般国民で、上は右も左も安泰ということか。 

 

 その「上」を揶揄した「上級国民」という言葉もすっかり定着した。あるインフルエンサーは「上級国民なので逮捕はされません」と私見を述べたが、それこそまさに今回の広瀬めぐみ議員のことを指したものだった。 

 

 国会議員自身が秘書の給与を国からだまし取る事件としてはこれまでも中島洋次郎(自民党)、山本譲司(民主党)、坂井隆憲(自民党)、辻元清美(社民党)らが詐取の容疑で逮捕や起訴となっている(括弧内は当時の所属)。つまるところ、一般国民の税金を上級国民である与野党議員が好き勝手できるという、左右関係のない、上下の問題であった。 

 

 岩手県の自民党員(50代)が電話で語ってくれた。親の代から党員だが、兼業農家で生活は楽ではないという。 

 

「やっと当選したと思ったらこれですよ。エッフェル塔ポーズやら真っ赤なベンツで不倫やらは個人の勝手ですけど、不正受給はだめでしょう。国民の税金ですよ。党員ですけど、私らだって納めている一般国民です。それに議員が公設秘書の給与をパクるって詐欺ですし、許せませんよ」 

 

 東京地検特捜部は公金詐取、詐欺容疑で家宅捜索に入った。特捜部によれば常習的な行為とその証拠があり、広瀬めぐみ議員が主導したとみての捜索とされる。 

 

 

「議員歳費と別に秘書(公設第2)の給与もパクるなんて。私たちの税金から支給されているのに」 

 

 初当選の年から広瀬めぐみ議員は毎月「公設秘書の給与をだまし取った」とされる。広瀬めぐみ議員本人は否定してきたが結局、東京地検特捜部が「詐欺容疑」で動くに至ってしまった。 

 

「自民党を離れて議員を続けるって、これから4年ずっとやるんですかね、彼女。じゃあ、自民党から出たのってなんだったんですかね」 

 

 自民党議員、昨年からの1年間だけでも秋本真利、池田佳隆、大野泰正、塩谷立、堀井学らが不祥事で自民党を離党(池田は除名)、いま現在も議員を続けている。6月末にはおよそ319万円の期末手当(いわゆる夏のボーナス)も受け取っている。 

 

「自民党の理念や政策に共感するから政党に入り、議員になったわけじゃないですか。議員も辞めるのが筋だと思いますよ。自民党でないなら、辞めてご自身の理念や政策で無所属として立候補すればいい。あたりまえの話じゃないですか」 

 

 広瀬めぐみ議員の月額歳費(給与)は月額129万4000円。期末手当(ボーナス)は年2回で計314万円、それに非課税の文書通信交通滞在費が月額100万円支給されている。議員歳費は基本一律かつ一部自主返納をしている場合など多少金額の前後はあるが、年額ではおよそ2181万円が広瀬めぐみ議員に支払われていることになる。その他にも新幹線グリーン車無料のJRパスや航空券往復引換証などが支給されている。超一等地の議員宿舎もある。今回問題となった公設秘書も最大3人まで、国民の納めた税金から支給されている。 

 

 まして広瀬めぐみ議員の任期は2028年まで、議員辞職がなければ4年間、この金額が支給される。 

 

 2020年に自民党を離党、逮捕された河井案里元参院議員は逮捕後も議員は辞職せず、歳費など計4942万円を受け取ってきたとされる。広島の地元選挙民らを中心に国への返還を求めたが訴えは却下された。「国会議員には議員報酬の返還請求制度がない」というのが理由だった。 

 

 もちろん、すべて国民の税金である。そして、これから広瀬めぐみ議員が無所属として任期を全うするなら今回もまた、そういうことになる。 

 

 絶えることのない自民党の金権腐敗、7月には堀井学衆議院議員が違法寄付で東京地検特捜部に家宅捜索を受けているが、その際の岸田文雄首相の談話「強い危機感をもって、政治の信頼回復に努めて参ります」がまた繰り返される羽目になってしまった。 

 

※敬称略 

 

日野百草 

 

 

 
 

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