( 200909 ) 2024/08/12 15:26:24 0 00 Adobe Stock
都知事選やパリオリンピック中は国民の永田町に対する感心が薄れたためか、一部メディアで内閣支持率が上昇した。例えば毎日新聞が7月20、21日に実施した全国論調査では、岸田内閣の支持率は6月比4ポイント増の21%と2カ月ぶりに20%台を回復。就任当初「決められない総理」などと揶揄された岸田総理は「何もしないから欠点もない」とういことで、順調に支持率をあげていた。「無策無敵」だったわけだが、ある意味その時に似た現象が意味起きているのかもしれない。
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しかしその後は旧統一教会問題、自民党の裏金問題などが話題になると、支持率は大暴落。補選で自民党系の候補が連敗すると、都知事選では大敗を恐れて党独自の候補すらたてなかった。そんな状況で自民党議員からも不満の声があがる。そしてついに「岸田退陣説」が永田町で囁かれるようになった。
元プレジデント誌編集長で作家の小倉健一氏によると「8月中には意志表示するかも、と噂が流れている」という。では次の自民党総裁、日本の総理大臣は誰になるのか。小倉健一氏が解説するーー。
「自民党の国会議員の中には、まだ緊張感が足りない人もいるが、地方組織からは選挙での連敗が続き、岸田政権に対して『NO』の声が高まっている。しかし、8月の中にはこれまで無視してきた党内の不満を受け止めて、退陣を表明するのではないかと『期待』する声も出ている」(菅義偉前首相に近いグループの衆議院議員)
タイミングについては「元々中央アジアへの外遊後にも」(同)とされてきた。だが、相次いで発生した地震への対応を理由に外遊は取りやめになった。まだ退陣が本決まりではないなかで「総理の外遊の間に自民党内でクーデターが起きて、退陣を既定路線にされてしまうという話がまことしやかに流れた」という。
低支持率ながらせめて保守層の歓心を買おうとして主張をはじめたのが「憲法改正」だ。保守系ジャーナリスト櫻井よしこ氏は、この一点で岸田首相を信じたようだ。
〈(こうした発言をすると)「櫻井さんはまだ岸田総理を信じているの?」って、もうとっくの昔に見放してもいいんじゃないかっていうお叱りを受けるんです。でも、皆さん、岸田総理が繰り返し繰り返しおっしゃって、「憲法改正、私の任期内でやります」「9月が(総裁)任期いっぱいです」「それまでに憲法改正やる」っておっしゃってて、今まで一度もやりませんということはおっしゃっていません。(岸田総理は)政治家です、一国の宰相です。この言葉を信じないでどうやって政治を動かしていくのか〉(5月3日開催「頑張れ日本!全国行動委員会」での発言)
しかし、櫻井氏は岸田首相に完全に裏切られる形となった。もう8月だ。本気で憲法改正を9月までにやるつもりなら、のんきに外遊などしている場合ではないだろう。
〈茂木(敏充。自民党幹事長)は十日に東京・丸の内のパレスホテルで行われた経済再生担当相、新藤義孝の子息の結婚披露宴に出席した際、岸田が意欲を見せる憲法改正への取り組みを聞かれると、「我々は段取りを整えているのですが、ここの人が言うことを聞かないんです」と、ついさっきまで岸田が座っていた席を指差した〉(月刊誌「正論」8月号『永田町事情録』)
と、上記のような”証言”も飛び出している。岸田首相が憲法改正に本気で取り組む気がなかったことは明らかだ。岸田政権に失望したのは保守派だけではなく、規制緩和を求める改革派にとっても、非常に不満の多い政権運営だった。日本では毎年50万人規模で労働力人口や就業者数が減少しており、このままではどの業界でも人手不足が深刻化するのは避けられない。さらに、労働者一人当たりの労働時間も減ると予想されている。
こうした状況で重要なのは規制緩和である。例えば、ライドシェアを認めることで、普通運転免許を持っている人がすぐに仕事を始められるようになる。日本以外の先進国では、ライドシェアで仕事をするのは当たり前のことだ。地域の失業率が改善し、タクシーより事故が少ないこともわかっている。
しかし、岸田政権はタクシー業界の反対を受けて、ライドシェアの全面解禁すらできなかった。この政権にはこれ以上の改革は期待できないだろう。
こうした改革が進まないのは、業界団体の声にばかり耳を傾ける自民党の体質に原因があると思う。私は政権交代が必要だと考えるが、野党が頼りないという理由で岸田政権を支持する人たちもいるようだ。しかし、そうした人たちでも、自民党内での政権交代、つまり総裁選でのリーダー交代なら受け入れるだろう。もし岸田首相が国民の声に応えて退陣するとなれば、次に誰が総裁になるのかに焦点が移ることになる。
河野太郎氏は、菅前首相から見放されたようだ。茂木敏充幹事長も党内での人気が低い。全国紙の記者は次のように説明している。
「河野氏は政治改革や裏金問題の際に、麻生太郎氏の顔色をうかがい、菅氏や小泉進次郎氏と距離を取った。また、デジタル庁での失敗も多く、今回は厳しい状況であることを本人も理解しているようだ。彼は『明智光秀にはならない』と繰り返し言っているが、実際には明智光秀のような行動を続けているのは滑稽だ。自派閥さえまとめられていない」
筆者は、デジタル庁での迷走と失敗を繰り返している河野氏に期待を持っていない。デジタル庁での失敗、例えば自治体クラウドの問題やマイナンバーカードの混乱など、河野氏の責任は大きい。彼はこれまでの失策を少しは反省すべきだ。なぜ、あんなに自信満々なのか得体がしれず、正直、怖い。
一方で、茂木氏には少しの「希望」があると感じている。茂木氏はライドシェアの全面解禁を主張しており、世襲議員ではなく、議員になる前はビジネスの世界での厳しい経験も持っている。彼には、規制緩和と経済成長を掲げて突き進んでほしいものだ。明智光秀はすぐに敗れたが、もしも政権を取った後で良い政治を行えば、国民は納得するだろう。古い自民党を近代的な保守政党に生まれ変わらせてほしい。
岸田派の上川陽子氏は、岸田首相の立場を考え、とにかく目立たないように行動しているようだ。自民党の地方組織から講演の依頼があっても、断ることが多いという。彼女が地下鉄サリン事件の死刑囚を死刑に処したことは評価しているが、失敗に終わった「異次元の少子化対策」の原案を作ったのも上川氏である。子どもが増えるためにはお金を配れば良いという、世界中で成功したことのない政策を実行し、国の支出を増やしたことについて、謝罪の弁を述べるべきだ。
最近、自民党内で評判が高まっているのが小泉進次郎氏だ。ジャーナリストの田原総一郎氏が「小泉純一郎が進次郎の出馬を認めた」と語っているが、最近の田原氏の発言は著しく信頼性が低いため、これを鵜呑みにするのは絶対に避けるべきだ。しかし、進次郎氏が総理になることを期待されている人物であることは事実だ。福島の海岸でサーフィンをしたことなど、拍手喝采、評価される部分もある。
しかし、進次郎氏はこれまでに多くの迷言や意味不明な発言をしており、そのために「頭が良くないのではないか」と疑われることが多い。菅氏や森山裕氏の周辺では、「周りをしっかりした政治家で固めれば大丈夫だ」と言われているようだが、ここで一つ考えてみたい。自民党の「頭が良い」とされる政治家、霞ヶ関の官僚たちが、これまで何を成し遂げたのだろうか。
例えば、半導体産業に何兆円もの税金を投入した結果、世界中で半導体が余る事態になっている。さらに、異次元の少子化対策、経済効果の薄い大阪万博、半導体補助金など、どれも成功していない。まだ失敗の局面に至っていないが、社会主義政策でしかない「教育費無償化(=全額税負担化)」もしばらくして(社会主義国家で見られた教育の質の低下など)失敗が目に見えている。自民党の「頭が良い」とされる人たちは、政府が資金や口を出すことでしか問題が解決できないと信じ込んでいるが、これは非常に間違った考え方だ。自分が運営する政府がやることは正しい方向に進むというのは、歴史が証明するフェイクでしかない。
ここで、進次郎氏に直接問いかけたい。あなたが世間から馬鹿にされ始めたのは、環境大臣に就任し、官僚の言いなりになった時期からではないだろうか。炭素税を含む訳のわからない政策を推進し、頭の良い人々の「客寄せパンダ」として振る舞ったことで、あなたの凋落が始まったのではないかと。
政治においては、民間ができることは民間に任せるべきだ。ライドシェアの規制緩和、減税、ゼロシーリングなどを実行し、政治家や官僚の「頭が良い」人たちから距離を置くべきである。自民党内で突破力のある、国民目線の「バカ」を集め、今の時代に必要な改革を実現してほしい。大事なのは、民間活力だ。
小倉健一
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