( 201955 )  2024/08/15 16:17:09  
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フリーアナウンサー・川口ゆりさんがSNS投稿で波紋を広げ、所属事務所との契約解除が報じられた。

投稿に対する誹謗中傷や冷静な批判が交錯し、一連の騒動が続いている。

批判には論理的な側面もあるが、誹謗中傷の無自覚な拡散も問題である。

周囲の冷たい反応や川口さんの社会的地位についても議論が交わされており、今回の騒動から引き起こされる社会的影響について考えさせられる。

(要約)

( 201957 )  2024/08/15 16:17:09  
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(画像:本人の公式Instagramより) 

 

 フリーアナウンサー・川口ゆりさんのSNS投稿による波紋が広がり続けています。 

 

 事の発端は8月8日、川口さんは自身のX(旧Twitter)に「ご事情あるなら本当にごめんなさいなんだけど、夏場の男性の匂いや不摂生している方特有の体臭が苦手すぎる。常に清潔な状態でいたいので1日数回シャワー、汗拭きシート、制汗剤においては一年中使うのだけど、多くの男性がそれくらいであってほしい」などと投稿し、すぐに批判が殺到。9日に釈明の投稿をするものの、火に油を注ぐ結果となってしまいました。 

 

【写真】「冷たすぎる?」川口アナを即解雇した所属事務所のコメントを見る 

 

■即、契約解除した事務所と不穏な投稿をしたパートナー 

 

 所属事務所は10日付で川口さんとの契約を解消。11日、川口さんはXで「この度は私の不用意な発言で不快にさせ、傷つけてしまった方が多くいたこと、大変反省しております。言葉を扱う仕事をしている者として未熟でした」などと謝罪しましたが、騒動は一向に収まりません。 

 

 13日には川口さんのパートナーがXに「本人は気が滅入っているので私が代わりに投稿します」「世間の皆様の想像を遥かに超える深刻な事態が起きている」「悪質な虚偽の内容がネット上に拡散」「無関係な方が命を落とすようなことがいつ起きてもおかしくありません」などと投稿したことが報じられました。 

 

 今なお続く一連の騒動を見ていて気づいたのは、彼女に浴びせられる誹謗中傷と同様以上の怖い現実があること。主に“無自覚な批判”と“周囲の人びと”という2つの点で、背筋が寒い世の中になりつつあることを感じさせられます。 

 

【写真】冷たすぎる?  川口アナを即解雇した事務所のコメントを見る 

 

 ここでは川口さんの投稿や彼女への誹謗中傷を断罪するのではなく、その周辺で起きている私たちにとっての怖い現実を掘り下げていきます。 

 

■「冷静かつ論理的な批判」の集積 

 

 川口さんの発言については、賛否ではなく、ほぼ“否”一色であることからも、問題があったのは間違いないでしょう。 

 

 なかでも「体臭に男女の区別はおかしい」「体質や仕事上でやむを得ない人もいる」「臭いの感覚には個人差があるため押し付けるのはよくない」「人に言えないほど体臭で悩んでいる人もいる」あたりの指摘は正論そのもの。 

 

 特に男性はハラスメントの加害者として扱われがちなだけに、「ここでも男だけを責めるのか」と怒りたくなる気持ちは理解できます。 

 

 

 川口さんは「男性顧客向けの美容事業をますます頑張りたい」というコメントに至る前提や、「ご事情あるなら本当にごめんなさいなんだけど」という多少の配慮も書いていましたが、これらはほぼ意味を成しませんでした。 

 

 「これくらいの内容なら、これくらいの前提や配慮を書いておけば大丈夫だろう」という判断を誤ってしまった感があります。 

 

 ただそれでも川口さんや関係者に対する誹謗中傷が正当化されるというわけではないでしょう。Xやネット記事のコメント欄を見ると、目を覆いたくなるような投稿もあり、恐ろしいほどの悪意を感じてしまいます。 

 

 しかし、川口さんや関係者に直接送られる誹謗中傷の数や内容はわからないものの、Xやネット記事のコメント欄への誹謗中傷はそれほど多くないように見えます。 

 

 一方で投稿の多くを占めているのは、「〇〇〇はよくない」「〇〇〇ということでしょう」「〇〇〇はこうあるべき」などの“体臭論”。ひいては“男女差別論”や“SNSの投稿論”なども含めて、「議論を持ちかけたうえで批判する」という形で騒動が拡大・継続しています。 

 

 つまり今回の件で誹謗中傷する人は言語道断ですが、本当の問題は冷静かつ論理的に批判する人がその流れに加わり、騒動を拡大・継続させていること。 

 

 1人ひとりは「この程度の批判くらいなら相手を追い込むほどではないだろう」と思っていても、それが数十、数百と集まれば誹謗中傷に匹敵するほど大きなものになり、無自覚なまま本人にダメージを与えているのです。 

 

 これまでネット上で炎上したことによって自死を選ぶという悲しいケースもありましたが、怖いのは「冷静かつ論理的に発言しただけ」と思っている人も、加害者とまでは言えないものの、“ネガティブな影響を与えた1人”になってしまうこと。 

 

 ネット炎上が「いじめと似ている」と言われるのは、“1人対多数”の構図になり、多数の中に「攻撃している」という自覚の薄い人が多いから。1人に対する人数の多さという点では、いじめよりはるかに怖い構図であり、たとえば住む場所や働く場所を変えても解決せず、「自分には居場所がない」と絶望してもおかしくありません。 

 

 もちろん個人の発言は自由であり、尊重されるべきでしょう。ただアップする前に、「自分は本人を攻撃するグループに加わっていいのか」「これは本当に書き込まなければいけないことなのか」と考え、「不特定多数の正論が集まって1人に向けられる世の中は怖いのではないか」と心に問いかけてもいい気がします。 

 

 

■「発言と誹謗中傷の是非」が混在 

 

 そしてもう1つ、冷静かつ論理的に批判する人の怖いところは、問題が混在しているのに、1つにまとめて結論づけようとすること。 

 

 川口さんの件は当初「発言はよくなかった」というニュアンスの批判が多く、それは自然なことでしょう。しかし、批判がエスカレートし、誹謗中傷が増えたあとも、同じ「発言がよくなかった」という観点からの議論が繰り返されています。 

 

 そもそも川口さんの発言の是非と、彼女への誹謗中傷の是非は、別の議論のはず。ところがネット上のコメントには、「発言がよくなかったから誹謗中傷もやむなし」という別の議論を混在させて自業自得と結論付けるようなニュアンスが目立ちます。だから批判の声はヒートアップしやすい一方でなかなか沈静化せず、本人や関係者のダメージが深刻化していくのでしょう。 

 

 さらに川口さんの周辺にいる人びとの行動にも怖さを感じさせられます。 

 

 川口さんの所属事務所は、「川口氏はX(旧Twitter)のSNSに於いて、異性の名誉を毀損する不適切な投稿行為が認められたことから、当社はアナウンス事務所として、所属契約の維持は困難と判断し、やむなく契約解除通知をするに至りました。尚、当社では、言葉は誰かを傷つけるためにあるものではなく、勇気づけたり愛を語るためにあるものと考えており、言葉を扱う仕事に携わる者としてはあってはならず、大変心苦しく考えております」などのコメントを発表しました。 

 

■契約解除の報告から感じる冷たさ 

 

 “フリーアナウンサー事務所”を掲げ、声にまつわる仕事だけでなく、企業広報の代行サービスなども行っているだけに、川口さんの発言は「看過できなかった」のでしょうか。それとも「誹謗中傷が事務所や取引先にまでおよぶ」と考えたのでしょうか。 

 

 しかし、それにしても契約解除の決断が早かったうえに、それに至る原因やフォローの言葉などもなく、ドライな対応に見えました。 

 

 前述したように川口さんは、「男性顧客向けの美容事業をますます頑張りたい」というコメントの前提や、「ご事情あるなら本当にごめんなさいなんだけど」という多少の配慮も書いていましたが、事務所によるこれらのフォローはなし。 

 

 

 川口さんの人柄、スキル、実績などにもふれなかったことで、「たまたま起きた失言」ではなく「起こりえた失言」という印象につながっています。 

 

 また、高知東生さんが自身のXに「昔は芸能事務所って、未熟で世間知らずな芸能人が失敗した時に、守ってくれたり一緒に謝ってくれたりして育ててくれたもんだが今や切り捨てだな。こんな対応は不安社会を煽るだけ。何を怖がっているのか?」と投稿し、1.5万もの「いいね」が押されました。 

 

 「発言はよくなかったけど、これで辞めなければいけないのか」「このくらいの発言でも会社は守ってくれない時代なのか」と冷たさを感じたのではないでしょうか。 

 

 その背景にあるのは「川口さんの社会的なポジションが自分たちとさほど変わらないのではないか」という感覚。「フリーアナウンサー」と言ってもキー局の元アナウンサーのような知名度や表舞台での仕事はなく、一般人に近い無名の人だから、そんなに叩かなくてもいいのではないか。 

 

 芸能人というより自分たちの立ち位置に近い彼女があっさり契約解除され、これだけ叩かれる世の中は怖い。もし自分も失言してそれが炎上したら、似たような苦境に陥るのかもしれない……。 

 

 事実、今回の件を報じる記事の多くが川口さんの名前ではなく「フリーアナ」「女性アナ」などと書いていましたが、これは裏を返せば「まだそこまで叩くほどのステイタスがない人」ということ。事務所の言い分はわかるけど、すでに彼女は相応の社会的制裁を受けているだけに、少しは守ってもいいのではないか。 

 

■「巻き込まれたくない」から放置 

 

 このところフワちゃんの不適切投稿と中丸雄一さんの不倫疑惑が相次いで報じられ、芸能活動を休止していますが、その流れに川口さんも当てはめて排除しようとするムードには違和感があります。 

 

 所属事務所だけでなく、取引先、先輩・後輩、共演者、恩師・友人なども「巻き込まれたくない」からなのか、これといったフォローなどの声は見かけません。ただ、フワちゃんに不適切な言葉を浴びせられて、それを許したやす子さんを「何で許すのか」と叩く理不尽な人もいる世の中だけにそれも仕方ないでしょう。 

 

 

 
 

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