( 202445 )  2024/08/17 00:51:44  
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8月14日、岸田文雄首相が突然の退陣を発表し、自民党総裁選への不出馬を表明した。

裏金事件などのスキャンダルが影響し支持率は低迷していたが、岸田首相は潔く責任を取る姿勢を見せた。

岸田首相の退任により、自民党内では新たな指導者を巡る戦いが始まるが、岸田首相の立ち回りは戦略的で、後継指名やキングメーカーとしての座を狙っているとされている。

(要約)

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GettyImages 

 

8月14日の岸田文雄首相の電撃的な退陣表明は、大きな衝撃を与えた。記者会見では9月末の自民党総裁選に不出馬と電撃的に語り、総理から退くと述べた。 

 

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「自民党は変わらなければならない」と繰り返した岸田首相は、今年1月に現職議員が逮捕され、派閥解消のきっかけとなったパーティー券のキックバック、裏金事件について、 

 

「政治とカネの問題ではトップとしての責任のあり方については、思いを巡らしてきた」 

 

「自民党トップとして所属議員が起こした重大な事件であり、責任を取る」 

 

と潔さを強調するかのようだった。 

 

会見当日、岸田派所属のA議員は、 

 

「岸田首相が次の総裁選に出馬しないという話がもともと出ていた。そんなことでは岸田派自体が大変なことになると、何人かの議員が7月末に岸田首相に絶対に出馬をしてほしいと、直談判したのです。その後、岸田首相は出る方向と聞いて安心していた。ところが不出馬とニュースで知り、驚いている」 

 

と天をあおいだ。 

 

兵庫県選出の自民党のベテラン国会議員であるB氏は、目下、大炎上が続いているパワハラの斎藤元彦知事と対比してこう語る。 

 

「斎藤知事が地位にしがみつき、全国に恥をさらす。岸田首相はスパッと決断して辞める。どうしようもないと思っていた岸田首相がすごい人物に見えてきたよ」 

 

自民党の政務調査役を20年以上経験し、岸田派(宏池会)職員でもあった政治評論家の田村重信氏も言う。 

 

「ハッキリ言えば、岸田首相は自民党の総裁選に出ても勝てないことをわかっていた。それなら箔をつけながら、格好よく辞め、一定の影響力を残すにはどうすればいいかということだったのでしょう」 

 

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裏金事件が浮上して以来、岸田内閣の支持率は低空飛行を続けてきた。この半年のマスコミの世論調査では、おおよそ30%を切る警戒水域が続き、お盆明けには「岸田おろし」がはじまっても、おかしくない状況だった。 

 

だが、総裁選投票日からみれば、おおよそ1か月ほど前の出馬辞退、退任表明だ。自民党内では「男をあげた」という声がもっぱらだ。 

 

自民党で複数回、大臣を経験したB議員は、烙印を押されていた岸田首相の最後の功績だと指摘する。 

 

「お盆が終われば、議員は続々と永田町に戻って総裁選の戦闘態勢だ。総裁選で誰に乗るかと同時に、岸田やめろの大合唱が響いたはず。だが、岸田首相が先に辞める、不出馬だ、裏金事件の責任をとると言っており、自民党のイメージは一気に回復するだろう。おまけに岸田首相は派閥を解散させており、議員が自由に次の総理を選択できる。岸田首相は素晴らしく物分かりがいいなんて絶賛している議員までいる」 

 

2021年9月、菅義偉首相(当時)が出馬を取りやめたのは、自民党の総裁選の20日ほど前のことだった。「菅おろし」が台風のように吹き荒れ、誰も止めることができないまま、自民党の総裁選、不出馬に追い込まれた。そのせいもあって、その後は非主流派に甘んじている。 

 

「岸田首相は菅元首相が叩きのめされて辞めたことを目の前でみて、立ち回りを考えたのではないか。首相を続けても、衆議院選挙で負ければその座を追われる。とても今の支持率では選挙で勝つのは無理だ」 

 

こう語るのは前出のB氏だ。岸田氏が退陣の先に見据えているのは「ポスト麻生」「ポスト二階」というキングメーカーの座だという。 

 

麻生氏は、岸田首相が打ちだした「党役員1期1年、3期3年」という党規約改正で副総裁の任期はこの秋で終わる。次のポジションは用意されていないのだ。 

 

これまで、安倍晋三元首相、菅義偉元首相、岸田文雄首相と3人のキングメーカーとして、麻生氏は振る舞ってきた。だが、裏金事件から岸田首相の派閥解散によって、最後の砦である麻生派会長の椅子も風前の灯である。義弟の鈴木俊一財務大臣に頼るしかないないのが関の山だ。 

 

 

さらに、麻生氏と同様にキングメーカーとして隠然と力を誇示してきた、二階俊博元幹事長も裏金事件で政界引退を表明している。 

 

「自民党のキングメーカーの座布団が空席になるわけだ。岸田首相は派閥解散とはいえ、岸田派で50人ほどの議員を束ねて、総理を勝ち取った。おまけに、派閥を解消したせいで、岸田政権、官邸に権力が集中していることも好都合。岸田首相のご機嫌うかがいのため、みんな官邸を注視している。 

 

麻生氏、二階氏が消えて誰もいない、キングメーカーになるには絶好のチャンスでしょう。それなら、岸田おろしで批判を浴びる前に、不出馬を決めて、キングメーカーをとりに行った方が、得策だ。ライバルがいないのですから」(B議員) 

 

麻生派所属のC議員も同様にこう語る。 

 

「岸田首相の立ち回りは実に巧みです。麻生会長は年齢的にも次の選挙に出馬するかどうか微妙です。二階氏は息子に後を譲り、安倍元首相もお亡くなりなった。キングメーカーのライバルは、菅氏くらいでしょう。 

 

岸田首相は菅氏にはない派閥のトップだったという、プライオリティがある。早々に退任を表明していい人を演出すれば、キングメーカーの座は転がり込んでくる。安倍派は安倍元首相の長期政権で、次の総裁候補がいなかった。しかし、岸田首相には、林芳正官房長官や上川陽子外相という次のタマがいることも牽制材料になる」 

 

岸田首相は会見で「後継」についての質問には、 

 

「政治とカネの問題、あるいは自民党の信頼回復への改革努力が続けるべきだ」 

 

と述べ、裏金事件の中枢にいた安倍派の動きを封じこめるような内容だった。 

 

「後継指名」を期待していたのは茂木敏充幹事長だ。岸田首相の不出馬表明を受け、8月14日夜、急きょ、麻生氏と会談に臨んだ。 

 

それに反発するように、非主流派として動いていたのが、菅氏であり、石破茂元幹事長、小泉進次郎元環境相である。誰もが自民党の総裁選に勝ち抜くには、岸田首相を敵にまわすことはできない。 

 

「石破氏、小泉氏それに河野太郎デジタル相、3人とも総裁選でやりあえば、まさに岸田首相の思い通りかもしれない。確実に自民党の人気は回復します。いずれ岸田首相の評価は高まる」 

 

と田村氏は話す。 

 

「麻生氏は、岸田首相に『勝てないなら出馬するな』と説得したそうだ。岸田首相はそれを切り返して、キングメーカーを狙いに走った。ここまで策士だったとは思わなかったよ。派閥がなくなったので、総裁選は人気投票。茂木氏はいくら麻生氏と話し合っても、人気がないんだからしょうがないよ。結局、高笑いは岸田首相だ」(B議員) 

 

勝負の極意を知っていたのは、実は岸田氏だったということのようだ。 

 

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現代ビジネス編集部 

 

 

 
 

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