( 202972 ) 2024/08/18 17:09:13 0 00 地方の議会選挙では「無投票当選」や「定員割れ」も少なくない(イメージ)
2024年7月の東京都知事選挙は、現在の日本の“歪み”を象徴する一面を持っていた。立候補者数が過去最多の56人にのぼり、選挙ポスターの掲示板の枠が足りなくなるという“異常事態”も発生したが、これは例外中の例外と言える。地方の議会選挙の場合、立候補者が少なく、「無投票当選」や「定員割れ」が増えてきているのが現実だ。地方選挙では今、何が起こっているのか──。
【グラフで一目瞭然】都道府県議会や町村議会で急増傾向 統一地方選における無投票当選者数の割合の推移
人口減少問題の第一人者で、最新刊『縮んで勝つ 人口減少日本の活路』が話題のジャーナリストの河合雅司氏(人口減少対策総合研究所理事長)が解説する(以下、同書より抜粋・再構成)。
* * * 日本崩壊の予兆は、地方議員のなり手不足からも見てとれる。
地方自治は二元代表制であり、独任制の首長と住民の多様性を反映させる議会からなる。もし、立候補者が議会の定足数を満たさない事態となれば議会は成り立たず、有権者自らが予算案などを直接審議しなければならなくなり、地方行政は大きな混乱を来す。
人口減少で多くの市町村が“消滅”を危惧される中、こうした事態は非現実的な話ではない。すでに地方議会選挙における無投票当選者が増えているのだ。
総務省の「第33次地方制度調査会」によれば、2019年の統一地方選において無投票当選があったのは482選挙区(全体の26.9%)に及ぶ。当選者は1816人(同12.1%)で、とりわけ都道府県議会と町村議会で急増傾向が目立つ。それぞれ26.9%、23.3%で、いずれも過去最高を記録した。8自治体では立候補者数が定数割れした。
都道府県議選(2019年に統一選を実施しなかった都道府県は直近の統一選)で無投票選挙区を比較すると、香川県の69.2%が突出している。岐阜県(61.5%)と広島県(60.9%)も6割台だ。一方、東京都は無投票の選挙区はなく、沖縄県は7.7%にとどまる。大阪府(15.1%)、鳥取県(22.2%)なども低水準で、地域差が大きい。
全国町村議会議長会が設置した有識者会議の報告書によれば、2019年5月~2023年4月の4年間に行われた町議会議員選挙のうち無投票および定数割れは254町村(27.4%)だった。2015年5月~2019年4月までの4年間は204町村(21.9%)だったので5.5ポイントの上昇だ。
立候補者数が「定数+1人」という、ぎりぎりで選挙戦になったところは、2019年5月~2023年4月の4年間で299町村もあった。これらと無投票および定数割れの254町村と合わせれば553町村となり、全体の59.7%を占める。
これまで無投票や定数割れとなっていない町村議会であっても、潜在的ななり手不足状態に陥っているところが少なくないとみられており、報告書はこれまでのペースで増え続けたとすれば2023年5月~2027年4月までの4年間で全体の34.1%にあたる316町村が無投票になると予測している。
単純計算では、3つに1つの町村で投票が行われなくなることになる。これもまた、日本崩壊のシグナルと言えるだろう。
【プロフィール】 河合雅司(かわい・まさし)/1963年、名古屋市生まれの作家・ジャーナリスト。人口減少対策総合研究所理事長、高知大学客員教授、大正大学客員教授、産経新聞社客員論説委員のほか、厚生労働省や人事院など政府の有識者会議委員も務める。中央大学卒業。ベストセラー『未来の年表』シリーズ(講談社現代新書)など著書多数。最新刊『縮んで勝つ 人口減少日本の活路』(小学館新書)では、「今後100年で日本人人口が8割減少する」という“不都合な現実”を指摘した上で、人口減少を前提とした社会への作り替えを提言している。
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