( 203812 )  2024/08/21 15:04:49  
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岸田総理による突然の不出馬宣言で、自民党に激震が走った。麻生副総裁でさえ当日の朝まで知らされていなかったという。そして自民党総裁選の号砲は鳴った。これから新しい世代による闘いが始まる。 

 

【当落一覧】次の総選挙で「落選する議員」の全実名はこちら! 

 

前編記事『菅義偉前総理がついに「最終兵器」を出した…!「次の総理」にもっとも近い男の名前​』より続く。 

 

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そして岸田の退場によって、進次郎が一挙に総裁選の本命に躍り出た。今月10日に出演したラジオ番組では、これまで総裁選出馬に反対していたとされる父・純一郎のことに触れながら、「私、今43歳ですけど仕事上の様々な判断・決断をいちいち親父に仰ぎますか? 

 

歩みを進めるも引くも、自分で決めるのは当たり前のことだ」と意欲を語ったばかり。 

 

さらに菅のサポートのもと、進次郎はすでに動き出しているという。 

 

「菅政権で首相秘書官を務めた官僚たちが、進次郎氏が総裁選に出る際の公約作りに取り掛かっています」(前出・全国紙政治部記者) 

 

頭一つ抜け出した形の進次郎。一方、他の総裁候補たちは苦戦を強いられている。 

 

外遊先の台湾で岸田不出馬の報に触れた元幹事長の石破は、報道陣に対して、「総裁選に推してやろうという方々が20人おられれば、ぜひとも出馬したい」と語った。その時点で、まだ推薦人20人の目処がついていないことを自ら明かしたのだ。 

 

「石破さんは今月8日に国会内で勉強会を開きましたが、集まったのは本人と講師を含め、たったの8人。これでは20人の推薦人を集めるのは難しいのではないか」(自民党議員秘書) 

 

河野太郎・デジタル相は派閥の親分である麻生の支援を得るため、持論だった脱原発を撤回。安全性が確認された原発の再稼働を当面容認する考えを示してすり寄った。ところが麻生の反応は芳しくない。 

 

「9日に赤坂の日本料理店『照よし』で、3時間にもわたって食事をしましたが、麻生さんは一向に首を縦に振らなかった。 

 

背景には、麻生派のベテランが河野さんを認めていないことがある。特に甘利明さんは以前、河野さんと地元・神奈川の県連会長の選任をめぐって揉めており、河野さんの支援には絶対反対です。麻生さんは派閥をなんとしても維持したいと考えている。そのため河野さんに乗ることはできないのです」(麻生派中堅議員) 

 

 

幹事長の茂木敏充は、岸田が不出馬を表明したその夜に、麻生と行きつけのステーキ店「Oyaizu」(赤坂見附)で食事をともにしている。 

 

「去年の同じ日に同じ店で2人は食事をしているので、予定していた日がたまたま岸田さんの不出馬表明と重なったのでしょう。麻生さんはこれまで『岸田の次はアンタだ』と言って、茂木さんを従わせてきた。だから茂木さんは麻生さんに支援を頼んだ。 

 

しかし、さすがの麻生さんもここまでの世代交代の波が来るとは予想できなかった。進次郎が出てくるとなると、茂木さんではどうしても古い人間と見られて太刀打ちできない。ひとまず答えは先延ばしにしたようです」(同前) 

 

一方で麻生が最近、目をつけ始めた総裁候補がいる。"コバホーク"こと小林鷹之(49歳)だ。 

 

「小林氏は東大法学部を卒業後、'99年に大蔵省(現財務省)に入省。財務官僚として勤務する傍ら、米ハーバード大ケネディ行政大学院に留学したエリートです。大学時代はボート部で主将を務めるなど、文武両道な一面も併せ持っています。 

 

'12年衆院選で千葉2区から出馬し、初当選。二階派に所属し、順調にキャリアを重ね、'21年10月の岸田内閣発足時には、当選3回ながらも初代・経済安保担当相に抜擢された。若手・中堅でも随一の『政策通』として知られています」(前出・全国紙政治部記者) 

 

この小林の後見人を公言しているのが、麻生派の甘利だ。小林は、甘利が座長の「新国際秩序創造戦略本部」で事務局長を務めるなど、甘利のもとで経済安保戦略に汗を流してきた。その甘利が、麻生と小林のパイプ役になっているという。 

 

「麻生さんの総裁選のカードは岸田、茂木、河野だったが、すべて使えなくなった。そこへ甘利さんが小林さんを連れてきた。憲法改正にも前向きで、麻生さんがこだわっている9条への自衛隊明記にも賛同している。麻生さんからすれば渡りに船というわけです。 

 

小林さんであれば、刷新感という点でも進次郎さんと渡り合える。大野敬太郎さんや旧安倍派の福田達夫さんなどの中堅も推しており、勢いがあります」(自民党関係者) 

 

岸田の不出馬会見の日の夜にも、大野をはじめとした若手・中堅議員たちが赤坂議員宿舎で小林を囲んだ。小林のバックに麻生がつけば、菅─進次郎にとっては大きな脅威だ。さらにここに「菅憎し」の岸田が乗っかれば、一大勢力となる。 

 

 

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しかし、小林にも弱点がある。 

 

「もともと同じ派閥だった旧二階派の武田良太さんが、小林さんの総裁選出馬をよく思っていないのです。武田さんと麻生さんは地元・福岡政界で覇権を争ってきたライバル同士。小林さんの陰に、麻生さんの気配を感じ取った武田さんは、旧二階派として小林さんのことを推すことはないと言っています」(二階派ベテラン議員) 

 

そして、進次郎が小林に圧倒的に勝っている点がある。 

 

知名度だ。 

 

「今回の総裁選は派閥の枠組みがないため、長老たちによるコントロールが利かない。そのため、進次郎、小林に加えて、茂木や河野、場合によっては石破や野田聖子、高市早苗、林芳正、加藤勝信など候補者が乱立することが考えられます。 

 

となると1回目の投票では票が分散し、誰も過半数を獲れません。仮に進次郎と小林の決選投票となれば、議員たちは次の衆院選のことを考えます。そうなると、小林では選挙の顔としてあまりに弱い。多くの議員が進次郎に投票するのではないでしょうか」(前出・菅グループ中堅議員) 

 

進次郎総理の誕生、そして進次郎が馬脚を現す前に解散総選挙へ、というシナリオが自民党内で主流になりつつある。 

 

政治アナリストの伊藤惇夫氏が語る。 

 

「私は進次郎さんのことを『天才子役』と呼んできました。若い頃からチヤホヤされて、政治家としてちゃんとした実力をつけられなかったという意味です。彼を持ち上げる動きがあるとしたら、『神輿は軽くてパーがいい』ということなんでしょう。自民党のベテラン、腹黒い連中のオモチャにされようとしているようにしか見えません」 

 

進次郎と小林、若いが政治家としての能力が未知数の2人が一騎打ちを行う―そうなればたしかに世間の注目を集め、総裁選は盛り上がるかもしれない。 

 

しかし、背後から2人を自分たちの思い通りに操っているのは、古い自民党体質が染み付いたベテラン議員たちだ。 

 

表紙がどれだけ新しくなっても、中身はいつまでも変わらない。それが自民党なのかもしれない。 

 

(文中一部敬称略) 

 

「週刊現代」2024年8月24・31日合併号より 

 

【もっと読む】父・純一郎もついに容認…小泉進次郎・43歳「総裁選出馬」へ背中を押す、自民党「長老たちの企み」​ 

 

週刊現代(講談社・月曜・金曜発売) 

 

 

 
 

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