( 205437 )  2024/08/26 16:00:32  
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記事のポイント 

 

パリ五輪で多くのアスリートがアニメの影響を示し、人気の加速が伺えた。 

 

アニメ文化がスポーツ界にも浸透し、とくに若い世代が熱中している。 

 

アニメ等のオタク趣味は今やクールとされ、マーケターのキャッチアップも必須に。 

 

アニメが主流のカルチャーにしっかりと根を下ろした証拠がまだ足りないという人も、ことしのパリ五輪を見れば納得するだろう。 

 

アニメの勢いは、7月26日のパリ五輪開幕の時点ですでに明らかではあったものの、この世界最高峰のスポーツイベントでさらに加速した。多くの国々のアスリートがお気に入りのアニメから拝借した印象的なビクトリーポーズで新たなファンを獲得する一方、観客はインターネット上に、アスリートをアニメキャラクターにたとえるミームを溢れさせた。 

 

パリ五輪でアスリートたちが見せたアニメ愛の片鱗は数え切れない。米国の短距離陸上のノア・ライルズ選手は、レース前に『遊☆戯☆王』カードを見せ、男子100メートルで金メダルを獲得した時には『ドラゴンボール』のかめはめ波のポーズをとった。 

 

米国の砲丸投げのペイトン・オッターダール選手は、アリーナ入場時に『ONE PIECE』の主人公を真似たパフォーマンスを見せ、バレーボールチームは『ハイキュー!!』の主題歌を流した。これでもごく一部の例だ。 

 

「プロスポーツ界でも、(NFLの)ジャマール・ウィリアムズ選手、(NBAの)ザイオン・ウィリアムソン選手、(NBAの)ジョエル・エンビード選手などが、積極的にオタク文化、とくにアニメへの関心を発信している」と、アニメ・ゲームブランドを専門に扱うコンサルティング企業「オニビジョン(Oni Vision)」の創業者であるタチアナ・タッカ氏は指摘する。「アスリートは常にオタク文化に引かれてきたように思う。これまでそこにスポットライトが当たらなかっただけではないだろうか」。 

 

東京で開催された前回の夏季五輪でも、アニメのモチーフは頻繁に登場した。たとえば、日本のあるテレビ番組司会者は『NARUTO─ナルト─』のキャラクターのコスプレ姿で一部の五輪報道を行った。だが、ことしのオリンピックではアニメへの言及が爆発的に増え、しかもほとんどはアスリート自身が発信しているのだ。 

 

「2021年に開催された東京五輪では、開催地を考えれば(アニメとの結びつきが強調されるのは)文化的にみて筋が通っていたが、そこからアニメはさらに飛躍したと断言していいだろう」と、ジャーナリスト兼マーケターで、2022年以降アニメの台頭について取材を続けているケリー・ワーナネン氏は語る。「アスリートとファンはアニメ愛を示すのを心から楽しみ、オリンピック文化に浸透させた。若いアスリートとオーディエンスがソーシャルメディアでこうした瞬間に言及したおかげだろう」。 

 

 

世代間のアニメへのイメージの変化も、ことしの五輪でアニメモチーフが爆発的に増えた原因のひとつと言える。ミレニアル世代や初期Z世代の一部はいまだにアニメをオタクの領域と考えているかもしれないが、こうした認識はZ世代やアルファ世代(2010年代以降生まれの世代)の若いアスリートにとって、もはや問題にならない。彼らはアニメに囲まれて育ったからだ。 

 

五輪出場アスリートの平均年齢は26.5歳であり、ことしのオリンピアンたちがもっともアニメ愛が強い層の中心だったことに驚きはない。 

 

「90年代アニメのリバイバルや、大作映画のヒットも確実に影響した」と、電通のグローバル最高クリエイティブ責任者を務める佐々木康晴氏は語る。「『ライオン・キング』や『トイ・ストーリー』を見て育った世代が現在のブランドの意思決定を担っている。彼らはアニメや、アニメファンの献身性を本能的に理解している」。 

 

トップレベルのスポーツは、いつの時代もクールなものの代名詞であり、インスピレーションの源であり、世界中の人々の憧れだ。今夏、世界の目が注がれたスポーツイベントは、アニメモチーフであふれていた。パリ五輪でアニメが脚光を浴びるなか、マーケターはより広範に起こっている文化的転換に注目するのが賢明だろう。要するに、いまアニメがクールなのだ。 

 

「多くのアニメファンが、五輪で繰り広げられる人間離れした肉体的な神業を、ファンタジーの世界でのアニメキャラクターの動きになぞらえている」とタッカ氏は述べ、「こうした偉業を実現できるようなアスリートを見ると、潜在意識、あるいは無意識のレベルで、アニメの世界と比較せずにはいられないのだ」と結んだ。 

 

[原文:Does anime’s presence at the Paris Olympics signal the end of the jock-nerd divide?] 

 

Alexander Lee(翻訳:的場知之/ガリレオ、編集:島田涼平) 

 

編集部 

 

 

 
 

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