( 206422 )  2024/08/29 16:24:33  
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(※写真はイメージです/PIXTA) 

 

人は見た目で判断してはいけないというものの、身の回りには、見かけによらない真の富裕層がいることも……。本記事では、Aさんの事例とともに富裕層の実情を社会保険労務士法人エニシアFP代表の三藤桂子氏が解説します。※プライバシーのため、実際の相談内容と一部改変しています。 

 

【早見表】年金に頼らず「夫婦で100歳まで生きる」ための貯蓄額 

 

総務省統計局の家計調査によると、「貯蓄現在高階級別世帯分布(二人以上の世帯)(2022年)」の貯蓄保有世帯の中央値は1,168万円となっています。ですが、平均値は1,901万円であるのは、貯蓄の多い世帯が、平均値を押し上げているためです。貯蓄が4,000万円以上の世帯は12.5%であることから、なかには億を超える貯蓄がある人も多いことが推測されます。 

 

40歳のAさんは都内でバスの運転手として働いています。年収は500万円とごく一般的な家庭ですが、保有資産は5億円あるそうです。 

 

生涯賃金は大企業で定年退職まで働き、退職金を含めて、大卒の男性で約3億円となっています。Aさんは、すでに生涯賃金以上の資産を持っているため、働くことなく生活することが可能と思われます。 

 

Aさんは、世間体を気にして働いているのですが、お金持ちゆえの悩みもあるそうで……。 

 

Aさんは大学卒業後、定職につかず、アルバイトをしていました。しかしながら、30歳のときに両親を交通事故で亡くし、一人息子のAさんは、親の財産等を相続することになります。 

 

そもそもAさんが、5億円の資産を保有することになったのは、両親が亡くなったことがきっかけです。相続財産(慰謝料、死亡保険金等を含む)としては、1億円相当になりました。Aさんは、相続財産で贅沢することなく、資産運用したところ、大成功します。実は、大学生のころから興味本位でアルバイト代等を資産運用していた経緯があります。両親がのこしてくれた財産であることから、大切に資産運用していこうと、さらに気合が入ったことはいうまでもありません。 

 

Aさんは、両親の相続財産と、自身の投資の資産とで、5億円まで増やすことができたのです。Aさんは、バスの運転手でありつつ、実は投資家だったのです。 

 

 

両親が亡くなった直後は、さまざまな方から、お悔やみや励ましの言葉をもらいました。しかし、すべての方が同じ想いを持っているわけではなく、日常生活が落ち着いてくると、ときには、慰謝料が入ったならお金を貸してほしいなど、心なく急に連絡をしてくる人もいます。 

 

Aさんは、まとまったお金が入る、財産を持っているということがわかると、人間不信になりかねないと、静かに質素に暮らすことを選びました。「人の噂も七十五日」ということわざもあります。住宅ローンがあった等の支払いもあり、財産は少なくなっているということを伝えると、次第に忘れ去られていきます。 

 

実はAさんは以前、別の運送会社に勤めていました。仲良くなった同僚に酔った勢いで資産額を話したんです。同僚が言葉を失い、酔いが醒めたので「しまった」とは思いました。そうしたら案の定、次の日には社内で噂になっていて。居づらくなって転職しました。 

 

苦い経験をしたことで、さらに資産を増やしたとしても、世間からみえる身の丈にあった生活をしようと決め、定職としてバスの運転手を選びました。「はたから見れば冷やかし程度に働いているように見えると思います。本当にお金を持っている人と持っていない人とでは、いつ辞めてもいいかどうかという点で全然違いますから。実際、そうみられても、そのとおりだとも思います」Aさんはいいます。 

 

いまは両親のことがあってなのかはわかりませんが、バスの運転手をしながら、好きな投資をして暮らすに至っているのです。 

 

Aさんは、バスの運転手をやらずとも、投資家として十分にやっていけるだろうと思われますが、今後結婚予定のAさんにとって、配偶者やお子さんができたときの子どもへの影響であったり、Aさん自身の世間体だったりと、お金があることでの悩みが出てくる可能性があるのかもしれません。現在は、バスの運転手であることで、社会保険に加入することもできます。 

 

「今後も日ごろの暮らしは質素にし、投資を続けていきます」と語っていました。 

 

<参考> 

総務省統計局の家計調査:貯蓄現在高階級別世帯分布(二人以上の世帯)(2022年) 

https://www.stat.go.jp/data/sav/2022np/pdf/summary.pdf  

 

独立行政法人 労働政策研究・研修機構:2022年ユースフル労働統計 

https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/kako/2022/documents/useful2022.pdf  

 

三藤 桂子 

 

社会保険労務士法人エニシアFP 

 

代表 

 

 

 
 

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