( 207593 ) 2024/09/02 00:08:47 0 00 写真はイメージ(アフロ)
未婚の若者の割合が増え続けている。では、20 代は結婚を望んでいないのかというと、必ずしもそうではない。新成人(20歳)男女に行った民間調査によれば、「将来結婚したい」人の割合は78.0%で、結婚を希望する年齢は「25歳」が最も多かった(株式会社オーネット調べ)。また、実際に日本で結婚する夫婦の年齢は、男女ともに27歳が最多だ。コロナ禍を経て出会いが激減したこの数年、20代はどのように「結婚」を捉えているのか。婚活を経て結婚した夫婦や現在婚活中の女性、結婚相談所で20代男女を担当する仲人、専門家に話を伺った。(取材・文:堀 香織/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
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中部地方に住む、製薬会社勤務のサトミさん(仮名・30歳)が婚活を始めたのは27歳のときだ。きっかけは2人の男性との別れ。一人は「大学の奨学金を返し終わる10年先まで、けじめとして結婚しない」と言い、もう一人は奨学金の返済があるわりには金銭感覚が緩く、将来に不安を感じた。
「次は金銭感覚を含んだ価値観が合う方で、ちゃんとゴールインできる相手とお付き合いしたかった。それで最短で出会えそうな結婚相談所に登録しました」
入会したのは、結婚相談所4361社が加盟する、日本最大級の結婚相談所ネットワークIBJの加盟店だ。会員は専用サイトで自由にお見合い相手を探すことができ、婚活カウンセラーがお見合いの調整や交際サポートを行う。
結婚相談所での婚活はいくつかのステップを踏む。まず1回お見合いして、お互いが希望すれば「仮交際」に進み、連絡先を交換して2回目以降も会う。「仮交際」では複数人と並行して会うことが可能だが、相手を1人に絞る段階で「真剣交際」に進み、お互いに結婚を希望したら「成婚退会」する。
サトミさんは2022年2月に活動を開始。お見合いしたのは13人で、仮交際に進んだのは5人。そのうちの1人である自動車業界エンジニアのトモアキさん(仮名・36歳)と4月にお見合いして、同年11月に婚姻届を出した。
「たとえば、ぜいたくするっていったらこのぐらいの金額だよねとか、働くならこれくらい頑張って働くよねっていう感じが似ていたんです」
休日はAmazonプライムを見てのんびり過ごす。スターバックスに行くのが好き。家事は「相手のためを思って自発的にやっていて、どちらかというと家事の押し付け合いではなく、家事の奪い合い(笑)」とトモアキさん。お互いに子どもがほしいかどうかはまだ決まっておらず、「相手がほしいって言ったら、いいよってなる」。結婚して1年半経つが、新婚のような仲睦まじさだ。
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奈良在住で営業職のタクヤさん(仮名・25歳)は、もともと独りで生きていく予定だった。学生時代は個人競技のスポーツに打ち込んだ。周囲が彼女とけんかしたり派手に別れたりするのを「なんて無意味なんだろう」と冷ややかな目で見ていた。
だが、24歳で婚活を開始。コロナ禍に就職し、新人担当の上司からパワハラまがいの執着を受けてのことだ。絶対的な味方がほしいと思った。
まずは2つのマッチングアプリに登録し、婚活パーティーにも顔を出したが、すぐに結婚相談所一本にしぼった。
「アプリのプロフィール写真って、花とか風景とか、本人だとしても後ろ姿だけ。後ろ姿になんで『いいね500』も付くんだろうなと思いました。パーティーは相手が5分で入れ替わるのに、女性は2000円のところ男性は5000円支払う。料金に見合う対価が得られないと思ったんです」
結婚相談所も3カ所利用している。最初は費用が安い相談所を2カ所掛け持ちし、1時間お茶することで異性との会話術を鍛えた。その後、20代から支持を得ている結婚相談所に移り、1カ月で21人とお見合い。学年が1つ上の女性と2023年10月初旬にお見合いをし、11月初旬に真剣交際を始め、翌年元日に婚姻届を出した。相談所の3カ所利用を「戦略的移籍です」と笑うが、部活動時代に「どうすれば勝てるか」を考え抜き、データを積み上げ、練習メニューを自ら作成した経験と大いに重なる。
「婚活では、ご両親を含めて相手との相性の良さを具体的にイメージしました。IBJではプロフィールに両親の職業を書く欄があります。自分は将来的に自営業を考えているんですけど、例えばご両親も女性自身も公務員だと考え方が合わないかもしれないとか。
正直なところ、女性の年収は見ていました。実際、男の稼ぎはそんなに上がらないじゃないですか。相談所では若い女性は年収非公開が多いですが、そんな中で金額の大小にかかわらず公開していると、『仕事をちゃんとされている女性なんだな』『誠実なんだろうな』と好意的に受け止めていました」
結婚生活はすこぶる順調だという。「心の安定感が抜群に変わりました。やはり揺るがない“不動のバック”がいるというのは大きい。僕、上司にも意見を言えるようになったんです。家で最愛の妻が待っているんだから、別に何が起きても大丈夫って」
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東京都在住のオサムさん(仮名)はIT企業で働く28歳。相談所で知り合った1つ年下の女性と結婚した。
婚活を始めたのは2022年3月、25歳のとき。それまで付き合っていた彼女と別れたこと、24歳のときに両親が他界し「早めに身を固めたい」と思ったのが理由だ。
マッチングアプリでも活動したが、早々に結婚相談所に移行した。お見合いが成立したのは20人以上、仮交際に進んだのが約10人だという。
「たとえばデート先が混んでタイムスケジュールが押したとき、どうすればリカバリーできるかを一緒に考えてくれる人がいい。共同経営者として“家”を築くのにあたって、冷静に判断できるか、論理的な思考力があるかというのは真剣に見て判断しました」
婚活中にひしと感じたことがあるという。25歳という自分の年齢と近い女性のほうが、30代前後の女性よりも、結婚をずっとリアルに捉えているということだ。
「その若さで相談所に大枚はたいて入会するだけあって、覚悟ができている人が多かった。早々にデリケートな話も突っ込んで聞けたし、彼女たちも結婚に対して変な幻想を抱いていない。子どもも欲しいなと思ってはいるものの、持ったら持ったで責任が増えるし、仕事や住む家の計画も変わってくる。その際にどうしていくかを逆算して話してくださる女性がかなり多かったですね」
サトミさん、タクヤさん、オサムさんは、婚活を始めて1年以内に結婚している。そのスピード感を支えているのは、20代特有の「効率と合理性」だ。
アプリではなく結婚相談所を選び、時間を惜しまずに大勢とコンタクトし、見合いやデート前には相手のプロフィールを事前に読み込んで、質問を考えておく。言ってみれば「結婚」を目標に据えた短期決戦のようでもあり、オサムさんも「ほとんど就活みたいだった」と話す。
20~45歳の会員限定の結婚相談所「Mariage Prive(マリアージュ・プリヴェ)」代表の仲人・葉月さんも20代特有の「効率と合理性」に同意する。
「世代の違いを感じることがあるとすれば、30~40代は『いい人だけど、もっといい人がいるんじゃないか』と決めきれない人が多いのに比べて、20代は『いい人がいればそれで決める』という人が多い。そこがスピードに直結するし、合理的かなと思う由縁です」
かつ、彼らの求めている夫婦像は「平等・対等」、つまり同志のような夫婦だ。年齢差は、サトミさん以外のふたりは1歳差。年収はほぼ同額程度だ。
「価値観がある程度近い人と出会いたいと思っている人が多い。自分とは違う家庭環境で育った人と冒険したいとも思わないし、玉の輿を狙いたいとも思っていない。協力して家庭を築いて堅実に幸せをつかみたい、という感じが強いです」
それは母親や職場の1世代上の女性が、不妊治療や、仕事と子育ての両立で大変そうにしているのを見て学んだ結果なのではないか、と葉月さんは分析する。
相談所「ナレソメ®️予備校」の代表取締役・宇波さん
SNSアカウントの総フォロワーが135万人を超える相談所「ナレソメ®️予備校」の代表取締役・宇波さんも、「今の20代はデジタルネイティブで、20代前半から普通にマッチングアプリを使うし、X(旧Twitter)などで30代の婚活についてのつらい発信を読み、だったら早めに動こうと、すぐ婚活を始める。賢いんですよ」と指摘する。
写真はイメージ(Paylessimages/イメージマート)
結婚相談所ほど効率的ではないが、マッチングアプリを通じて結婚相手と出会った20代もいる。そして、「平等・対等」が理想なのは変わらない。
香川県在住、金融機関勤務のアヤコさん(仮名)は27歳。社会人1年目の23歳から3種類のマッチングアプリに登録し、県内在住の約20人とデート。3回続けて会った2人のうち、同い年で食品系の製造会社に勤める男性とお付き合いし、1年半が経ったところで同棲を始めた。
男性は母と姉2人の家庭に育ったせいか、よく気がつく。買い物中は必ずカゴや荷物を持ち、女性の怒るポイントも熟知していて難なく回避。家事全般も得意で「1人分も2人分も変わらないから」と、アヤコさんの弁当もつくる。
奨学金などの借金の類いは、ふたりともなし。年収はアヤコさんのほうが少し上で、食費は彼、光熱費はアヤコさん、家賃は彼の会社の補助というあんばい。NISAも活用して、将来の子どもの学費にも備えている。結婚への道は確実に感じたが、実際にこの8月、結婚したそうだ。
ナレソメ®️予備校の利用者の平均年齢と年収は、男性が30歳で約700万円。女性も30歳で約500万円。求められない女性の職業は「家事手伝い」「アルバイト」であり、将来専業主婦を望む人も敬遠されているのだという。
となると、結婚相談所に入会できる程度の高収入でないと、結婚は難しいのだろうか。宇波さんは否と言う。
「20代で低年収の男性は、見た目を磨いて、年上女性にアプローチすることをおすすめしています。いまは年上の女性かつ、お相手の年収を気にしない女性がいるから、そこでマッチングが可能です」
20代は当たり前のように共働きで人生プランを考えている人が多いという。
「20代の結婚は『同類婚』です。女性は自分ひとりで稼げる時代になってきたので、男性にそこまで年収を求めないんですよね」
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