( 207873 )  2024/09/02 17:25:20  
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男性更年期障害の認知を広げるため、ホンダが従業員にメールで送った社内報の画面=同社提供 

 

 男性更年期障害を理解し、支援する動きが、企業や自治体で広がっている。症状があっても気づかなかったり、言い出せなかったりする人は潜在的に多いとみられる。適切に対処するには、まずは正しく知ってもらうことが重要になりそうだ。 

 

【チェックリスト】男性更年期障害の兆候をつかむには 

 

 従業員の9割が男性というホンダは、2022年の10月から、社内向けに本格的な啓発活動を始めた。まず力をいれたのは、まだまだ実態が知られていない男性更年期障害の認知拡大だ。 

 

 企業のヘルスケアを支援するクレードル(東京・渋谷)のサービスを活用し、症状や治療法を医師が解説するオンラインセミナーを、従業員や家族が聴講できるようにした。 

 

 メールの社内報でも、男性更年期障害に関する解説をたびたび掲載。メールの情報を見た男性従業員が不調の原因に気づき、適切な治療で回復したケースもあった。仕事のパフォーマンスも向上したという。 

 

 こうしたケースについて、キャリア・多様性推進室室長の橋本昌一さんは「おそらく氷山の一角」とみる。「私も含め、今の40代以上は『男は弱みを見せちゃいけない』と育てられてきた世代。相談しやすい環境を作るためにも、『男性更年期障害は誰にでも起こりうることで、恥ずかしいことじゃない』と繰り返し周知していきたい」と話す。 

 

 鳥取県庁では23年10月から、休暇制度での支援をしている。更年期障害とみられる症状で業務が困難な職員は、年間5日までの特別休暇を取得できるようにした。休み中も給与は支給され、対象は男女を問わない。開始から半年で、女性で16人、男性で9人の取得があったという。 

 

 制度開始前の23年春には、職員向けのアンケートを実施。更年期症状の有無について訪ねたところ、1177人の回答者のうち、「有り」と答えた人の割合は女性が41%、男性でも31%にのぼった。 

 

 厚生労働省が22年3月に実施した「更年期症状・障害に関する意識調査」によると、男性にも更年期にまつわる不調があることについて「よく知っている」と答えた人の割合は、50~59歳の男性でも15.7%にとどまった。また更年期症状を自覚した人のうち、医療機関を「受診していない」と回答した人の割合は86.5%で、女性に比べて医療機関での受診に後ろ向きな傾向もうかがえた。 

 

 順天堂大学大学院主任教授(泌尿器科学)の堀江重郎さんは「男性の場合、更年期障害を認めることは現役から遠ざかるというイメージがあるからなのか、『症状を認めたくない』『周囲に言いにくい』と考える人が多くいます」と指摘。職場などで適切な治療の機会につなげるためにも、「『男なら我慢せよ』『死ぬ気でやれ』といったマッチョな風潮のままではだめです。男性にも更年期障害があって不調になりうることが、もっと知られていいと思います」と話す。 

 

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■男性の更年期障害とは 

 

 男性ホルモン(テストステロン)の急激な減少によって、体や心に影響が出て日常生活に支障をきたす状態。疲労感、発汗、不安、いらいらなどの症状がある。女性の更年期障害と異なり、発症の有無や時期は個人差が大きい。環境変化によるストレスや、栄養不足が原因になりうる。回復には、食生活の改善や適度な運動が有効とされる。(高橋尚之) 

 

朝日新聞社 

 

 

 
 

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