( 208163 ) 2024/09/03 15:42:35 0 00 小泉進次郎氏は裏金問題にどう対応するのか
自民党は総裁選の真っただ中。9月6日に正式な立候補表明を予定している小泉進次郎元環境相を応援するA議員が、「頭が痛い」と打ち明ける。
【写真】裏金問題を「終結」させるような発言で批判を浴びたのはこの人
A議員が頭を抱えるのは、堀井学前衆院議員(52)=自民党離党、議員辞職=が、東京地検特捜部に「裏金問題」で立件されたことだ。
「総裁選で裏金問題がまた指摘されているなか、本当に頭が痛い」
■「3千万円」ラインを下回る立件
特捜部は8月29日、堀井氏を略式起訴した。自民党内に衝撃を与えたのは、堀井氏が公職選挙法違反だけでなく、政治資金規正法違反の罪でも立件されたことだ。
堀井氏は7月に特捜部の家宅捜索を受けたが、このときは選挙区の有権者に秘書らを通じて香典などを配ったという公職選挙法違反の容疑だった。だが特捜部は、堀井氏が政治資金パーティー収入を派閥(安倍派)から還流を受け、約1700万円を政治資金収支報告書に記載せず裏金にしていたとして、政治資金規正法違反(虚偽記載)でも略式起訴したのだ。
自民党の政治資金パーティー収入の裏金問題で、これまで特捜部が立件した国会議員は安倍派の3人だけだった。起訴されたのは、不記載額が5154万円の大野泰正参院議員と、4826万円の池田佳隆衆院議員の2人で、公判に進む。4355万円の谷川弥一前衆院議員は罰金100万円などの略式命令が確定した。このほか二階派の二階俊博元幹事長は不記載額が3526万円だったが、議員本人の関与は薄いとして会計責任者が起訴された。
一方で、不記載額が2954万円の三ツ林裕巳衆院議員、2728万円の萩生田光一前政調会長は立件されなかった。このため、「3千万円」が立件のボーダーラインだとみられていた。
堀井氏の場合、2018年から21年までに裏金化していたのは2196万円。そのうち時効にかかる18年分を除いた約1700万円分が立件された。これまでの「3千万円」ラインを大きく下回る。
■さらなる“高額”裏金議員にも立件の可能性
「捜査の結果、堀井氏は、キックバックされた裏金を、ばらまいた香典などに充当していたと認めた。違法な目的で裏金を使っていたため、より悪質性が高いとの判断だ」(捜査関係者)
元東京地検特捜部検事の郷原信郎弁護士は、 「堀井氏が裏金から個人として香典を出したというなら、裏金は個人の収入だ。その時点では政治団体や政党支部には入金していないカネになる。検察は国税当局に課税通報して堀井氏に税金を支払わせるべきではないか」 とも指摘する。
堀井氏の地元後援者は、 「堀井氏の事務所は、本人が参列しなくとも、葬儀で香典を出すのが当たり前になっていた。堀井氏自身が秘書らに情報を集めさせ、香典の金額などを指示していた。それを裏金が原資になっているなら立件されて当然でしょう。香典を一方的に渡された有権者も特捜部に事情を聴かれて、とんでもない迷惑だと怒っています」 と話す。
だが、堀井氏が立件されたとなると、さらに高額の裏金を作っていた議員たちも、使途を調べて、立件を検討すべきではないのかという話になってくる。裏金問題はまだ終わっていない、ということだ。
■三者三様の裏金問題対処法
総裁選では、すでに立候補表明した小林鷹之前経済安保相、石破茂元幹事長、河野太郎デジタル相が、記者会見でそれぞれ裏金議員への対応を説明している。
小林氏は、裏金問題への対応を問われて、 「検察が調べる中で、不起訴という処分になっている。検察のような権力、権限を持たない自民党が調査をするのは限界がある」 と裏金問題を「終結」させる考えを示し、批判を受けた。
これに対し、石破氏は裏金議員の選挙での党公認について、 「国民の審判を受けるにふさわしい候補者か、党として責任を持つ」 と述べ、次の選挙で裏金議員を「非公認」にする可能性を示唆した。
河野氏は、 「不記載の金額の返還で、けじめとして前へ進みたい」 と「裏金の返還」にまで言及している。
■安倍派との関係が深い小泉、高市両氏
これについて、安倍派の裏金議員の一人、B議員は、憤懣やるかたない表情でこう語る。
「安倍派は最大派閥だったが、裏金事件で大きなダメージを負った。検察の判断が出て、逮捕される議員もいた。だが、今回の総裁選ではみそぎや反省の意味もあり、安倍派から候補者は出ていません。裏金については、政治資金収支報告書を訂正して決着がついている。安倍派5人衆ら、責任ある立場の議員は離党までしている。なぜ総裁選で裏金問題を蒸し返すのか。そういう候補者には、投票したくない」
また、小林氏を応援し、記者会見でも同席した安倍派のC議員は、 「裏金問題はもう終結という発言で、ここまで批判されるとは、きついなぁ」 と漏らす。
一方、これから立候補表明を予定する小泉氏や高市早苗経済安保相は、安倍派との関係が深い。
小泉氏は父親の小泉純一郎元首相が清和政策研究会(現安倍派)に所属し、一時期、会長も務めた。
小泉氏を応援する冒頭のA議員によると、小泉氏の応援団には「すでに安倍派の裏金議員が何人も入っている」という。
「安倍派5人衆の一人、萩生田氏も小泉氏支援になると陣営では思っている。応援団の裏金議員を切り捨てるようなことはしてほしくない。しかし、石破氏や河野氏の“裏金議員斬り”表明を見ていると、ある程度、同調するしかないのか。人気がある小泉氏に抱き着いて、推薦人として名前を出して、選挙に勝ちたいという裏金議員もいるでしょう。表に出る推薦人には裏金議員は入れない方向なので、反発が出るかもしれません」(A議員)
そして、A議員によると、小泉氏の意向として、 「政治とカネの問題に、ケジメをつけたいことは明確にします。4月に裏金議員に対する自民党の処分は決定しているので、裏金議員個人ではなく、改正された政治資金規正法の再度の見直し、自民党としての在り方などについて組織としての対応を語る予定です」 と言いつつ、こう危惧する。
「裏金議員個人の追及はしないとなれば、生ぬるいと炎上するかもしれない。堀井氏が立件されたばかりですから」
■「総裁選は裏金事件を争点にすべき」
高市氏は、今は無派閥だが、かつては現安倍派の町村派に名を連ねていた。前回の21年の総裁選に出馬した際は、安倍元首相の「高市推し」で、安倍派から多くの推薦人を確保。全体では3位、国会議員票だけ見ると2位に食い込んだ。
高市氏に1票を投じるというB議員は、こう話す。
「保守層から人気がある高市氏は、当然、今回の推薦人も安倍派がかなりの数を占め、ゆえに裏金議員も含まれます。当然、記者会見では裏金議員のことを聞かれるでしょうから、どう話すかは高市氏に任せるしかない」
堀井氏を刑事告発していた上脇博之神戸学院大学教授は、こう話す。
「自民党の処分が4月にあって、今になって堀井氏が特捜部に立件された。自民党の調査がまったくなってない証明でしょう。それを、『検察のような権限がないから自民党で調査するのは無理』なんていう総裁選の立候補者がいることにあきれるばかりです。自民党は政権政党なので、責任をもって国民が納得するまで調査すべき。総裁選でも裏金事件、政治とカネを争点にすべきです」
再浮上した「裏金問題」への対応が、総裁選の行方を左右しそうだ。
(AERA dot.編集部・今西憲之)
今西憲之
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