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8月24日、神奈川県藤沢市で第21回「全国おやじサミット」が開催され、約250人が参加。

おやじの会は父親主導のボランティア組織で、全国に4000以上ある。

パネルディスカッションでは、おやじの会の必要性や未来像について6人のパネリストが議論。

男性にとって地域に入るきっかけや居場所としての役割などが話題になった。

おやじの会は子どものために活動する団体で、飲み会や交流を通じて地域コミュニティーを形成する場でもある。

(要約)

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第21回「全国おやじサミット」のメインイベントはパネルディスカッション。6人のパネリストが議論した=神奈川県藤沢市、米倉昭仁撮影 

 

「おやじの会」をご存じだろうか。父親を中心に学校や地域で活動する完全ボランティアの組織で、PTAの傘下にあるものもあれば、地域の人が誰でも参加できるものもあり、全国に4000以上あるといわれる。8月24日、第21回「全国おやじサミット」が神奈川県藤沢市の市民会館で開催され、全国48団体、約250人が参加した。 

 

【写真】「おやじの会」にスペシャルゲストとして参加した人気タレントはこちら 

 

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■毎朝100人とじゃんけん 

 

「みなさん、幸せそうな顔をしていますね」と、司会者が語りかけると、登壇者が次々にエピソードを披露する。 

 

「きも試し大会の準備をしていると、『今日は楽しみにしているから』と、子どもたちから声をかけられる。それだけで充実感というか、やりがいを感じる」 

 

 そう話したのは、兵庫県西脇市の「西脇小学校おやじの会」事務局長の木下和也さん(46)だ。 

 

「じゃんけんおじさん」の愛称で子どもたちから慕われる藤沢市の「鵠沼(くげぬま)おやじパトロール隊」の福島和彦さん(45)は、交差点での見守り活動について語った。 

 

「子どもがのべ1000人くらい渡る交差点なんですが、あるときからぼくとのじゃんけんが始まって、毎朝100人くらいの子どもたちとじゃんけんをしている。じゃんけんをするためにものすごくいい顔で走ってくる子どもたちを目にすると、とても満たされる感じがします」 

 

■つるの剛士「ビーサンでよかったんだ」 

 

 藤沢市在住でスペシャルゲストとして参加したタレントのつるの剛士さん(49)は、「今日はすごくカタい会かなと思ってジャケットを着てきたんですけど、『なんだ、ビーサンでよかったんだ』と思って」と笑わせ、「肩ひじを張らずに参加できるのが、すごくいい」と語った。 

 

 楽しそうに語る登壇者たちだが、実はこれ、「全国おやじサミット」のパネルディスカッションの一コマだ。6人のパネリストが「おやじの会は本当に必要? あるべき未来像とは!?」をテーマに議論している。 

 

 おやじの会とは、PTAと同様、「子どものため」を目的に学校を拠点に活動する団体だ。主な活動は、運動会などの学校行事の手伝いや、水鉄砲大会や焼きいもづくりなどのイベントの企画や開催など。地域パトロールがメインの会もある。 

 

 

■「できるときに、できることを」がモットー 

 

 PTAは主に在校生の保護者で構成されるが、おやじの会では子どもが卒業した後も活動を続ける人が少なくない。完全なボランティア制で、「できるときに、できることを」がモットー。「おやじの会」の名がついてはいるが、メンバーには女性もいる。 

 

 ディスカッションで、おやじの会には別の、「裏の目的」もあると話したのは、東京都町田市立町田第一小学校「お父さんネットワーク」の北村直己さん(46)。それは「子どもをきっかけに地域に入る」ことだ。 

 

「ぼくらの世代の定年は65歳、70歳で、それまで働かなければならない。でも、自治会長から『その年になってからこられても困るんだよ』って言われます。もちろん冗談ですが、実際、65歳、70歳になって地域に入ろうと思ってもなかなか難しい」(北村さん) 

 

 母親であれば、子どもが通う幼稚園や学校でママ友をつくり、その広がりで地域との縁ができやすい。しかし、父親は仕事中心になりがちで、地域コミュニティーとの接点はできづらい。 

 

「男って格好をつけたがるじゃないですか。『自分からは地域の輪の中に入らないぞ』みたいな」(同) 

 

 そういう心理を抱える男性にとっても、おやじの会が地域に入る「きっかけになればいい」という。 

 

■じいちゃんになっても遊べる仲間を 

 

 もう一つ、北村さんが大切に思っているのが、おやじの会の「飲みニケーション」だ。 

 

「飲みに行ったとき、たとえば『実はうちの子は不登校なんだ』と話をする。問題の解決には結びつかないけれど、『話をしてすっきりした』ということは結構ある。自分も『心の平穏』を保つために、おやじの会に参加しているところはあります」(同) 

 

 じゃんけんおじさんこと、福島さんも、男性の居場所としてのおやじの会に注目している。 

 

「65歳、70歳まで仕事をして、地域に帰ってきましたが、友だちはいません。じゃあ、その後の人生どうするの、ということです」(福島さん) 

 

 福島さんは、おやじの会の代表をしていたとき、「子どものためにおやじの会に入りませんか」とは、あまり言わなかった。その代わり、「定年後の飲み友だちが欲しくないですか」「じいちゃんになっても遊べる仲間をつくりませんか」と声をかけた。 

 

「そういう勧誘の仕方は、たぶん、おやじの会じゃないとできない。ぼくはおやじの会は本当に必要だと思っています」(同) 

 

 

■お父さんたちが一番楽しんでいる 

 

 司会を務めた藤沢市の「第一中学校おやじネットワーク」代表の沼上弦一郎さん(50)は、「おやじの会って『本当に必要なの』は、実はいろいろなところで耳にする永遠のテーマなんです」と言う。 

 

「お母さん方からは、ちょっとやっかみというか、『おやじたちはイベントや飲み会をやって、楽しんでいるだけじゃないの』っていう話も伝わってくる。実際、学校で活動していると、子どもたちから『お父さんたちが一番楽しんでいるよね』って、よく言われる。でも、それはとても大切なことだと思います」(沼上さん) 

 

■文科省がバックアップ 

 

 第1回「全国おやじサミット」は2003年、香川県高松市で開催された。きっかけは、「他の地域のおやじの会がどんなことをやっているかを知りたかった」と、「さぬきおやじ連合」代表の早谷川悟さん(63)は振り返る。 

 

 その少し前、地元の小学校でPTA会長をしていたとき、運動会など学校行事を手伝ってくれる父親たちの姿が印象に残った。そんな父親たちの居場所として「おやじの会」を立ち上げた。 

 

 すると、他の地域でどんな活動が行われているか、気になった。「全国おやじサミット」を開催して、ネットワークをつくり、情報を集めることを思いついた。 

 

「文部科学省に申し出たら、『ぜひやってください』と、男女共同参画の枠で250万円の予算をつけてくれた。びっくりしました」(早谷川さん) 

 

■サミットは懇親会が本番 

 

 おやじの会にはPTAのような、日本PTA全国協議会を頂点とする上意下達の組織はないので、インターネットで参加者を募集した。 

 

「初めてのことだし、交通費や宿泊費は『手弁当』での参加なので、難しいかな、と思った。ところが全国から約150人も集まってくれました」(同) 

 

 今回で21回目となる全国おやじサミットは無事に閉会した。早谷川さんはほっとした表情で、こう語った。 

 

「次はどうなるかいつも心配しているので、よかったです。さあ、サミットは閉会後の懇親会が本番です。おやじたちが本音をしゃべります。飲んだらどんどん。ははは」 

 

(AERA dot.編集部・米倉昭仁) 

 

米倉昭仁 

 

 

 
 

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