( 209093 )  2024/09/06 01:48:12  
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(写真:TM Photo album/PIXTA) 

 

ビジネスチャンス、そして暮らしやすさを求めて、沖縄に進出する人は少なくありません。一方で、撤退する人も同様に多いと言われます。「沖縄は日本語の通じる外国と考えたほうがうまくいく」と話すのが、琉球王国を建国した尚巴志王の末裔であり、沖縄進出コンサルタントとして、「本土企業」のお手伝いをしている伊波貢さん。沖縄独自のビジネス慣習「沖縄ルール」について、伊波さんの著書『沖縄ルール 知っておくとビジネスも人間関係もうまくいく!』から紹介します。 

 

【画像でわかる】沖縄に進出した人は大きく4つのパターンに分かれる 

 

■「本土のやり方」で壁にぶつかる人たち 

 

 沖縄へ移住・転勤してくる方には、沖縄社会にしっかりなじむ人もいれば、「だから沖縄の人はダメだ」とプンプン怒って短期間で帰る人もいます。その違いは何でしょうか。 

 

 「沖縄ルール」を理解せず、従来のやり方のまま、沖縄で仕事や生活しているためではないか、と私は考えています。もちろん、日本国内のローカルエリアでも同様の現象が起きていると思いますが、その振れ幅が沖縄の場合、大きいのです。 

 

 清国の影響を受けつつ琉球王国として450年も栄え、その後明治初期に日本に編入され、さらに戦後の米軍統治下を経て、1972年に日本に復帰したという特異な歴史が沖縄にはあります。異なる歴史を歩み、さまざまな国の影響を受けてきた沖縄の人々に、言葉に表現し難い違和感を抱えながら接するのは、ナイチャー(県外の日本人すべてを指すことが多い。内地の人)にとっても、ウチナーンチュ(沖縄の人)にとってもお互いにストレスが溜まることではないでしょうか。 

 

 ナイチャーとウチナーンチュの価値観や県民性、文化の違いをお互いに理解しておけば、相互にわかり合えるはずですし、トラブルが起きても心構えができているはずです。 

 

 私自身、大学卒業後に東京の証券会社で働き、沖縄に戻ってきたときはかなりのカルチャーショックを受けました。仕事の質や進め方、対人関係など1つひとつが違和感でストレスを感じる日々でした。しかし、自分の価値観を沖縄スタイルに変えるしかない、と覚悟を決めてからは数年でそのストレスから解放され、肩の力が抜けてラクに生きられるようになりました。沖縄の人間ですらそうなので、内地のみなさんの心労は想像すらできません。 

 

 

■沖縄に進出した後は4つのタイプに分かれる 

 

 沖縄に移住すると、日々さまざまなことを疑問に感じると思います。一般的に沖縄の人は内地の人に対して、「細かく指摘してくる」「はっきりものを言ってくる」「面倒くさい人が多い」「無駄に正義感が強い」と感じることが多いのではないでしょうか。 

 

 一方で、沖縄に定着している方々のほとんどが、逆にこうした内地の人に対するネガティブなイメージを払拭して、「意外に良いナイチャーじゃないか」と受け入れてもらっているのではないでしょうか。最近では、沖縄の人以上にゆるくて仕事の仕方もアバウトな内地の人も増えていて、もう少ししっかりしたほうが良いのではないかと思われる方さえいますが。 

 

 本土企業の方々が沖縄に進出して、まず戸惑うのはウチナーンチュとの付き合い方でしょう。同じ日本人かと思えば微妙に違い、意外にコミュニケーションを取るのが難しいようです。それでも、地元になじむ人がいる一方で、諦めて短期間で本土に帰っていく人もいます。 

 

 例えばビジネスの場面で、沖縄スタイルを許容できるか、東京スタイルを信奉しているか。沖縄の文化が好きか、特にそうでもないかで4象限にタイプを分けてみましょう。4タイプの特徴は、おおむね次のとおりです。 

 

■4つのタイプに分類 

 

 ①おせっかいナイチャー 

ここは、結構やっかいなタイプです。沖縄のことが大好きだが、同時に東京スタイルが好きなので、とにかく仕事のやり方などを変えたがります。「東京ではこうだよ」「なんで時間守らないの」「沖縄の人は○○がダメだよ」という調子です。いつも沖縄の人に対して憤慨しているのです。そういう人に私は「沖縄県民147万人を変えようとするより、あなたひとりが変わったほうがラクですよ」と、アドバイスするのですが、当然、沖縄の人の輪になじめず、短期間で不満が爆発して帰っていきます。せっかく沖縄に来てもらったのだから、常にストレスを抱えながら過ごしてほしくないのですが。 

 

 

 ②じょ~と~ナイチャー 

沖縄が大好きなうえに、沖縄スタイルが大好きです。次第に時間を守らなくなり、細かなことは気にしない人になります。かりゆしウェア、泡盛、ポーク、ひーじゃー(ヤギ)に加え、栄町が大好き。5年ぐらいで本土の人から「ウチナーンチュですか?」と聞かれるようになります。願わくば、みんなこの素敵な「シマナイチャー」になってほしいところです。 

 

 ③そのまんまナイチャー 

沖縄が特に好きでもなく、沖縄にあまり固執しない。でも、沖縄の気候や食文化を適当に受け入れるタイプです。たまたま沖縄という温暖で地政学的に有利な土地に住んでいるだけ。肩の力が抜けていて、ごく自然体で沖縄に住んでいます。かりゆしウェアは着ず、ポークも好んでは食べません。付き合うには一番気楽な方々です。 

 

 ④いやいやナイチャー 

いわゆる「ウチナームーク(奥さんが沖縄の人)」や仕事を求めて仕方なく沖縄に来ているタイプです。沖縄に興味があるわけではなく、基本的に東京スタイルが好きなのに、事情があってやむなく沖縄に住まざるを得ない人たちです。このタイプも、我慢しながら生きており、苦行の様相です。 

 

 いかがでしょうか。自分が沖縄に進出・移住するとき、この4タイプのどれに当てはまるのか考えてみましょう。すべての本土の方々にとって沖縄が、住みよい場所であってほしいと願っています。 

 

■沖縄の人は「シメにステーキ」を食べるは本当か 

 

 このように「内地の人は」「沖縄の人は」という話をすると、差別的に感じたり、皆が皆そうではないと反論したりする人もいると思います。もちろん、すべて当てはまるものではないでしょう。沖縄においても地域によって感覚は違うと思いますし、私の感覚とは違うという方もいるでしょう。 

 

 沖縄の「シメにステーキ」文化が民放番組で報じられたとき、その文化がない地域の沖縄の人たちが、テレビ番組が誇張しているだけと批判することもありました。しかし、ステーキ店サイドから見ると実際に以前から飲み会のあと、深夜からステーキを食べるお客様が多数いて、なかにはシメのステーキ専門店さえあるほどなのです。 

 

 

 つまり、沖縄に事実としてある文化なのです。「沖縄ルール」の内容が正しいか、誤っているかを論じることはナンセンスかもしれません。 

 

 なぜなら、その成り立ちを考えれば、ビジネスを行ううえで、内地の人と沖縄の人は違う価値観を持っているという前提に立って考えるほうが自然ですし、なにかにつけ成功確率が高まると思われるからです。 

 

 実際に、私がアドバイスしてきた内地の方々の沖縄定着率が高いことがそれを証明しています。内地の人と沖縄の人の価値観はさほど変わらないと考えるのには、かなり無理がありますし、その違いを理解しないままビジネスをすると、失敗とまではいかなくても、大きな機会損失を被る可能性が高くなります。 

 

 「沖縄ルール」があることを理解したうえで、沖縄の人と接していただけたら、沖縄の人にとっても内地の人に対するイメージが変わってくると思います。同じルールで向き合うことができれば、よりコミュニケーションもスムーズとなり、双方ともに精神衛生上も良くなるはずです。沖縄になじめず早々に帰っていく人が少しでも減っていきますように。移住・転勤する皆さんが、快適で楽しい沖縄ライフを満喫してくださることを願っています。 

 

伊波 貢 :沖縄進出コンサルタント 

 

 

 
 

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