( 209503 )  2024/09/07 15:45:16  
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インタビューに応じる鳩山由紀夫元首相=東京都千代田区永田町(酒巻俊介撮影) 

 

鳩山由紀夫元首相が率いた民主党政権が平成21年9月16日に発足して間もなく15年を迎える。高速道路無料化や月額2万6000円の子ども手当など、マニフェスト(政権公約)は耳目を集めたが、完全には実現できなかった。「最低でも県外」を掲げた米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設も迷走し、日米関係には亀裂が生じた。政権交代の立役者となった鳩山氏は産経新聞のインタビューに応じ、マニフェスト選挙の枠組み自体について「きちんと示そうとしたことには価値がある」と振り返った。 

 

■頓挫というなら頓挫でいいが… 

 

──マニフェスト選挙で民主党政権が実現した 

 

「皆さんもそうかもしれないが、批判もあった。ただ、どういう政策を、どのくらいの財源で、いつまでにやるか、きちんと示そうとしたことには価値があったと思う」 

 

──「マニフェスト政治」は頓挫したが、枠組みは踏襲すべきだと 

 

「頓挫というなら頓挫でいいが…何も見せないよりは、きちんと見せることが大事だ。なぜうまくいかなかったのかを総括し、『次はこういうマニフェストを考えている』と見せることは重要だと思う」 

 

「マニフェストは英国をモデルにしたが、英国も厳密に、いつまでに実現し、財源はどれくらいかとまでは言っていない。われわれは精密にやった分、できなかったことを責められたが、うまく立ち振る舞うことも必要かもしれない」 

 

──無駄の削減などで16兆円の財源を捻出するとしたが、できなかった 

 

「反省すべきはすべきだ。ただ、野党時代は与党にならないと分からないお金の流れがある。今度はもっと正確な数字を並べることができると思う。羮(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹く、だからもうやらないという話ではない」 

 

「自民党も児童手当の所得制限撤廃など民主党の政策に近づいている。けしからんというのではなく、われわれの主張は間違っていなかった」 

 

■税財源の確保も言うべきだ 

 

──政策を実現するための財源は必要だ 

 

 

「消費税を減らす方向ばかりに話が行っているが、それで本当に国が成り立っていくか。必要な財源は税で賄うことを、勇気を持って言うべきではないか。『無駄を省く』みたいに抽象的なことだけを言っていれば、国民は納得しない」 

 

「産経さんと違うが、5年間で防衛費約43兆円は本当に必要なのか。全てとは言わないが教育などに回すべきではないか。高額所得者ほど税額が低くなっている現状は修正し、厳しい暮らしをしている人に貴重な税金を使うべきだろう」 

 

──首相になって驚いたことは 

 

「みんな初めての経験だが、官僚任せから政治主導をうたい、(各省事務次官が集い、閣議案件の事前調整を担った)『事務次官会議』を廃止した。彼らとしては政策を全て決めていた会議が無くなり面白くない。われわれも粋がって、これからは閣僚が決めるんだと言って官僚を脇に置こうとしたが、官僚を動かさないとこの国は動かない。こっちがやっていれば、きちんと動いてくれるものだと思っていたが、彼らは面従腹背で決してそうではなかった。甘かったかもしれない。『官から民へ』を言い過ぎた。もっと彼らの能力を使うべきだった」 

 

──官僚も政権のチームに加えるべきだったと 

 

「政界、財界、官界、メディア、米国を一度に敵に回して、戦おうとしてしまった。全部敵に回し、みんなに嫌われた。次があるとすれば、その辺をうまくやらないと、また同じ結論になってしまう。メディアか官僚どちらかを味方にしないと戦えない気がする」(聞き手 奥原慎平、水内茂幸) 

 

 

 
 

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