( 209873 ) 2024/09/08 16:58:00 0 00 40代初婚で4人の父になった男性。彼が突き進んだ人生とは?(イラスト:堀江篤史)
東京郊外にある寿司店で、建築関連業界で働いている田村敏和さん(仮名、48歳)の話を聞いている。4年前にマッチングアプリで知り合って結婚した8歳年下の女性との間に4人の子どもがいるというのだ。
1年に1人ペース、ではない。実子は1歳半の息子のみ。結婚したときには相手の雅美さん(仮名)には高校生2人と小学生1人の連れ子がいた。敏和さんは44歳での初婚である。どのような経緯と心境で結婚と同時に「3児のパパ」になったのだろうか。
■大家族への憧れ
「僕が気に入ったのは奥さん(雅美さん)なので、彼女に子どもがいることは気になりませんでした。でも、『子どもたちと今度会わせて』と言ったら、彼女の表情が変わったことは覚えています。今までは子どもがいることが足枷になってちゃんとした恋愛はできなかったと話してくれました」
のんびりした口調で話す敏和さんは身長185センチで、歌舞伎役者のような色白のハンサムである。高校時代までは全国大会常連校でスポーツ選手として活躍していた。
「僕は一人っ子で、大家族への憧れは昔からありました。自分の近くに人の輪ができていれば幸せなんだと気づいたのは最近ですけど」
母親は昔で言うところの「お妾さん」で、母子2人で過ごす生活が寂しかったと明かす敏和さん。いわゆる遊び人でもない。20代で結婚をして賑やかな家庭を築いていてもおかしくない人物だが、大学在学中に人生を変える出来事が起きた。「本宅」で家族と過ごしながらも「妾宅」の生活費と学費は出してくれていた父親が亡くなり、母親も癌を患ってしまったのだ。
「父の家族と遺産を争うことはしたくありませんでした。僕は大学を中退。地元のホームセンターで働き始めました」
その頃、敏和さんは中学校時代の同級生と付き合っていた。美容部員の久美子さん(仮名)だ。人見知りだけれど2人のときはよく話す女性で、いずれは結婚するつもりだったと敏和さんは振り返る。しかし、勤務先のホームセンターが倒産するなどの不運が重なり、結婚話が出ないまま14年の歳月が流れた。
「僕の甲斐性がなかった、ということです。このままでは結婚には至らないよね、と彼女と話し合って別れたのが33歳のときでした。喧嘩したわけではないので、今でもたまに連絡を取り合っています。もちろん、友だちとして、です」
■マッチングアプリの検索条件は「子どもが欲しい人」
久美子さんと別れた後も、「彼女は絶え間なくいた」と明かす敏和さん。10代の頃のようにモテモテだったわけではない。寂しがりであることを自覚している敏和さんは、マッチングアプリなどで自分から声をかけ、ちゃんと向き合ってくれる女性を好きになる傾向があるようだ。その一人が雅美さんだった。
「僕の検索条件は東京在住の年下で、子どもが欲しい人、ぐらいです。奥さんとは会ったときから『結婚するならこの人かもなー』と感じました。僕はおとなしい女性が好きなのですが、奥さんはちょっと違って、愛嬌があって明るいタイプ。初対面でも話していてずっと笑っていました」
東北出身の雅美さんは高校卒業後に上京。すぐに結婚して子どもにも恵まれたが、夫のDVに耐える日々が続いた。
「ストレスで髪の毛が抜けたりしていたそうです。3人目の子が生まれた後、たまらずに逃げ出したと聞いています」
我がことのように顔をゆがめる敏和さん。高校を卒業するまでハードな体育会の世界にいたにもかかわらず、人を殴ったことは幼い頃の一度しかないと語る。平和主義の男性である。
■子どもとの関係性
最初は子どもがいることを伏せていたという雅美さん。敏和さんの前では心を開き、明るく振る舞うだけでなく真剣な表情も見せるようになった。自然な流れで1年後には結婚。現在に至る。
「実は、奥さんは1回流産をしているんです。そのときは『あなたに赤ちゃんを見せてあげたかった』とずっと泣いていました」
それだけに1歳半になる息子のことは夫婦で思い切り可愛がっている。「今まで生きてきた中で一番幸せ」とスマートフォンの動画を見せてくれる敏和さん。
「頼まれてもいないのに子どもの動画を見せるようになるなんて、自分でもビックリしています(笑)。せめてこの子が20歳になるまでは生きていたいと強く思いますね。成長をずっと見ていたいんです」
気になるのは3人の連れ子との関係性だが、子ども好きの敏和さんは難なくクリアしている。
「20歳の長女は専門学校を出てからフリーターをしていますが、最近は僕の仕事を手伝ってくれています。何でも気兼ねなく話してくれるので信頼関係は築けているはずです。19歳の長男は優しくていい子ですよ~。奨学金をもらって大学に通っています。男同士でスーパー銭湯に行ったりする仲です。ちょっと難しい時期なのは14歳の次女。奥さんと付き合い始めた当初は僕とも仲良くしていましたが、今は避けられていますね。『(敏和さんを)嫌いじゃない。思春期だから仕方がない』と自分で言っています(笑)」
敏和さんは建築関連の国家資格を取得し、相方と2人で合同会社を設立。某ホテルチェーンの仕事を請け負う形で安定収入を確保している。なお、かつては保育園の給食室で働いていた雅美さんは、現在は子育てに専念中だ。
■寂しがりの彼にとってのベストパートナー
「僕の年収は500万円ぐらいですが、節約志向の奥さんにすべて渡しているので安心です。僕は車とか洋服とかに頓着しないほうですし、旅行に行きたいとも思いません。小遣い制で貯金ができるのはむしろ助かります。教育費がかかるのは家族だから当たり前です」
外食好きではないけれど「いいものを食べたい」という気持ちがある敏和さん。料理上手の雅美さんには胃袋をつかまれていることを隠さない。
「何を食べても美味しいのに『もう少し濃い味のほうがよかった?』とかいろいろ聞いてくれるんです。何よりも、仕事から家に帰ってきたときに一人じゃありません。その日にあった嫌なこと、つらかったこと、何でもないことをすべて話せます。夫婦喧嘩はしません。奥さんに『子どもの面倒をもっと見てよ』とか言われたら、すぐに謝っていますから(笑)」
週末は地域のスポーツコミュニティでボランティアコーチもしているという敏和さん。常に人の輪の中にいたいと願う彼にとっては、連れ子が3人もいるしっかり者の雅美さんがベストパートナーなのかもしれない。
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大宮 冬洋 :ライター
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