( 210108 )  2024/09/09 15:36:39  
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インタビューに応じる鳩山由紀夫元首相=東京都千代田区永田町(酒巻俊介撮影) 

 

15年前の平成21年に政権交代を実現した旧民主党の鳩山由紀夫元首相を巡っては、今年5月、中国の呉江浩駐日大使が、日本が台湾に関し「中国の分裂」に加担すれば「日本の民衆が火の中に連れ込まれることになる」と発言したことに「お話に基本的に同意する」と述べたことが物議を醸した。鳩山氏に対中観、そして皇室の在り方について尋ねた。 

 

■中国は他国を軍事力で侵略しない 

 

──覇権主義的な中国にどう対峙すべきか 

 

「日本は米国より中国の方が貿易額は多い。そもそも、中国の習近平国家主席は6月下旬、『平和共存5原則』を掲げている。領土保全、主権の相互不干渉、相互不侵犯、内政不干渉、平等互恵、平和共存を中国は守ってきた。新しい時代でも守っていくということを、少なくとも表向きは、きちんと言っている」 

 

──いや、中国は米軍撤退など近隣に力の空白が生じれば、すかさず侵略してきた 

 

「中国はかつて日本が行ったような他国を軍事力で侵略していくことはやらないと表向きは宣言している。もし破れば『この原則をどうしたんだ』と言えばいい。(8月26日の)中国軍機による日本の領空侵犯もけしからんと思う。ただ(パイロットの)個人プレーみたいな所があったのかもしれない。少なくとも原則の順守を互いに確認していくべきだろう。例えば尖閣諸島(沖縄県石垣市)の問題も中国が領海侵入するなら『けしからん』と言うべきだ。基本的には棚上げの状況をお互いに認めるべきだろう」 

 

「日本は二度と近代兵器のもとで戦争してはいけない。安全保障にお金は要らないといっているわけではない。互いに緊張を下げていくべきだ。日本も下げる、だから中国も日本に向けたミサイルを減らすよう交渉すべきだ。使い古された(巡航ミサイル)トマホークを買って米国の気を引くよりも、国民の暮らしを守るために貴重な税金を使うべきでないか。そのへんも立憲民主党ははっきりしない。米国依存だけではなく、周辺国と争いが起きない環境作りを水面下も含め議論していくべきだ。米中は水面下でも結構やっている」 

 

──民主党政権での水面下の対中交渉はどうだったのか 

 

 

「鳩山政権は8カ月で、水面下でやれる状況ではなかった。ただ、韓国、中国とは割といい雰囲気だったのではないか」 

 

──中国の台湾への軍事的圧力をみると、われわれの価値観と異なると分かる 

 

「日本は台湾に関し、1972年の日中国交正常化で中国の一部との立場を尊重するとした。その部分は曲げずに付き合うべきだ。心配なのが立民の野田佳彦元首相や自民党の石破茂元幹事長らが訪台し、頼清徳総統と会談したこと。訪台自体を禁止する必要はないが、いざというとき台湾を応援するなら非常に危うい。頼氏は就任演説でも台湾と中国は対等な関係だと主張しており、中国政府とすれば緊張するわけだ。本当に台湾が独立すれば、中国政府の革新的利益にもとる話になる」 

 

■「私は真の保守」「敵の侵略を精神的になくす」 

 

──台湾は現状維持すべき 

 

「やらせてはいけないが、こちらが挑発して中国政府が武力的な攻撃をした場合、日本政府が米国と協力するなら、この日本は(中国からの武力攻撃で)無くなる。そういう状況だけは絶対させない外交努力が必要だ」 

 

──安定的な皇位継承の在り方について、与野党が議論している 

 

「天皇、皇后両陛下の長女、敬宮(としのみや)愛子さまはダメなのか。愛子さま、愛くるしいじゃないですか。(歴史上初めてとなる女帝)推古天皇もいるじゃない。今は、LGBTQの時代というか。(皇位継承権は男系男子に)こだわらなくてもいい気がするが」 

 

──この国の自立は自分たちで作らないといけない 

 

「そういう意味で私も真の保守。ただ、米国がいなくなった状況を見据えて、強力な軍隊を作るのはやり過ぎではないか。周辺諸国に信頼されるような日本を作り上げていくことで、敵からの侵略を物理的ではなく、精神的になくすということができればいい」(聞き手 奥原慎平、水内茂幸) 

 

 

 
 

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