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中身のない“ポエマー”と揶揄される小泉進次郎元環境相が、自民党総裁選で勝利する公算が高まっており、その「進次郎政権」が誕生した場合の予想について解説されている。

進次郎氏は改革を掲げ、父親の小泉純一郎元首相を想起させる戦略を展開しているが、一部では批判もある。

内外からのサポートを背景に、石破茂元幹事長との総裁選の行方、そして将来的な進次郎政権の展望が検証されている。

(要約)

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 高い人気を誇る一方で、中身のない“ポエマー”とも揶揄される小泉進次郎元環境相。毀誉褒貶の激しい「小泉ジュニア」が、いよいよ日本の最高権力者に就く公算が高まっている。9月12日に告示の自民党総裁選(同27日投開票)での勝利が確実視され、官僚たちが進次郎シフトで動き始めたのだ。では「進次郎政権」が誕生すれば、どのようなことが予想されるのか。経済アナリストの佐藤健太氏が解説する。 

 

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「自民党が本当に変わるのか。変えられるのは誰か。それが問われる選挙だ。自民党が真に変わるには、改革を唱えるリーダーではなく、改革を圧倒的に加速できるリーダーを選ぶことだ」。9月6日、小泉氏が開いた出馬会見には100人以上のメディア関係者が詰めかけ、その注目度の高さを見せつけた。 

 

 決して安価ではないだろうPR会社に広報戦略を担わせ、記者会見ではメディアから事前に質問を受け付けるといった用意周到さは本気度を感じさせる。相変わらず言葉の意味はよく分からないが、とにかくすごい自信だ。「改革」というキーワードを多用し、父親の小泉純一郎元首相を想起させることも狙っているのだろう。 

 

 自らの演説原稿だけでなく、記者からの質問に対する内容も事前準備していたようで、ネット上には「えっ、やらせ?」「質疑応答に自信なさすぎ」といった批判的なコメントが相次いだ。 

 

 ただ、“小泉フィーバー”を生んだ純一郎元首相を思い出させる容姿や話し方は高いブランド力を見せつける。翌7日に東京・銀座4丁目交差点で行った街頭演説には多くの聴衆が駆けつけ、9月8日に横浜市で開いた演説会は約7000人が集まった。全面支援する菅義偉前首相も「小泉進次郎さんに日本の舵取りを託したい」と力を込める。 

 

 NHKが9月6日から3日間かけて実施した世論調査によれば、「次の自民党総裁にふさわしい人物」は石破茂元幹事長が1位で28%、進次郎氏は2位の23%だ。3位は高市早苗経済安全保障相の9%、4位は河野太郎デジタル相(6%)、5位は上川陽子外相と小林鷹之前経済安保相が4%で並ぶ。 

 

 これを自民党支持層で見ると1位は石破氏の29%で、2位の小泉氏は27%とポイント差を縮小させている。3位は高市氏(13%)だ。鋭い取材力と毒舌で知られる政治評論家の田崎史郎氏は9月7日のTBS「情報7daysニュースキャスター」で、自民党総裁選の行方を次のように予想した。1回目の投票で党員・党友票(367票)のうち石破氏は120票、進次郎氏は70票、高市氏は70票に流れるというのだ。 

 

 

 今の制度になって最多となる9人が立候補し、推薦人(20人)だけでも180人に達する中、国会議員票(367票)と同じ比重を持つ党員・党友票は勝敗を左右する。日本テレビが党員・党友を対象に独自調査を実施したところ、トップは石破氏の28%で、2位は進次郎氏の18%、3位は高市氏の17%だったという。順位と予想獲得数は田崎氏の分析を裏付けるものだ。 

 

 党員・党友票に限れば、1位が石破氏であることは現時点で間違いないだろう。だが、「人望がない」と言われ続けてきた石破氏は国会議員票で小泉、高市両氏を大きく下回るのは確実だ。その差が大きければ議員票と党員・党友票を合わせた数で石破氏は1位どころか、2位または3位になる可能性がある。 

 

 自民党総裁選は1回目の投票で過半数を獲得した候補者がいない場合、上位2人による決選投票が行われる仕組みだ。決選投票では国会議員票は1人1票で計367票のままだが、党員・党友票は都道府県に各1票で47票。得票の多い候補者が1票を獲得することになる。 

 

 つまり、党員・党友票で有利とされる石破氏は仮に1回目の投票で上位2人に入り、決選投票に進出できたとしても不利な条件での戦いを迫られる。そこに進次郎氏の勝利が確実視される理由がある。進次郎氏は無派閥議員を中心としたグループを束ねる菅前首相から支援を受け、議員票を手堅くまとめる。「石破VS進次郎」の決選投票ならば、若きニューリーダー誕生に向けて大半の国会議員が雪崩を打つ可能性は高い。 

 

 石破氏ではなく、高市氏が決戦投票まで残ることも考えられる。仮に「進次郎VS高市」となれば、現執行部の麻生太郎副総裁らは高市氏サイドに乗って“進次郎阻止”に動くだろう。ただ、党重鎮や派閥領袖級による締め付けを嫌悪する議員は「裏金問題」以降に増加しており、かえって進次郎氏は有利になると言える。 

 

 メディアの事情も進次郎氏に追い風となる。テレビ局関係者によれば、多数の候補者が出る今回の総裁選は「討論会で1人あたりの持ち時間を少なくせざるを得ない」という。本来ならば熱い政策論争をかわしてもらいたいところだが、人数が多いためテーマも限定する必要がある。論戦のテーマが限定されれば記者会見の時のように回答案をあらかじめ準備しやすく、公平性を保つために1人あたりの発言時間も少ないのであれば「何を言っているのかわからないが、とにかくすごい自信」を見せつけることはできるだろう。 

 

 

 逆に討論慣れしている石破氏や高市氏らは持ち時間の範囲内で上手に発信できず、消化不良となることも考えられる。短い言葉で無党派層にまで訴求させた父親譲りのワンフレーズポリティクスの効果を進次郎氏が発揮させれば、特にテレビ討論会においては大きくプラスに働くだろう。 

言うまでもなく、政権与党である自民党の総裁選は事実上の首相選びだ。その結果、最終的に「進次郎政権」発足が確実視される。では、進次郎氏はトップに立ったら何をする気なのか。 

 

 9月6日の出馬会見で配布されたペーパーによれば、政治資金透明化のため政策活動費の廃止や毎月100万円が支払われている「調査研究広報滞在費」(旧文通費)の公開と返納、解雇規制の見直し、選択的夫婦別姓の導入、ライドシェアの全面解禁などを掲げる。 

 

 1年以内に「政治改革」「規制改革」「選択肢の拡大」の3つの改革を断行し、その先に次の80年を見据えた中長期的な構造改革に挑戦するスケジュールを描いている。進次郎氏は「長年議論ばかりを続け、答えを出していない課題に決着をつける」といい、首相になればできるだけ早期に衆院を解散し、国民の信を問うと主張する。 

 

 進次郎政権には2つの予想が存在する。1つは「来年夏」で終わる短期政権になるとの見方。もう1つは、5年超の長期政権を築いた父親と同じように国民的人気を背景に同程度の長さは政権を担うはず、というものだ。前者は2025年夏に参院選と東京都議選が予定されており、そこで自民党が敗北すれば責任論が噴出して退陣不可避になるという読みだ。ただ、可能性が高いのは後者と言えるのではないか。 

 

 まず、進次郎首相は解散総選挙で求心力を一気に高め、自民党の圧勝を呼び込むことに全力をあげるはずだ。私は「決着 新時代の扉をあける」と題した9月6日のペーパーの中で、「政治資金問題について国民の審判を仰ぐ。今回の問題の当事者となった議員を選挙で公認するかどうか、厳正に判断。」としている点に注目している。 

 

 進次郎氏は絶対に総裁選の期間中は詳しく語らないと思うが、この「厳正に判断」とは一定の条件下でベテラン議員であっても衆院選の「非公認」とすることが視野に入っていると思うからだ。父親の純一郎氏は首相時代、比例代表候補の73歳定年制を導入し「大勲位」の中曽根康弘元首相らを政界引退に追い込んだ。 

 

 

 進次郎氏が総裁・首相に就き、事前の情勢調査で自民党の数字が思ったよりも悪い場合には、派閥の政治資金パーティーをめぐる裏金問題で処分された議員たちの非公認に踏み切る可能性もあるように映る。もちろん、そのようなことをすれば自民党内は蜂の巣をつついた状態になるだろう。 

 

 だが、純一郎氏が永田町の常識を破って「郵政選挙」を断行したように息子もクレイジーで、セクシーなことをやる可能性がゼロとは言えない。もしも、その荒技をやってのけて勝利をつかめば進次郎氏の求心力はピークを迎えるだろう。しかも「何をするのかわからない」という恐怖が自民党内や官僚たちに広がり、番頭役の菅前首相の調整力も加われば長期政権につながることは十分に考えられる。 

 

 7月の東京都知事選は、元広島県安芸高田市長の石丸伸二氏が注目を浴びた。今後は来年夏の都議選に向けて「政治塾」を開催することも予想できるが、解散総選挙で進次郎首相が圧勝すれば「小泉フィーバー」が起きる可能性は高い。そうなれば、都議選でも参院選でも進次郎首相の前では歯が立たないだろう。「石丸旋風」は、まもなく「小泉旋風」に変わり、立憲民主党や日本維新の会なども党勢を失うことになるはずだ。 

 

 2001年に発足した父親・純一郎氏による小泉政権は、自民党の「延命」につながったとの見方が一般的だ。森喜朗内閣で沈み込んだ世論を純一郎首相の人気で浮揚させ、2009年に下野するまで自民党は政権与党の座を守った。2012年の政権奪還後は安倍晋三元首相が保守層を中心とする強固な岩盤支持層を形成し、史上最長の長期政権を築いている。 

 

 岸田文雄内閣の超低空飛行が続き、政権交代前夜とも一時は言われた永田町。進次郎首相の誕生によって永田町のパワーバランスはいかに変わるのか。そして、「80年先」はどのような未来が私たちを待っているのか。「ポエマー」と揶揄される人物の思い描く日本には期待と不安が交錯している。 

 

 

 
 

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