( 211578 ) 2024/09/14 02:11:49 0 00 上川陽子氏
(ブルームバーグ): 12日告示された自民党総裁選は、推薦人が必要となった1972年以降で最多の9人が立候補する混戦となる。27日の投開票に向け、経済・財政や外交防衛、社会保障、規制改革などの政策課題を巡り、約2週間に及ぶ論戦の火ぶたが切られた。
高市早苗経済安全保障担当相と前任の小林鷹之氏、林芳正官房長官、小泉進次郎元環境相、上川陽子外相、加藤勝信元官房長官、河野太郎デジタル相、石破茂元幹事長、茂木敏充幹事長が立候補した。女性議員は2021年の前回と同数の2人、40代の若手も2人いる。9候補は13日午後、共同記者会見に臨む。
衆参両院議長らを除く党所属の国会議員は告示日時点で367人。党員・党友票も同じ367票に換算して計734票を争うことになる。過半数を得た候補がいなければ、国会議員の367票と地方票47票で上位2人による決選投票を行う。各候補は出馬には国会議員20人の推薦人を確保した。
NHKが6日から3日間行った調査では、次の自民党総裁にふさわしい候補者として石破氏を挙げた人が28%と最も多く、小泉氏が23%で2位だった。高市氏が9%、河野氏が6%で続き、上川、小林両氏が4%。林、茂木両氏は2%、加藤氏は1%だった。
立候補した9人の横顔と主要政策、発言についてまとめた。
石破茂元幹事長
5回目の挑戦となる。野党時代に行われた12年は1回目の投票で党員票の半数以上を確保して首位につけたが、国会議員のみによる決選投票で安倍晋三元首相に逆転された。約7年8カ月続いた安倍政権で当初は幹事長、地方創生担当相として首相を支えた。後半は批判的な立場に転じた。
防衛相や農相も歴任。安全保障政策の論客として知られ、12日の演説会では「国連が機能しない時代にアジアに集団安全保障の仕組みを作るのは喫緊の課題」と述べ、持論である北大西洋条約機構(NATO)のアジア版創設を訴えた。67歳。
鳥取県八頭町で行った出馬会見で、今回の総裁選を「最後の戦い」として党員らに支持を求めた。政治資金の透明性確保に向け、最大限努力すると述べた。社会保障全般の見直しや賃金上昇に取り組むほか、選択的夫婦別姓の導入に前向きな姿勢を示した。防災省の創設を唱えている。
主要政策:
小泉進次郎元環境相
初当選は自民党が野党に転落した09年の衆院選。小泉純一郎元首相の次男で、新人議員時代からその言動はマスコミに取り上げられた。環境相時代には、気候変動問題への取り組みは「セクシー」であるべきだと発言したことや、現役閣僚として初めて育児休暇を取得したことでも話題になった。43歳。
出馬会見では「聖域なき規制改革」「自民党を変える」「昭和の終身雇用モデルは通用しない」など父親をほうふつとさせるような力強い言葉で改革姿勢を訴えた。中堅・若手議員のほか、同じ神奈川県連に所属する菅義偉前首相らの支援を受ける。経験不足を指摘する声もあるが、政権を獲得できれば「足りないところを補ってくれる最高のチームを作る」と話している。
首相に就任した場合、できるだけ早期に衆院を解散し、自らの改革プランについて「国民に信を問いたい」と宣言している。政治改革、規制改革、選択肢拡大の「三つの改革」を1年で断行するとの考えも示した。政策活動費の廃止、解雇規制の見直し、ライドシェアの全面解禁、選択的夫婦別姓の導入などに取り組む考えだ。
主要政策:
高市早苗経済安全保障担当相
英国の故サッチャー元首相を目標とする。松下政経塾出身の63歳。初の挑戦となった前回の総裁選では安倍元首相の支援を受け、議員票では岸田文雄首相に次ぐ2位につけた。当時は高市氏の推薦人だった小林氏が今回出馬することで、保守系議員の支持が分散する可能性がある。「経済成長をあくまでも追い求める」と成長分野などへの「戦略的な財政出動」を唱えている。
8月15日の終戦記念日には毎年、靖国神社への参拝を続けている。30日に刊行した編著書「国力研究 日本列島を、強く豊かに。」(産経新聞出版)では、「わが国自身の防衛力」を不断に強化することが必要不可欠と主張。非核三原則のうち、「持ち込ませず」は米国の拡大抑止を期待するのなら現実的ではないとの考えを示した。
高市氏は9日の出馬会見で、総合的な国力を強化するために「何よりも経済成長は必須」だとし、財政出動の重要性を前面に押し出した。大胆な「危機管理投資」と「成長投資」で、「安全・安心」の確保と「強い経済」を実現するとも述べた。
主要政策:
河野太郎デジタル相
3回目の挑戦となる。世論調査で人気が高い石破、小泉両氏の支援も得た「小石河連合」で臨んだ前回総裁選は議員票が伸びず、岸田首相に敗れた。61歳。今回は3氏とも立候補した。米ジョージタウン大学を卒業し、英語に堪能。外相や防衛相を歴任した。自民党内で唯一存続を決めている麻生派に所属している。
「脱原発」を主張してきたが、最近は原子力発電所再稼働への反対姿勢を軟化させている。出馬会見では、原発の建て替えも選択肢と踏み込んだ。選択的夫婦別姓も認めた方がいいと語った。政治資金の不記載があった議員には同じ額を返還するよう求めた。
主要政策:
上川陽子外相
最後に出馬表明した。71歳。東京大学卒業後、三菱総合研究所研究員や米国留学を経て、政策コンサルティング会社を設立した。男女共同参画担当相も経験し、女性活躍に尽力していることで知られる。岸田派に所属していたが、推薦人集めは「派閥という枠組みの中で考えていない」とし、他派閥の議員からも支持を集めた。
11日の出馬会見では「覚悟を持って国難にあたり、日本の新しい景色をつくっていく」と発言。経済財政政策を優先課題の一つに掲げ、物価対策と賃金アップ、成長産業の育成、経済・財政の強じん化の三項目を柱に据えた。法相時代にはオウム真理教の元教祖、麻原彰晃(本名・松本智津夫)元死刑囚ら13人の死刑執行命令書に署名した。
主要政策:
小林鷹之前経済安全保障担当相
49歳の小林氏は、若い世代のリーダーの一人と目されている。中堅・若手議員の支持を得て8月19日、一番乗りで立候補表明の記者会見を行ったが、知名度不足は否めない。ただ、出馬することで将来の首相候補として自民党員や有権者に名前を知らしめることになる。
サラリーマン家庭に生まれ、財務官僚になったが、12年の衆院選で野党だった自民党から出馬し、政界入りした。宇宙資源法など議員立法にも熱心に取り組み、岸田内閣で初代の経済安全保障担当相を務めた。
主要政策:
林芳正官房長官
12年以来、2回目の挑戦。解散した岸田派ではナンバー2の座長を務めていた。政策通として知られ、参院議員時代に農相、文部科学相などを歴任。21年から衆院に転身し、岸田政権では外相、官房長官として首相を支えた。税制にも精通し、党税制調査会の非公式幹部会(インナー)のメンバーを務めたことがある。
人にやさしい「仁」の政治を行うとしている。楽器をたしなみ、主要7カ国(G7)外相の前でピアノの弾き語りも披露した。選択的夫婦別姓制度の導入について「個人的にはあってもいい」と述べた。63歳。
主要政策:
茂木敏充幹事長
地元の公立高校から東京大学に進学した。米国留学、大手コンサルタント会社勤務などを経て1993年の衆院選で初当選。経済産業相、党政調会長、外相など要職を歴任した。日米貿易協定など通商交渉も担当し、「タフネゴシエーター(手ごわい交渉相手)」のイメージを売りにする。68歳。
岸田政権では幹事長を務めていたが、世論調査での支持は小泉、石破、高市各氏らに差をつけられている。今回の総裁選は次期衆院選や来年の参院選の顔を選ぶ側面もあり、知名度アップが課題となっている。出馬表明の記者会見で、増税ゼロの政策を推進し、自らが首相に就任した場合は「3年以内に結果が出なければトップが責任を取る」と語った。デフレ脱却宣言を必ず行いたいとの決意も示した。
主要政策:
加藤勝信元官房長官
元厚生労働相で官房長官の経験も持つ加藤氏は、旧大蔵省(現財務省)出身の68歳。厚生労働相、党総務会長、官房長官など要職を歴任した。新型コロナウイルス対策に関わり、G7の中でも感染症の被害を低水準に抑えることに貢献した。
10日の会見では、国民の所得倍増を最優先課題として取り組む方針を表明。実効性のある補正予算を編成し、早期の成立を目指す考えを示した。給食費・こども医療費・出産費負担ゼロの実現を目指すなどとした政権公約「ニッポン総活躍プラン」を発表した。茂木幹事長と同じ派閥に所属していた。同じ岡山県連所属の橋本岳衆院議員らが支援している。
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