( 211648 )  2024/09/14 14:59:24  
00

兵庫県の齋藤元彦知事 

 

 どれだけ、おかしな人なのか――。持ち上がった疑惑について無表情のまま、“官僚答弁”を繰り返す兵庫県知事。果ては辞職要求にも応じず、県政を混乱の渦に陥れている。しかし、クビになったところで、結構な額の退職金を手にするという。 

 

【写真をみる】“お土産”を「俺がもらっていく」と堂々お持ち帰り 高級ガニを手に満面の笑みを見せる“パワハラ疑惑”の齋藤知事 

 

 *** 

 

 今年5月以降、パワハラやおねだり疑惑が取り沙汰されてきた兵庫県の齋藤元彦知事(46)。先月30日に引き続き、今月6日にも百条委員会で証人尋問を受け、針のムシロ状態となったが、 

 

「彼は終始、無表情であらゆる瑕疵(かし)を否定しました。一つひとつのパワハラやおねだり疑惑はもちろんのこと、一連の騒動の発端となった告発を握りつぶすべく、元県民局長の男性に圧力をかけたとされる件についても、自身の正当性を主張したのです」(県政担当記者) 

 

 周知のように、告発文を書いた元県民局長は、齋藤知事の側近から強引な取り調べを受けた後、停職3カ月の懲戒処分が下され、7月に自殺した。 

 

「県が告発内容の真偽を第三者的な視点から確かめる前に、齋藤知事や側近たちが告発者を特定したことなどは、公益通報者保護法違反に当たる可能性が指摘されています。現在、これが数ある疑惑の中でも最もマズいと批判されていますが、齋藤知事は今月6日の証人尋問で、“法的に問題はない”と答えました」(同) 

 

 その上で、告発者が亡くなったことなどの道義的責任について問われると、 

 

「今度は“道義的責任が何か、私には分からない”と真顔で言い放ちました。この冷酷な言動により、批判の声はさらに強くなっていったのです」(同) 

 

 彼を擁立し、後ろ盾となっていた維新の会も一転、9日に齋藤知事へ辞職を申し入れた。12日には、自民を始めとする他の全ての会派もそろって辞職を求める、異例の事態が訪れた。 

 

「それでも齋藤知事は、辞職しないといわれていますが、いずれにせよ政治家としては詰んでいます。辞職しない場合、県議会が始まる19日以降に不信任決議案を提出されるでしょうが、たとえ彼が反撃として議会を解散させたところで、もはや手遅れです。全会派が続投を望んでいない状況では、新議会が不信任案を再採決し、可決されれば失職するわけですからね」(同) 

 

 

 それにしてもなぜ、齋藤知事は責任を取ろうとしないのか。原因は、彼の特異な性格によるものだとみる向きがある。 

 

 地元メディアの記者はこう語る。 

 

「彼は一連の騒動で注目を集める前から、プライベートを全く明かさない“秘密主義者”として有名でした。例えば普段、奥様を人前に連れて来ることは絶対にありません。3年前に知事選が行われた際、彼が当選した瞬間と他に1~2度ほど、奥様がチラッと現場に顔を出したことはありましたが、それ以外の公の場で彼女の姿を見た者はいないのです」 

 

 また、送迎を担当する公用車の運転手ですら、彼の自宅住所を知らないのだという。 

 

 県庁の関係者によれば、 

 

「齋藤さんは運転手に自宅から少し離れた“ランデブーポイント”を指定しており、必ずそこで乗り降りをしてきたそうです。一流芸能人のごとく、自宅住所がバレるのを極度に恐れていたとのことです。県の災害対策本部が作成した名簿にも、他の職員は皆住所を記載しているのに、知事の欄だけが真っ白になっていました」 

 

 齋藤知事は総務省のキャリア官僚だった頃、出向先の宮城県仙台市で、同じく出向していた兵庫県の職員4人と近しくなった。兵庫県知事となってからは、彼らを側近として重用していたのだが、 

 

「この“4人組”の中でも、彼の住所を把握し、実際に家まで行ったことがあるのは、1人だけだったと聞いています」(同) 

 

 齋藤知事は総務省の役人時代、大阪府に出向。維新共同代表で府知事の吉村洋文氏(49)に仕えた。 

 

「今回、齋藤知事は、自身を政治家に引き上げてくれた吉村知事から直接、辞職するように説得を受けました。しかし、頑としてこれを拒否したようです。もう誰の言うことも聞かないでしょうね」(前出の県政担当記者) 

 

 かつて相談相手として名前が挙がった神戸市長の久元喜造氏(70)や“4人組”とも関係が切れており、完全に孤立しているとみられるという。 

 

「今、彼にアドバイスができるのは法的な知見を授けている弁護士と、奥さんだけだといわれています」(前出の県庁関係者) 

 

 さて、“孤独な暴君”は知事をクビになった後、どのように生きていくのか。 

 

 政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏に聞くと、 

 

「長年、行政の世界で仕事をしてきた彼がこの先、急に他の分野で生きていくのは現実的ではありません。そう考えると、総務省時代のコネクションを生かして企業の顧問になったり、シンクタンクを立ち上げたり、といったあたりになるでしょう」 

 

 だが、自らの問題で県政を混乱させた責任はあまりに大きい。 

 

「やはり、行政のトップに最も必要な危機管理能力が、圧倒的に欠けていたという残念な評価が付いて回るはずです。となると、結果が何よりも大事なビジネスの世界では、どれだけコネがあったとしても、良い仕事はなかなかもらえないと思います」(同) 

 

 

 当面、頼りは貯金と退職金だけということか。 

 

 もっとも、その退職金について言えば、本来なら来年7月の任期満了まで務めた際の満額は約4052万円だった。だが、維新に擁立された齋藤知事は就任後、自らに“身を切る改革”を課して、これを約2026万円に減額した。 

 

 仮にこの9月中に知事を退くとすれば、 

 

「就任から今年8月までの計37カ月分で、約1561万円の退職金が支払われる計算となります」(県人事課の担当者) 

 

 ちなみに、年収についても同様、維新の方針で、 

 

「本来だったら約2471万円でしたが、約1775万円に減額されています」(同) 

 

 減額されたとはいえ、1561万円の退職金は庶民にはうらやましい限りである。県庁にはそんなカネは払う必要がないとの抗議電話が殺到しそうだが、ご本人はこんなことになるなら、身を切る改革なんて言わなきゃよかった、と内心思っているかもしれない。 

 

「週刊新潮」2024年9月19日号 掲載 

 

新潮社 

 

 

 
 

IMAGE