( 212283 )  2024/09/16 15:19:08  
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小泉進次郎氏 

 

 9月27日に投開票の自民党総裁選。今、自民党が直面するのは、「石破茂」か「小泉進次郎」かという究極の選択だという。すでに総裁選の決選投票先が両者に絞られると見越して、水面下ではさまざまな動きが――。【前後編の前編】 

 

【写真】「わぁ、こんなにきれいな人がこの世にいるのか!」 対抗馬・石破氏は慶大時代、妻・佳子さんにひとめぼれしたという 

 

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 先日、予報から外れて迷走した台風10号は、自民党総裁選にも少なからぬ影響を及ぼした。 

 

 政治部デスクが言う。 

 

「林芳正官房長官(63)が台風への政府対応を優先するため、出馬表明を当初予定の8月27日から9月3日に変更。小泉進次郎元環境相(43)は8月30日を9月6日へとずらしました。また、茂木敏充幹事長(68)は4日、高市早苗経済安保相(63)は9日に出馬を表明。さらに、加藤勝信元官房長官(68)は10日、上川陽子外相(71)は11日に同じく出馬を表明しました」 

 

 ここに、すでに出馬を表明していた小林鷹之前経済安保相(49)、石破茂元幹事長(67)、河野太郎デジタル相(61)を加えた計9名の出馬が確定しているのだ。 

 

 かつてない群雄割拠となった総裁選の見通しについては、誰もが口をそろえて「決選投票にもつれこむ」と言う。総裁選の1回目の投票では、約110万人の党員票が、党所属の国会議員票と同数の367票に換算される。これに議員票を加えた計734票の過半数を獲得すれば即「勝者」となるが、候補者乱立の現状を見るに、1回目で過半数を得る者はなかろう、というわけだ。 

 

 そして、 

 

「1回目の獲得票で上位2名が決選投票に進みますが、その二人とは、ほぼ小泉氏と石破氏になるといえそうです」 

 

 とは自民党関係者。理屈はこうだ。 

 

「世論調査で両氏は自民党支持層からともに2割以上の支持を得ています。それを踏まえると、二人合わせて党員票の半数近く、約180票ほどを集め、それぞれ約90票を得るという試算が成り立つ。これに推薦人の20票を足すと、小泉氏と石破氏はおよそ110票を基礎票として持っていることになります」(同) 

 

 

 一方、ほかの候補者たちはというと、 

 

「残りの約180票の党員票を取り合う形になりますね。仮に8名が出馬したとして、先の2名を除く6名が“均等”に分け合うと想定すれば、1名あたり30票ほど。これに推薦人の20票を足しても50票にしかなりません。また、議員票についても、367票から推薦人20名×候補者8名分の160票を差し引いた約200票を8名全員で奪い合う形になる。これでは議員票で差がつくことはなさそうです」(同) 

 

 その結論はこうなる。 

 

「1回目の投票では基礎票が多い小泉氏と石破氏が優勢。二人が1、2位で通過するとみられます」 

 

 では2回目、すなわち決選投票はどうなるのか、先のデスクによると、 

 

「議員票367と都道府県連票47の計414票を争うことになりますが、1回目と違って議員票の比重が極めて大きい。彼ら議員の支持いかんで、勝者がほぼ決まります」 

 

 だが、これぞまさに悩みどころなのである。小泉氏か石破氏か――。ベテラン議員の「どっちもどっち」という弁に、党内の意見は集約されていそうだ。 

 

「進次郎くんは気のいい若者だけど、国家観や歴史観は聞いたこともないし、だいたい習近平やプーチンと渡り合っていけるのか。石破さんも政策通だというものの、財政再建派でしょ。景気浮揚そっちのけじゃ困っちゃう。外患か内憂かの選択だよ」 

 

 政治アナリストの伊藤惇夫氏が両氏を評するには、 

 

「小泉氏は見栄えもよくて刷新感があり、総選挙の顔としては最適ですが、閣僚経験が環境相だけ。安保や外交面のみならず、経済面の知識・経験不足も指摘されます。私は昔から小泉氏を“天才子役”と呼んできましたが、依然として“大人の名優”と呼べるレベルではありません」 

 

 次は石破氏。 

 

「小泉氏に比べて安保・外交面での知識・経験は豊富。でも、本人が自覚する通り周囲に仲間がおらず、党内に支持者がほとんどいない。仮に総理総裁になっても、足を引っ張る人間さえ現れそうです」 

 

 作家で元外務省主任分析官の佐藤優氏の見方はやや異なる。 

 

「小泉氏の経験不足が言われていますが、安保・外交に限って言えば、秋葉剛男(たけお)国家安全保障局長を留任させれば大きな問題は起きないはず。その面は現在、秋葉氏がしっかり一人で支えているようなものだからです。むしろ石破氏のほうが独自色を出そうとし、混乱を招きかねません」 

 

 見栄えだけで“経験不足の子役”と、自負は強いが“仲間のいない政策通”。たしかに究極の選択ではあろう。 

 

 

 で、目下、水面下では両氏による決選を見据えたうごめきが。政治ジャーナリストの青山和弘氏が言う。 

 

「菅義偉前首相(75)は支援する小泉氏の勝利に向けて、さまざまな手を打っています。例えば、菅氏は加藤氏の陣営に推薦人を貸し出す動きを見せている。決選で加藤陣営を引き入れるため、恩を売っているわけです。8月20日には茂木氏とも会合を持ちました。新政権でのポストをちらつかせ、決選での協力を呼びかけたとみられています」 

 

 後編【「石破さんは天敵・麻生さんにも頭を下げる覚悟」 石破氏本人も「プラスになることは何でもやる」】では、石破氏本人へのインタビューを交えながら、総裁選の戦局のウラに迫る。 

 

「週刊新潮」2024年9月12日号 掲載 

 

新潮社 

 

 

 
 

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