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北海道勇払郡厚真町上厚真地域に、バスや最寄りコンビニまで遠い所に位置する地域で、スーパー閉店後に4月にローソン上厚真店がオープンした。

地元行政の対応もあり、地元の要望に合わせて商品も取り扱っており、高齢者が多い地域にとって買い物の利便性が向上している。

地方スーパーの経営が厳しくなり、コンビニが受け皿として期待されている一方で、ローソンは厳しい地域でも積極的に出店を進めている。

ローソンはエリアカンパニー制を拡大し、各地域のニーズに合わせた出店を重視している。

(要約)

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今年4月にオープンしたローソン上厚真店、広めのフリースペースもある(写真:ローソン) 

 

 北海道札幌市から南東約70キロにある北海道勇払郡厚真町(あつまちょう)上厚真地域。最寄り駅のJR浜厚真駅から5キロ以上離れ、バスも1日4本程度しか走らない。過疎化が進むこの地に今年4月、ローソン上厚真店がオープンした。 

 

【図表で見る】大手3社で比較。買い物難民の味方・ローソンはどの都道府県に多いのか? 

 

 同店の場所には元々、地元農協の運営するスーパーがあったが、2023年4月に閉店。地域にほかのスーパーはなく、最寄りのコンビニまでも10キロ以上離れている。同地域は60歳以上の高齢者が4割を占める。スーパーの閉店によって買い物はより不便になり、日常生活への影響は大きかった。 

 

 そこで地元行政は、住民が買い物できる店舗を確保するため、農協から不動産を取得し、店舗活用事業者を公募。ローソンの出店に至ったわけだ。 

 

■店舗網の見直しを迫られるスーパー 

 

 上厚真店では地元のブランド豚を使った冷凍加工肉や、地元民のニーズが強い冷凍ジンギスカン、地元のコメを使用した日本酒、ハスカップのジャムなども取り扱っている。以前のスーパーが地元住民の交流の場になっていたこともあり、広めのフリースペースも設けているのも特徴だ。 

 

 厚真町の西野和博副町長は「町として買い物困難地域となった地区にローソンが出店することになり、感謝している」と話す。 

 

 ローソンは足元、地方スーパーの跡地への出店をじわりと増やしている。上厚真店のように行政など地元の要請がきっかけとなることも多い。スーパーが退店を強いられた場所へ、なぜ出店を進めているのか。 

 

 まず触れなければならないのが、地方スーパーの厳しい経営環境だ。地方は人口減少、高齢化による「胃袋縮小」の影響がかねて指摘されてきた。そこに追い打ちをかけるのが、労働力不足、人件費や電気代など店舗運営コストの高騰だ。足元では和歌山地盤のオークワ、山形のヤマザワのように上場企業でも集客に苦戦し、利益を出せない企業が増えている。 

 

 そんな中で、各社は「20年、30年以上先の収益構造や人口減少を加味して、最適な店舗網の再検討を迫られている」(上場スーパー首脳)。結果として、地域唯一のスーパーが撤退を余儀なくされることもある。 

 

 受け皿として期待されるのがコンビニだ。スーパーよりも小さな面積で運営でき、物流を含めたオペレーションは効率的だ。必要人員や経費も抑えられる。スーパーでは成り立たなくとも、コンビニなら黒字化できる立地も多いという。 

 

 

■エリアカンパニー制も出店を後押し 

 

 全国で出店余地が限られる中、ローソンはこうしたチャンスをものにするために取り組んできたわけだ。 

 

 変わった運営方式の店の例もある。今年7月に地区唯一だった生鮮小売店跡地に開業した長野県下伊那郡の阿南町新野店は、買い物場所に困った地元住民が形成した組合によって運営されている。そのほか、地方スーパーチェーンがローソンのフランチャイズに加盟し、既存の店舗を建て替え、新たにローソンを出店する事例もある。 

 

 スーパー跡地ではないが、富山県の立山町にある立山町役場店のように、書店が1店舗もない地域に、書店併設型のコンビニ出店も進めている。 

 

 ローソン常務執行役員の川畑卓開発本部長は「2022年の着任早々、スーパー跡地への出店を研究し、採算が見込めるところへアプローチを続けてきた」と話す。以前はこうした形の出店はほぼゼロに近かったが、最近では年間10店程度は出店するようになっているという。 

 

 同社は現場への権限委譲を目的に、2022年度から北海道、近畿で導入していたエリアカンパニー制を翌年度から全国に拡大。それぞれのエリアを担当する開発部も各カンパニー傘下に設置した。 

 

 各地域の開発部の直接的な所管は、東京本社の開発本部ではなく、各カンパニープレジデントとなった。「それぞれのカンパニーに予算が振り分けられており、地域の裁量が拡大したことで、従来は消極的だった立地への出店も増えてきた」(川畑氏)。 

 

 疑問なのは、黒字が見込めるとはいえ、なぜあえて厳しい地域で出店を推進するのかということだ。 

 

 下の表を見てほしい。都道府県の中でも65歳以上の年齢構成比(高齢化率)が高い都道府県における、大手3チェーンの店舗数だ。 

 

 国内総店舗数で業界3位のローソンだが、高齢化率上位13県のうち9県でトップシェアを持つ。ローソンはこの12県に総店舗数の13.5%が立地しており、セブン‐イレブン(7.8%)、ファミリーマート(9.5%)と比べてもその比率は高い。 

 

 こうしたデータから見ると、大手3チェーンの中でもローソンが高齢化、人口減少の影響をより強く受ける可能性が高い。首都圏での店舗拡大が重要なのは言うまでもないが、出店競争は過酷だ。 

 

 

 折しも業界首位、セブン‐イレブン・ジャパンの永松文彦社長は今年4月、「来期以降、トップシェアではない地域中心に出店を再加速する」と語っている。出店競争の激化が予想される中、地方ならではの集客策を磨くことが、より重要になる。 

 

■川畑氏「次世代のニーズは地方から顕在化」 

 

 ローソンが競争力を維持するには、いかに地方のニーズをくみ取り、店舗の集客力を高められるかがカギを握る。厳しい立地の出店にチャレンジしているのは、その一環なのだ。 

 

 川畑氏は「次世代のコンビニに対するニーズは(人口減少の最前線である)地方から顕在化していくはず」と話す。業界3位で地方店を多く抱えるローソン。地方発の商機を見出すことが、巻き返しの重要戦略になる。 

 

冨永 望 :東洋経済 記者 

 

 

 
 

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