( 213323 ) 2024/09/19 17:19:09 0 00 高市早苗氏
(ブルームバーグ): 過去最多の9人が立候補した自民党総裁選で、高市早苗経済安全保障担当相と上川陽子外相の2人が日本初の女性首相の座に挑戦している。
2021年に続く出馬となる高市氏は9日の記者会見で、前回支持を受けた故安倍晋三元首相の「応援するよ。女性初の総理大臣、いいじゃないか」の言葉を胸にとどめながら、「全力投球していくのみだ」と語った。上川氏は11日の出馬会見冒頭で「今回スタートラインに立てたことそれ自体が、新しい自民党の姿をお示しする大きな一歩だ」と希望を語った。
高市氏は報道各社の調査で、石破茂元幹事長、小泉進次郎元環境相と上位を争っており、有力候補の1人とされている。高市氏が勝利すれば女性の首相も財務相も中央銀行総裁もいなかった日本社会にとって時代を画する出来事となる。
S&Pグローバルマーケットインテリジェンスの田口はるみ主席エコノミストは、女性の候補者が選ばれれば、「ガラスの天井が一つなくなるという意味で、男女平等がひとつ高まるという象徴的な出来事になる」と指摘する。
国会議員票と党員・党友票を争う同党の総裁選で読売新聞が先週末に行った党員・党友への調査では、石破氏が26%、高市氏が25%、小泉氏が16%、上川氏は6%だった。ただ、朝日新聞が18日報じた国会議員の支持動向調査では、小泉氏が46人とトップで、高市氏は石破氏と共に30人で5位、上川氏は22人で8位にとどまっている。
女性の政治参加で後れ
仮に高市氏が当選した場合でも、女性の登用が進むかどうかは不透明だ。推薦人に名前を連ねている西田昌司参院議員は、政策や歴史認識が理由で支援しているとし、「女性初の総理大臣を目指して高市さん頑張れ、というつもりはない」と話す。
「鉄の女」と呼ばれた英国の故サッチャー元首相を憧れの人としている高市氏は、自民党内でも右派とされる議員から支持を集めている。総裁選では女性活躍推進よりも「強い経済」の実現や防衛力の強化などに力点を置いて訴えている。
列国議会同盟(IPU)によると7月時点で、衆院に占める女性の比率は10.8%だった。世界162位で29.2%の米国や35.3%のドイツなど主要7カ国(G 7)や20%の韓国などにも後れを取っている。世界経済フォーラム(WEF)の世界男女格差報告書でも、日本は146カ国中118位で政治と経済分野でのスコアが特に低かった。
自民党の党改革実行本部が昨年まとめた計画では、10年間で国政における女性議員の割合を30%に引き上げる目標を掲げた。衆院比例代表候補の上位を女性にすることや女性候補者支援金制度の創設、ベビーシッターや一時保育の利用料等の費用負担などを具体的な施策として挙げている。
高市氏は16日に金沢市で開催された公開討論会で、比例代表で自民党は女性を増やす努力をしなければならないとし、「出産など女性にしかできないことへの対応を進めたい」と述べた。上川氏は同討論会で、「女性の活躍なくして日本の将来はない、という動きを作ることがリーダーの役割だ」と話した。
女性の政治参加になお高いハードルも-猪口参院議員
1955年に結党した自民党の総裁選に女性が初めて立候補したのは2008年の小池百合子・現東京都知事で5人中3位だった。21年は高市氏と野田聖子元総務相の2人が挑戦したが、4人の候補のうち高市氏は3位、野田氏は4位で、上位2人による決選投票には進めなかった。
08年の総裁選で小池氏の推薦人だった猪口邦子元少子化対策担当相は女性の政治進出の流れは感じるものの、「変わり方の速度が十分に速いかという問題は残る」と指摘。16年前の小池氏の時に比べて女性議員が立候補するハードルの高さは「残念ながら変わっていない」という。
上川外相は立候補に必要な国会議員の推薦人20人の確保に時間がかかったため、正式表明は告示日前日の11日となった。
村上財団の村上フレンツェル玲代表理事は、「パブリックリーダー塾」を22年に立ち上げた。女性の政治家育成を目指して取り組んでいるが、選挙活動や政務と子育てのバランスを取ることは非常に難しく、パートナーの支援を得られるかどうかが女性が政治家を目指すうえで重要であると指摘する。
猪口氏によると、地方議会では家族への嫌がらせなどを懸念して立候補をためらう人も多くいるという。村上氏が運営する女性の政治家育成塾では、選挙中のハラスメント対策を取り上げ、一人で活動せずに身の回りの安全を確保できるような人と行動を共にすることなどを指導している。
一方、上智大学の三浦まり教授は、女性首相が誕生するには「蓄積がないといけない。元々の母数として女性が多いことが必要」と指摘。女性の政治参加を加速させるためにはクオータ制などを取り入れる必要があるが、自民党が導入する可能性は低いとの見方を示した。
(c)2024 Bloomberg L.P.
Yui Hasebe, Erica Yokoyama
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