( 213961 )  2024/09/21 15:52:14  
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自民党の総裁選で、石破茂元幹事長、小泉進次郎元環境相、高市早苗経済安全保障相の3人が決選投票で競い合う可能性が高い。

各候補は支持票を獲得し、どれだけ他候補の支持を取り込むかが勝利に繋がる。

各種調査結果によると、石破氏や高市氏、小泉氏が上位に位置するが、落選者の支持をどう取り込むかが重要とされる。

読売新聞の報道や各種調査により、総裁選の結果は未だ不透明で、最終的な勝者はまだ見極めがつかない状況となっている。

(要約)

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(c) Adobe Stock 

 

 自民党総裁選(9月27日投開票)は、早くも決選投票を見据えた攻防が激化している。主要マスコミの調査によれば、決戦に残る可能性があるのは石破茂元幹事長、小泉進次郎元環境相、高市早苗経済安全保障相の3人に絞られ、他候補の支持票をいかに取り込むかが最終的な勝利に繋がるからだ。政界事情に通じる経済アナリストの佐藤健太氏は「決選投票は『嫌われ者』の中で最もマシな人物を選ぶことになる。簡単な足し算とはいかないだろう」と見る。SNSなどでもこれまで以上の盛り上がりを見せる総裁選。最後は一体誰が笑うのかーー。 

 

 今回の総裁選は、国会議員票が367票、党員・党友票が367票の計734票で競う。ただ、1回目の投票で過半数を獲得する候補がいなければ、上位2人による決選投票が行われる。ポイントになるのは、1回目の投票とは異なり党員・党友票が都道府県で1票ずつの計47票に限定される点だ。 

 

 立候補者が最多の9人に上る今回は、国会議員の推薦人(20人)だけで180人に達する。石破氏や小泉氏、高市氏はそれぞれ地方でも人気が高いものの、過半数を上回る得票は見込めない状況だ。それだけに各候補は決選投票を見据えた動きを水面下で激化させる。 

 

 読売新聞が9月16日付1面トップで報じた調査結果が波紋を広げた。総裁選の投票権を持つ党員・党友と確認できた1500人への電話調査と国会議員の支持動向を調べたもので、その結果を合計すると高市氏と石破氏が123票となり、小泉氏(105票)に差をつけていたのだ。 

 

 党員・党友の投票先は石破氏が26%、高市氏は25%、小泉氏は16%。4位以下は上川陽子外相と小林鷹之前経済安保相が6%、林芳正官房長官が5%、河野太郎デジタル相が3%、茂木敏充幹事長が2%、加藤勝信元官房長官が1%の順だった。この結果をもとに試算すると、石破氏はトップの97票、高市氏は94票、小泉氏は60票になるという。 

 

 国会議員の支持動向調査では、小泉氏が45人と最多で、2位は小林氏の40人、林氏の35人、茂木氏は33人。高市氏は29人、石破氏は26人だった。「未定」「未回答」は91人。 

なぜ、この読売調査が衝撃を与えたのかと言えば、党員・党友票において高市氏が急伸しているとされたからだ。 

 

 

 これまでの各種調査で国民的人気の高さは石破氏と小泉氏が1、2位を争ってきた。5度目の挑戦となる石破氏は1回目の投票で過半数には達しないものの、高い人気を背景に決選投票で勝利をつかむ。小泉氏はたとえ党員・党友票が2位だったとしても決戦では国会議員票を手堅く集め、石破氏を逆転する。こうした計算が両者それぞれに働いてきたはずだ。 

 

 だが、それは石破氏と小泉氏の2人が決選投票で争うことが大前提である。そこに高市氏が加わることになれば、両者の計算はいとも簡単に崩れることを意味するのだ。日経新聞とテレビ東京が9月13~15日に実施した調査を見ると、「次の自民党総裁にふさわしい人物」としては、石破氏(26%)が首位であることは変わらない。2位は小泉氏(20%)、3位は高市氏(16%)だ。自民党支持層に限っても石破氏はトップ(25%)をキープしているが、2位は高市氏で22%と8月調査時から7ポイントも上昇。一方、小泉氏はマイナス11ポイントの21%で3位に落ち込んでいる。 

 

 ある全国紙政治部記者は「1回目の投票では地方で人気が高い石破氏が1位で、小泉氏が続くと見られてきた。でも、高市氏の急上昇が本当であれば決選投票には高市氏ともう1人が進むことになる。岸田文雄首相をはじめ現執行部は、高市氏側が事前に党員らに郵送した政策リーフレットが影響したと見ているが、ゴタゴタすれば高市氏側にかえってプラスになるとの見方もある。いずれにしても最終的に誰が勝つのかはまだ見えない状況だ」と解説する。 

 

 別の調査も見ておきたい。まずは時事通信が9月15日までに議員からの聞き取りなどを実施した支持動向調査だ。それによれば、小泉氏が議員支持で若干先行し、森山派(解散)を除く各派に支持が広がっているという。石破氏は無派閥議員に加えて二階派(解散表明)などが支え、高市氏は保守系の一部に浸透しているものの推薦人20人からの上積みは少数にとどまると分析されている。また、都道府県連幹部を対象としたアンケート調査では石破氏の支持が7人で最多。高市氏は6人、小泉氏は5人だったという。 

 

 もう1つ気になるのは日本テレビの調査だ。9月13~15日に全国の有権者に電話調査したところ、自民党支持層では小泉氏が24%でトップを獲得。2位は石破氏(23%)、3位は高市氏(18%)だった。だが、それとは別に日本テレビが党員・党友を対象にした調査(9月12日)を実施したところ、1位は石破氏の25%となり、2位は高市氏(22%)、3位は小泉氏(19%)となっている。 

 

 

 2つの調査で結果が大きく異なるのは興味深いところだ。考えられるのは、読売新聞の調査でも見られているが、総裁選の投票権を持つ党員・党友を対象とする調査においては「石破・高市・小泉」の順になっている可能性が高い。時事通信の都道府県連幹部の支持動向も同様の傾向がみられる。 

 

 仮に党員・党友票の多くが石破氏と高市氏に流れることになれば、小泉氏は国会議員票で2人よりも多い票を獲得しなければ1回目の投票で上位2人に食い込めないことになる。JNNの議員票動向調査によれば、小泉氏は50人以上の支持を得てトップに立っている。 

 

 小林氏は50人程度の支持を得て、林氏と茂木氏は40人前後、石破氏と高市氏は30人台の票を固めたという。河野氏は30人前後で続き、上川氏と加藤氏は推薦人20人から支持がほとんど広がっていない。「態度不明」は40人以上になっているが、大体のところは読売新聞の調査とも重なる。 

 

 読売新聞の調査を前提にすると、小泉氏は少なくとも国会議員票で石破氏と高市氏より20人以上の票を獲得しなければ決選投票には進めないことになる。だが、読売でもJNNでも「20人超」までは確認されていない。9月27日までの間に「態度不明」の議員に支持を広げられるかが勝負を分ける。 

 

 自民党が政権を奪還した2012年の自民党総裁選では、1回目の投票でトップだった石破氏は、2位の安倍晋三元首相に50票以上の差をつけた。だが、決選投票では国会議員票を固めた安倍氏に20票近い差で敗れている。石破氏にとっては、今回も同じような結果になるのではないかという不安があるに違いない。 

 

 今回の決選投票が読みにくいのは、派閥が解消する中で9人が立候補している点にある。岸田派と茂木派からそれぞれ2人が出馬したことも票読みを難しくする。決選投票の結果は誰と誰の戦いかという組み合わせによっても異なるだろう。言えることは、今回の決選投票ではプラス面よりも、「誰が嫌いか」という人間関係のマイナス面が大きく影響するということだ。 

 

 まず、石破氏と高市氏が決選に進んだ場合はどうか。マイナス面を見ると、石破氏は「人付き合いが悪い」「話してもつまらない」「顔が怖い」などと言われてきた。小泉氏を支援する菅義偉前首相サイドは石破氏の支援に回るとみられるが、その一方で河野氏が所属する麻生派会長の麻生太郎副総裁らは高市氏側に向くだろう。 

 

 

 麻生政権時代に石破氏は反旗を翻す行動を見せ、麻生氏にとっては「絶対許せない人物」の1人だ。麻生派の重鎮である甘利明元幹事長は小林氏を応援しているが、決選投票では高市氏支援に回るとみられる。ただ、高市氏には「先鋭的すぎる」「扱いにくい」といった声もつきまとう。1回目の投票で議員票が少ないと見られているのは、こうした理由からだ。若手・中堅を中心とする小林氏陣営やリベラル系の票がすべて高市氏に回るとは考えられないものの、石破氏と高市氏の決選投票では、やはり高市氏が優勢になるとの見方は強い。 

 

 では、高市氏と小泉氏になった場合はどうか。このパターンでは若手・中堅が小泉氏に乗りやすい。さらに菅内閣のメンバーだった加藤氏や、菅氏と良好な関係を築く茂木氏の陣営から小泉氏支援に回る議員は出てくるとみられる。 

 

 小泉氏には「政策を理解しているとは思えない」「ポエマーみたいだ」といったマイナスな見方もある。世代交代へ危機感を抱く人たちもいるのは事実だ。ただ、国民的人気が高いのは事実で、議員票でも優位に立つ小泉氏が勝つ可能性は決して低くない。 

 

 最後は、石破氏と小泉氏のパターン。この組み合わせでは小泉氏が圧倒的有利と言えるだろう。党員・党友票では石破氏に差をつけられるものの、石破氏は決選投票で議員票が急増する要素がない。2012年の総裁選と同じく小泉氏が議員票を多く獲得し、“逆転勝ち”をおさめる可能性は高い。 

 

 こうした整理を重ねると「人望がない」と言われ続けてきた石破氏は、決選投票に進むことができたとしても最終的な勝利をつかむことは難しいことがわかる。もちろん、あらゆる選挙は投票箱が閉まるまではわからないが、人間関係が重視される永田町においては簡単な足し算とはいかないのが実情だ。 

 

 言うまでなく、政権与党である自民党のトップを決める総裁選は事実上の首相選びとなる。「最もマシな嫌われ者」は一体誰になるのか。いろいろな意味で複雑な総裁選は、いよいよ最終攻防に入る。 

 

佐藤健太 

 

 

 
 

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