( 214628 )  2024/09/23 15:34:15  
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選挙戦終盤、自民党内に動揺が広がった。 

 

当初「決選投票にも進めない」とみられていた高市早苗の支持が、各メディアの調査で躍進。「菅や石破を嫌う麻生太郎が高市に乗るかもしれない」との筋読みも流れ、一転して勝ち目が出てきたのだ。 

 

【画像】高市早苗が唱える「省庁再編」の全貌 

 

保守層とネットユーザーの間では、高市人気はすさまじい。 

 

理由の一端は、他の候補者が曖昧にしている「エネルギー」と「安全保障」で振り切った政策を提起したことだろう。 

 

「小泉氏や河野氏はかつて『再生可能エネルギー活用』と『脱原発』を唱えていましたが、再エネはコストが高く、効率が悪いことが国民にも認識され始めた。小泉氏・河野氏がトーンダウンしたいっぽう、高市氏と小林鷹之氏は原発推進を打ち出し、議論をリードしました。 

 

今後、日本国内への製造拠点回帰が本格化すると思いますが、TSMCが熊本を選んだのは、九州電力の原発が動いていることも背景にある。原子力政策は高市氏が得意とする『経済安保』や核保有の議論とつながりますから、支持層も好感を持っているのでしょう」(前出・飯田氏) 

 

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一部で「原子力マニア」とも呼ばれる高市は、より安全で効率のいい「革新炉」や、2050年をめどに実用化が目指される「核融合炉」にも詳しく、総理になれば研究開発を支援すると明言。 

 

さらに全固体電池の開発推進、防衛関連技術の社会還元といった、防衛・安保にかかわる産業政策も山ほど出している。 

 

ただ、前出の大西氏は「日本もアメリカのように最新技術の開発を進められるかについては、疑問符がつく」と指摘する。 

 

「中国やロシアのリスクを念頭に、日本でも防衛産業を育てようという高市氏の発想はよくわかります。ただ、アメリカではたとえば宇宙開発にイーロン・マスクのスペースX社を参入させ、ボーイングやロッキードと競わせて産業の底上げを図っていますが、日本の防衛産業は官製ですから、競争原理がうまく働かないかもしれません」 

 

 

エネルギー・安保政策に関連して、高市がセットで打ち出すのが、霞が関改革と省庁再編だ。具体的には「環境エネルギー省」「情報通信省」「内閣情報局・内閣情報会議」を設けるとしている。 

 

だが、これについても前出の東大教授・牧原氏が「あまり意味がないのではないか」と言う。 

 

「高市氏が情報通信省や内閣情報会議の設置で目指しているのは、要はインテリジェンス(諜報)機関の統合ですが、これが今まで実現しなかったのは、内閣情報調査室(内調)の背後の警察庁と、公安調査庁を外局としている法務省が対立してきたからです。 

 

公安調査庁は内調にはない人的資源やスキルを持っていて、高市氏はその機能を内閣直轄にしたいのだと思いますが、現状でも機能統合は進んでいる。インテリジェンス機関の一元化は『組織いじり』で終わるのではないでしょうか」 

 

もっとも、高市の支持者はこうした「しがらみ」を強力に突破することを彼女に求めているのだろう。 

 

ある意味で、支持層が明確であることが高市の弱みにもなっていると言うのは、選挙プランナーの大濱崎卓真氏だ。 

 

「高市氏は今回、従来どおりの右派的な政策に加えて『今は増税に反対』『年金への課税見直し』といった、ややポピュリズム的な政策も出してきていますし、会見や論戦でもそうした政策に時間を多く費やしている。『保守層を固めるだけでは勝ちきれない』という危機感が出てきているのではないでしょうか」 

 

尖った言葉には熱狂的ファンがつくが、総理大臣には「敵さえも味方に変える」鷹揚さも求められる。 

 

高市が化けるかどうかは、そこに懸かっているだろう。 

 

(文中一部敬称略) 

 

「週刊現代」2024年9月28日号より 

 

週刊現代(講談社・月曜・金曜発売) 

 

 

 
 

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