( 215353 ) 2024/09/25 17:23:03 0 00 介護職の不足は深刻な問題として今後も進行する可能性が高い(Photo/Shutterstock.com)
介護業界で人手不足が深刻視されるようになってきた。具体的には、2040年に約272万人の介護職員が必要とされる一方、現在の介護職員数の約215万人に過ぎず、約57万人が不足するというのだ。直近2年後の2026年度時点でも約240万人の介護職員が必要であり、約25万人が不足する見込みだ。厚労省の対策として処遇改善や外国人材の受入れなどが挙げられているが、本当に穴埋め可能なのか。深刻な介護の現場を解説する。
【詳細な図や写真】2040年に57万人、2026年に25万人の介護職員が不足する見込み(Photo/Shutterstock.com)
7月12日、厚労省が公表した「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」の中で、将来の介護職員の必要数が示された。2040年度には約272万人の介護職員が必要となり、2022年度時点で約215万人いる介護職員の数との差が約57万人にも上るという。
ちなみに、2年後の2026年度時点でも約240万人の介護職員が必要であり、約25万人が不足する可能性がある。16年後の57万人不足も厳しい数字だが、わずか2年後の25万人不足は、かなり絶望的な数字に思える。
資料内にある「介護保険事業計画」では、市町村の介護保険サービスがどれくらい必要かを推測している。介護保険法に基づいて市町村が定める計画で、介護保険の給付を円滑に実施することを目的としている。
都道府県ごとの集計を見るとやはり、大都市を擁する都道府県ほど、将来必要な介護職員の数が膨大だ。一方、地方で必要とされる介護職員数は少ないが、それでもその職員数を確保するのは難しい。
介護職員の不足は、「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」で初めて発表されたのではなく、過去の「介護保険事業計画」に基づいても指摘されていた。実は今回の「第9期」の介護保険事業計画に基づいて示された介護職員の必要数は、2023年に発表された「第8期」のデータよりも少なくなっている。
「第8期」のデータでは、2026年度は約243万人、2040年度は約280万人が必要とされていた。これが「第9期」では、先のとおり、2026年度は約240万人、2040年度は約272万人が必要といずれも必要な介護職員数が減っている。その差は、2026年度で3万人、2040年度で8万人となる。
また、「介護職員数の推移」という資料によると、2000年の要介護(支援)認定者数244万人・介護職員数54.9万人の時代から、要介護(支援)認定者数697万人・介護職員数215.4万人の2022年まで、介護職員数は要介護認定者数を追うようにどちらも右肩上がりで伸び続けている。
介護職員数が要介護(支援)認定者数に対して何割程度なのかを見ていくと、「介護職員数の推移」のグラフで最も古い平成12年度(2000年度)は、介護職員数は要介護認定者数の22.5%、最も新しい令和4年度(2022年度)は30.9%となっており、おおむね年々、要介護認定者数に対する介護職員の数が増えている。
要介護認定者の増加に合わせて、単純に同程度の割合の介護職員数を維持しているだけではなく、不足する介護職員数を補うために、国や市町村、そして現場の施設やサービスなどが努力している結果が表れているのだと思われる。しかし、そもそも増え続ける要介護認定者に対して必要な介護職員数を確保することは可能なのだろうか。
ここで内閣府の「令和6年版高齢社会白書」から、日本の人口の推移が示された「高齢化の推移と将来推計」のグラフを見ていこう。注目すべきは、生産年齢人口とされる15~64歳の人口の推移だ。
先ほどの「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」で示された必要とされる介護職員の数や、「介護職員数の推移」の介護職員の実数が、生産年齢人口に占める割合を見る。
まず、「介護職員数の推移」に記された最初の年である平成12年(2000年)は生産年齢人口が8622万人であるのに対し、介護職員数は54.9万人である。65歳以上の介護職員が生産年齢人口には含まれない恐れはあるにせよ、生産年齢人口の0.6%が介護職員だったと言える。
これが10年後の平成22年(2010年)には、生産年齢人口は8103万人に減ったものの、介護職員数は142.7万人に増えているため、介護職員が生産年齢人口に占める割合は1.8%にまで高まった。さらに10年後の令和2年(2020年)は、生産年齢人口が7509万人、介護職員数が211.9万人で生産年齢人口の2.8%を占めていた。
今後についても見ていこう。厚労省の資料で介護職員の必要数が示される2026年は「令和6年版高齢社会白書」の「高齢化の推移と将来推計」には記載がないので、仮に2025年の生産年齢人口で計算すると、生産年齢人口が7310万人、必要な介護職員数が240万人で生産年齢人口の3.3%となる。
2040年は生産年齢人口が6213万人まで減少しており、一方、必要な介護職員数は272万人まで拡大、実に生産年齢人口の4.4%が介護職員となる。これは、2040年には働き手の20人に1人程度は介護職員になる計算だ。生産年齢人口の0.6%が介護職員だった2000年と比較すると、3.8ポイントも高い2040年の4.4%がいかに高い割合となっているかが分かる。
厚労省が公表した「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」の中にも、「総合的な介護人材確保対策(主な取組)」という別紙資料があり、介護職員の確保のための対策が記されているが、これまでも目にしたものから代わり映えはしない。
挙げられている介護人材確保対策は、「介護職員の処遇改善」、「多様な人材の確保・育成」、「離職防止 定着促進 生産性向上」、「介護職の魅力向上」、「外国人材受入れ環境整備」だが、これらの対策だけで57万人もの不足を埋めることは、非常に難しいように感じる。職業選択の自由がある中で、そこまで介護職員を増やせるのだろうか。
ただ、暗い話だけでなく、明るい兆しもある。
前述のとおり、必要とされる介護職員の数が少なくなったこともその1つだ。そのほかに、おととしに離職超過だった介護・福祉分野の入職と離職が、昨年は入職超過に戻ったという情報もある。
これは、8月下旬に厚労省が発表した令和5年「雇用動向調査」の調査結果によるもので、おととしの2022年にマイナス1.6%の離職超過となった介護・福祉分野について、昨年2023年は2.4%の入職超過に戻った。介護職員の離職が落ち着き、入職が上回ったのだ。こうした積み重ねを継続することで、2040年の大規模な介護職員不足を防ぐ希望につながるかもしれない。
執筆:シニアジョブ 代表取締役 中島 康恵
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