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9月27日に行われる自民党総裁選挙では、9人の候補者たちが激しく競い合っている。

政治家としての信念や人を束ねるリーダーシップが重要であり、人間力が勝負の鍵だと鈴木宗男氏は指摘している。

総理大臣を選ぶ国会議員の信頼や力が重要であり、良い政策を考えても人を動かせなければ実現しないと述べている。

また、各候補者について涵養された人間力や信頼関係の重要性などを評価している。

(要約)

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鈴木宗男氏 Photo:SANKEI 

 

 9月27日に投開票が行われる自民党総裁選挙では、過去最多の9人が立候補し、小泉進次郎氏、石破茂氏、高市早苗氏が激しく競り合っている。長きに渡り永田町で戦い、名だたる政治家を間近で見てきた鈴木宗男参議院議員は候補者たちをどう評価するのか――。(参議院議員/新党大地代表 鈴木宗男、構成/石井謙一郎) 

 

● 国会議員が総理を決めるのだから 議員に信頼される「力」が勝負所 

 

 ――自民党の総裁選に、史上最多の9人が立候補しました。 

 

 それぞれ個性もあるし、政治家としての信念や思いもある方々です。しかし一国の総理を目指すのであれば、トータルな人間力が問われます。政策をしっかり持っていること。経験とキャリアがあること。何よりも、人を束ねるリーダーシップを持っていること。それらを兼ね合わせて、初めてトップリーダーになれるんです。 

 

 政治資金パーティー券を巡る裏金問題で、派閥そのものが否定されがちですが、政治資金収支報告書に記載しなかったことに問題があるのであって、派閥そのものに問題があるわけではありません。むしろ40~50人の政策集団の中で議論を重ね、良い人材を発掘し、何年もかけて鍛え上げていく。人材を育てるには良い仕組みで、そこでトップになった人間はそれなりの人物です。 

 

 日本は議院内閣制で、国会議員が総理大臣を決めるわけですから、他の議員から信頼される、彼らを束ねる力がある、こうした人間力があるかないかが勝負ですね。 

 

● どんなに良い政策を考えても 人を動かせなければ実現しない 

 

 ――人間力のある政治家というと、誰でしょうか。 

 

 やはりいまでも、何かあれば田中角栄ありせば、ですよ。田中先生は尋常小学校しか出ていないんですから、学力があるわけではなかった。それでも頭がいい。 

 

 私の言う頭の良さとは、人の心を捕まえるのがうまいこと。また、弱い人に寄り添ったり困った人に情けをかけたりできること。田中先生にはそうした人間力があったから、逮捕されようが批判されようが、待望論が尽きないんです。 

 

 高学歴で勉強ができても、どんなに良い政策を考えても、結局は人を動かせなければ政策は実現しません。 

 

 ――人間力という観点から、今回の各候補者はどう映りますか。 

 

 

● 議員の仲間たちと意見交換をして 胸の内を語れば仲間は増えていく 

 

 自民党員の皆さんを含めて、世論の動向は人気投票的な判断に傾いています。支持率が高いのは石破茂さんですが、国会議員の間ではなぜ評価が足りないのか。河野太郎さんも、若干失速したものの、選挙前には高い数字が出ていました。 

 

 石破さんや河野さんは、いってみれば富士山なんです。遠くから見ている分にはカッコ良いんですが、近くに寄ってみるとガッカリして、「あれ、来るんでなかった」なんていう思いにさせられるんです。 

 

 ――それはなぜでしょうか。 

 

 政治というのは、いろいろな人の話をよく聞いて、それを頭に入れながら進めるものです。特に国会議員が総理大臣を決める議院内閣制の日本では、議員の仲間たちと意見交換をして、「私はこんな政治を実現したいんだ」「俺は将来、トップリーダーになりたいんだ」と胸の内を熱く語れば、懇親を深めることができるし、1人でも2人でも仲間が増えて、人間力も深まるわけです。しかし石破さんは、国会議員の仲間が少ない。 

 

● 20人さえ集められないようでは 出馬資格はない 

 

 ――なぜですか。働きかけが足りないのか、共鳴してもらえないのか。 

 

 普段から、ラーメンとギョーザでもいいし屋台でもいいから、一杯飲んだりしてバカ話をするときに、信頼関係は深まるものです。何より、人をいたわる気持ちや思いやる気持ちは、そうやって鍛えて身に付くものです。それこそ、田中先生が大切にしていたことです。 

 

 しかし、田中先生を師と仰いでいるはずの石破さんが、仲間を集めて食事会を頻繁にやっているなんて、聞いたことがありません。河野太郎さんもそうです。わが道を行く、では人は集まらないんです。 

 

 20人の推薦人という出馬のハードルが高いか低いか、という議論がありますけど、20人さえ集められないようでは、どんなに立派な政策を唱えても、出馬資格はありません。私はむしろ、30人ぐらいが適切だと思います。本来ならば40~50人を束ねている人が出るべきです。 

 

 ――高市早苗さんはいかがですか。 

 

 

● 進次郎氏から 「私にも電話があった」 

 

 高市さんが前回の総裁選に出られたのは、安倍元総理の応援のおかげでした。安倍さんは私のところにまで、「鈴木さん、投票してくれる自民党議員は誰かいないか」と電話をかけてきたくらいです。高市さんの人気が今回も高い理由は、「こういう日本にするんだ」という決意が、めりはりの利いた演説に表れているからでしょう。 

 

 ――真っ先に手を挙げた小林鷹之さんは? 

 

 彼は、総裁選への立候補を表明した記者会見で、経験不足がもろに出てしまった。あの会見に立ち会った24人の国会議員の中に、裏金をもらった議員が少なくとも7人いました。国民を軽く見ちゃいけません。 

 

 あの時「裏金議員は来ないでくれ」と止めておけば、小林さんのイメージは変わったはずです。その後、その7人が推薦人に誰も入っていないのは、慌てて隠したんでしょうな。 

 

 ――石破さんと人気で1、2を争うのが、小泉進次郎さんです。  

 

 出馬を決めてから、私にも電話がありましたよ。人として幅があるし、聞く耳を持っていますね。これからが楽しみです。 

 

● 生き別れの実母と会って 人間としての深みを増した 

 

 進次郎さんは、今年、生き別れの実母と初めて会ったと告白し、一部からは「お涙頂戴か」などと批判の声も上がりましたが、人間としての成長を感じます。 

 

 2002年に私は受託収賄容疑で東京地検特捜部に起訴されました。網走にある島田建設から現金600万円の賄賂を受け取ったという容疑です。実態はすでに明らかにされていますが、島田建設が検察から不当な取り調べを受けて、事実と異なる供述調書に無理やりサインをさせられたんです。 

 

 そしたら、島田社長がもう寝たきりになってしまった。自分が検察に誘導されて、鈴木宗男に不利なことを言ってしまって申し訳ないという思いでね、病気になってしまったんです。 

 

 2007年に私の母が亡くなった時、島田社長の奥さんが帯広にある私の家まで来るわけですよ。秘書が、家の周りをずっとウロウロしている女性がいるというので、女房が外へ行ってみたら、島田社長の奥さんなんです。おわびをしたいけれど、申し訳ないという思いで、家に入れないでいたわけですよ。 

 

 うちの女房が、奥さん、どうぞどうぞ、気にしないで入ってください、と家に入れたら、奥さんが号泣したんですね。顔を出せる立場ではありません、と。ただもう主人が悔やんで今、病気になっていますって、言ってくれたんです。人間、そういうものなんですね。筋を通すというのは本当に難しいこと。だから進次郎さんが43年間会うことのなかったお母さんに会ったというのは、人間としての深みを増したと思うんです。 

 

 ――進次郎氏は、世論調査では失速しているとも報じられています。 

 

 

● 仮に総理になるなら 良い参謀が必要 

 

 9月12日の告示の後、各地での公開討論会が始まってから失速が報じられていますが、経験不足が露呈してしまった。初当選からまだ15年ですから、経験が必要です。 

 

 仮に総理になるなら良い参謀が必要です。安倍政権が長く続いた背景には、菅さんという名官房長官がいました。安倍総理自身、いみじくも言いましたね。「やっぱり、官房長官がしっかりしているかどうか」だと。 

 

 ――では次の総理として、誰が最適だとお考えですか。 

 

 日本の現状を考えたら、茂木敏充さんが一番だと思います。政策の決定権者たる政調会長を務め、現在は幹事長です。内閣では、外務大臣や経済産業大臣もやりました。能力も経験も、申し分ありません。 

 

 ――世論調査だと茂木さんの人気は下位ですから、意外です。 

 

 人を褒めないトランプさんが「タフネゴシエーターだ」と唯一褒めた政治家が、茂木さんです。政治家として覚悟を持った人です。残念ながら、彼の能力をみんな知らないんですよ。 

 

 残念ながら、知名度が足りない。3年も幹事長をやっているのに、積極的にメディアに出るべきだったのに出なかったことが表れています。仕事をさせたら一番だと思うのですが。 

 

 小泉さんへの期待感がありますが、経験のない分、茂木さんや加藤勝信さんを登用すると安定感が出てくることでしょう。 

 

● 誰でもそれなりの能力がある それをうまく引き出せるか 

 

 ――総理大臣に求められる資質とは? 

 

 政治家は山賊、海賊の集まりです。「俺が、俺が」と思っている人ばかりですから、「我(が)」の世界です。特に自民党の政治家は大半が、一度は総理になりたいと思っているでしょう。誰でもなれるものじゃない、ということが分からないからです。 

 

 そんな「我」の世界をまとめ上げるには、人一倍の人間力、広い心、情、思いやり、信念を持ち、腹が据わっていることが必要です。自分の考えに合わない人を遠ざけるようではいけません。何万もの有権者に名前を書いてもらって国会へ出て来ている人なら、誰でもそれなりの能力があるものです。それをうまく引き出して使うのが、リーダーの大切な要件です。 

 

鈴木宗男 

 

 

 
 

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