( 215797 ) 2024/09/27 01:18:18 0 00 左から小泉進次郎氏、高市早苗氏、石破茂氏
いよいよ明日に迫った自民党総裁選。各メディアの情勢調査では、高市早苗経済安保相、石破茂元防衛相、小泉進次郎元環境相の3つどもえとされるが、誰が抜け出すのかは全く予測ができない。そんな中、立憲民主党は23日、野田佳彦元首相を新代表に選出した。野党第1党の党首として野田氏が最も「相手にしやすい候補」は3人のうち誰なのか。野田グループの関係者や立憲民主党議員らを取材した。
【写真】立憲議員が「相手にしやすい」と語る総裁候補はこちら
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「リベラルに寄りすぎていた立憲民主党を中道保守の政党に振り切るために、立憲の党員・協力党員や議員らが総力を挙げて野田さんを代表に選出したんです。穏健な保守を支持層に取り込みたい野田さんとしては、自民党総裁選の有力候補3人の中では、石破さんの考えが一番近い。その意味では、手ごわい相手だとも言えるし、裏を返せばやりやすい。政策で意見交換しやすい相手でもあると思います」
代表戦で野田氏を支持した立憲関係者はこう語る。
野田氏と石破氏はどちらも1957年生まれの67歳。政治家として、浅からぬ縁もあるようだ。
石破氏は1993年、自民党を一度離党し、小沢一郎氏が率いる新生党に加わった。その後、小沢氏とともに新進党の結党にも参加したが離党。97年に自民党に復帰した経緯がある。一方、野田氏も新進党の結党に参加したが96年に離党し、98年に民主党に入党した。
新進党の結党に参加した過去も含め、政治的スタンスは決して遠くない。前出の立憲関係者は言う。
「かつては石破さんの政治的スタンスは野党だったわけだから、今でもわりとリベラルなところがある。野党としては戦いにくくもありますが、石破さんが首相となれば、自民党の内部でゴタゴタが生じるかもしれない。たとえば、総選挙で裏金議員を本当に非公認にすれば、党内でかなりハレーションが起こることは容易に想像できます」
別の立憲関係者はこう指摘する。
「石破さんはこれまで何度も総裁選に挑戦してダメだった。国会議員に嫌われていると言われている中で、ここで総裁になれば、自民党的は変わったと示せるかもしれません。ただし、石破さんは自民党の中でも国会議員の味方が少ないので、首相になったとしても、政権運営はかなり難航すると思います」
■「石破さんのもとで自民党が割れれば…」
日本テレビは22日、自民党の党員・党友を対象に総裁選で誰を投票するか電話調査したところ、石破氏が31%、高市氏が28%、進次郎氏が14%と報じた。進次郎氏は9月12日の同調査から5ポイント支持を減らした。終盤になって、進次郎氏は失速感があるようだ。
こうした情勢に危機感を感じたのか、進次郎氏は24日、麻生太郎自民党副総裁と約30分面会し、「力を貸してください」と支援を求めた。麻生派には国会議員54人が所属している。決選投票をにらんで議員票の上積みを期待し、逆転ホームランを狙っているようだ。
立憲の代表選で野田氏の推薦人になった伊藤俊輔衆院議員は「小泉氏が総裁選で勝利する可能性は、決選投票に残れれば、まだある」と話す。
「当初、自民党の幹部は、総裁選が終わったら予算委員会を開かずに、即解散という方針でした。小泉さんも即解散と公言していますから、そうなるのでしょう。おそらく支持率は新政権発足直後がピークなので、瞬間風速的に選挙になだれ込む。自民党内で“崖っぷち”にいる議員は自分の選挙を戦うのに、小泉さんが一番有利と考えるでしょうから、決選投票になれば票が動く可能性があります」
野田氏が得意な論戦に持ち込む前に即解散となれば、立憲にとってはあまり好ましくない展開だろう。
一方、石破氏は国会で争点を明確化してから解散という方針を示しているが、前出の立憲関係者はこちらの方がくみしやすいとみる。
「石破さんの場合は予算委員会を開いた後に解散ということになると思いますが、野田代表の元で国会論戦ができるとなれば、自民党をボコボコにできるかもしれない。そうしたら総選挙前に内閣支持率は下がるし、早期に自民党内部がバラバラになる可能性が出てくる」
そして、こんな仰天プランも口にする。
「万が一、石破さんのもとで自民党が割れて、立憲と組んで過半数が取れれば“連立”もナシではないでしょう。こちら側としては、石破総理となればいろいろと面白いと思いますけどね」(同)
■高市氏になれば「立憲の政策が際立つ」
では、終盤になって党員・党友の支持を伸ばしている高市氏はどうか。立憲の鈴木庸介衆院議員はこうみる。
「高市さんが総裁になると、こちらはやりやすい。高市さんは首相になっても靖国神社に参拝に行くでしょうし、中国、韓国を含む海外との外交でも強気一辺倒です。あの考え方で外交がうまくやっていけるとは思えません。そうなれば、立憲の現実的な政策が際立ちます」
自民党の中でもタカ派で知られる高市氏が首相となれば、立憲とは国会論戦でガチンコとなる場面が多くなりそうだ。前出の伊藤衆院議員はこう話す。
「高市さんの路線は、右派の自民党支持層から好まれる側面はあると思います。しかし、より数が多いであろう中間的な保守層は、野田さんの方が政策的に近く、選挙では幅広く票が取れることも考えられます。とはいえ、そこは選挙を戦ってみないとわからないですけどね」
高市氏が総裁選に勝利すれば、日本初の女性総理の誕生となる。
「高市さんが勝利すれば、アメリカ大統領選の結果も大きく影響しそうです。民主党候補のハリス副大統領が共和党候補のトランプ前大統領に勝った場合、日本初の女性総理と米国初の女性大統領の誕生という歴史的な節目となります。その流れで日米首脳会談が実現すれば、自民党の追い風になる。高市さんはそれを視野に入れていると思います」(前出・立憲関係者)
政治ジャーナリストの伊藤惇夫氏は「立憲にとっては高市氏が一番やりやすい」と話す。
「高市さんは自民党の中でもバリバリのタカ派で、裏金疑惑の総本山である旧安倍派をバックにしています。野田さんは保守中道を標榜していますから、自民党を支持している『ゆるやかな保守』の人たちと相性がいい。高市さんのやり方に疑問を持つ自民党支持層が立憲に流れこんでいく可能性があります。とはいえ、もちろん自民党もそれは警戒しているはずなので、あえて石破氏に投票する議員が出てくる可能性もあります」
■進次郎氏とは「論戦にならない」
次に立憲がやりやすい相手は進次郎氏だと伊藤氏は指摘する。
「論客で知られる野田さんと進次郎さんが討論している場面を想定してみてください。経験どころか、磨いてきた能力が全然違います。討論にならないのではないでしょうか。解散総選挙が早まればそれを隠せますから、進次郎氏が首相となれば、絶対に早期解散へと持ち込むはずです」
自民党内部の力学だけでなく、「対立憲」という構図でも、さまざまな思惑が交錯する総裁選になりそうだ。
(AERA dot.編集部・上田耕司)
上田耕司
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