( 216570 )  2024/09/29 02:25:18  
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イスラエル軍、ヒズボラ最高指導者を殺害 レバノン首都空爆で 

 

イスラエル国防軍(IDF)は28日、前日のレバノン・ベイルート南部ダヒエへの空爆で、レバノンを拠点とするイスラム教シーア派組織ヒズボラの指導者ハッサン・ナスララ師を殺害したと発表した。ヒズボラは同日、ナスララ師が死亡したと声明を出した。 

 

ヒズボラは「抵抗の指導者、正義のしもべが、主と共にいるために逝去した」と、ソーシャルメディア「テレグラム」で発表。「卑劣なシオニストが(ベイルート)南郊を急襲」したことが、ナスララ師死亡の原因だとしており、空爆で死亡したことを認めている様子。 

 

ヒズボラはさらに、イスラエルと戦い続け、引き続き「ガザとパレスチナを支援し、レバノンとその揺ぎなき高潔な人々を守り続ける」ことを「誓う」と述べた。 

 

IDF報道官のダニエル・ハガリ少将はこの直後にテレビ演説し、ナスララ師が「イスラエルにとって最大の敵のひとりだった」として、27日にイスラエル空軍がベイルートに対して行った「精密」攻撃で殺害したのだと説明した。 

 

ハガリ少将はさらに、イスラエル軍は現在レバノンにおいてヒズボラのインフラを攻撃しているのだと述べ、「我々の戦争はレバノンの人たち相手のものではない。我々の戦争はヒズボラ相手だ」と強調した。 

 

ヒズボラの声明に先立ちIDFは、「ハッサン・ナスララはもはや世界を恐怖に陥れることはできない」とソーシャルメディアに投稿していた。 

 

IDFは27日からベイルートに夜間攻撃を実施していた。同軍はこれについて、ナスララ師や複数のヒズボラ司令官を標的にしたものだと説明していた。 

 

■「標的を絞った攻撃」で殺害 

 

IDFの声明によると、ナスララ師のほかに、ヒズボラの南部戦線を指揮していたアリ・カラキ司令官など複数の幹部が殺害された。 

 

同軍は戦闘機を使ってヒズボラの中央司令部に「標的を絞った攻撃」を実施したと説明。ヒズボラの司令部は「ベイルート南部ダヒエの集合住宅の地下に設置されていた」としている。 

 

この空爆は、ヒズボラの「上級指揮系統」が同組織の拠点となっているダヒエ郊外で活動している最中に行われたと、IDFは付け加えた。 

 

IDFトップのヘルジ・ハレヴィ参謀総長は動画メッセージを公開し、「イスラエル市民を脅かす者が誰であれ、北部にいようが南部にいようが、あるいはもっと遠くにいようが、我々は(彼らを)捕まえる方法を知っている」と述べた。 

 

また、IDFは「多くの準備を終えて、ついに」レバノンでナスララ師とヒズボラ司令部を攻撃目標とする計画を「発動」したとした。 

 

「適切なタイミングで、非常に正確な方法で行った」、「これが我々の『道具箱』のすべてではないことを、非常に明確にしておく必要がある。我々には今後に向けて、さらに攻撃力を備えている」と、参謀総長は述べた。 

 

■イラン指導者、ヒズボラを支援し共に立ち上がると 

 

イランの最高指導者アヤトラ・アリ・ハメネイ師は、イスラエルがハマス指導者を殺害したと発表した後に声明を出した。 

 

ヒズボラは長年にわたり、イランから資金面と軍事面で強力な支援を受けている。 

 

ハメネイ師は声明の中で、「レバノンの無防備な人々」が殺害されていることを非難し、イスラエルの「指導者たちの近視眼的で愚かな政策を証明」するものだと述べた。 

 

そして、イスラエルの「犯罪者たちは、レバノン国内のヒズボラの拠点に大きな損害を与えるには、自分たちがあまりにも小さな存在であることを知らなければならない」と付け加えた。「この地域の抵抗勢力はヒズボラを支持し、ヒズボラと共に立ち上がる」。 

 

ハメネイ師はすべてのイスラム教徒に対し、レバノンの人々とヒズボラと共に立ち上がり、「不当な侵害を行う抑圧的な政権に立ち向かう」彼らを支持するよう求めた。 

 

ナスララ師への言及はなかった。 

 

■事態激化はイスラエルにとっては大勝利 

 

ジェレミー・ボウエンBBC国際編集長 

 

イスラエルでは、ナスララ師の殺害は大勝利と受け止められるだろう。 

 

もう30年以上、彼はヒズボラの中心で脈打つ心臓のような存在だった。最も近い関係にあるイラン国内の支持勢力に支えられ、ナスララ師はヒズボラを本格的な戦闘集団に作り上げた。そのためイスラエルは2000年、それまで20年続いたレバノン南部侵攻を終わらせなくてはならなかったほどだ。 

 

2006年にはヒズボラを率いて、イスラエル軍相手に戦況を膠着(こうちゃく)状態に追い込むまで戦った。 

 

イスラエルに敵対する一人の人間として、ナスララ師は最大級の存在だった。彼に匹敵はしないまでもそれに近いと言える存在は、近年ではかろうじて、昨年10月のイスラエル奇襲を計画したイスラム組織ハマスのヤヒヤ・シンワル氏くらいだった。 

 

同盟国アメリカの意向に反し、イスラエルは今回、国境周辺で1年近く続いた消耗戦を、ヒズボラ相手の戦いへと移行させた。 

 

イスラエルは2006年にヒズボラとの前回の戦争が終わって以来、練り上げてきた戦争計画を、この数週間で実行しているのだ。 

 

レバノンにおける自分たちの敵に、イスラエルは今回、巨大な痛手を与えた。指導者の殺害はまさに、対ヒズボラで過去最大の成果だ。 

 

ではヒズボラと、そしてイランが、次にどう反応するのか。それが今の疑問だ。強力に反撃しなければ、戦略的な敗北に直面することになると、ヒズボラとイランは今やそう結論しているかもしれない。 

 

中東情勢は不透明で危険だ。アメリカをはじめイスラエルを支援する西側諸国が、外交努力のために一時停戦を受け入れるよう、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相を説得できなかったのは、そのためだ。 

 

そして今ではもう遅すぎる。 

 

■戦火拡大のリスクが劇的に高まった   

 

フランク・ガードナーBBC安全保障担当編集委員 

 

中東での戦火拡大は避けられないわけではない。ただ、拡大する可能性はこの24時間で劇的に高まった。 

 

イスラエルの同盟国やパートナー国を含む12カ国・地域は25日、21日間の停戦を直ちに開始するよう求める声明を出した。これは、この紛争の温度を下げて、中東全域に拡大するリスクを軽減するためのものだった。 

 

しかし、イスラエルがヒズボラを追いつめ、どんな犠牲を払ってでも優位に立つ決意でいることは明らかだ。 

 

そこで今、重要なのはイランがどう動くかだ。 

 

ヒズボラもイランも、イスラエルの都市にミサイルを撃ち込めば、ほぼ間違いなく二つの事態を招くと承知している。一つは、イスラエルによるイランへの激しい報復攻撃。そしてもう一つは、巡航ミサイルを装備した軍艦を沖合に配備している、アメリカが参戦し得る事態だ。 

 

イラクやシリア、イエメンで、イランの後ろ盾を受ける民兵がますます関与を高める可能性もある。 

 

各国の外交官は事態の沈静化に全力を尽くすだろう。しかし、現在のイスラエルは、自国民に脅威をもたらすヒズボラは消滅させるのだと、そう決意を固めているようだ。 

 

(英語記事 Israeli military says Hezbollah leader Hassan Nasrallah killed in overnight strike on Beirut) 

 

(c) BBC News 

 

 

 
 

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