( 216745 ) 2024/09/29 17:39:39 0 00 かつて1日10缶もストロング系飲料を飲んでいた筆者。アルコール依存症と診断された後は一滴も酒を飲まない生活を続けていますが、断酒したことで、体には新たな"異変"が起きることになったといいます(筆者撮影)
前回の記事(「ストロング系」毎日10缶飲んでた男の驚きの出費 「さすがに、詰んでるな…」計算して天を仰いだ)では筆者がかつて毎日10缶、ストロング系缶チューハイ(以下、ストロング系)を飲んでいたこと、その数年後には健康診断で「γ-GTP 2410(通常は40~60)」という数字が出たことをお伝えした。まだ、30歳にもなっていないのだから、ロクでもない話だ。
【画像5枚】酒断ちに成功も、身体は新たな“依存先”を探して
そして、医者にアルコール依存症と診断されて以降、一滴も酒を口にしなくなった筆者だが、だからといって健康的な生活を送れているわけではない。断酒したことで、体が他に依存対象を求めたのだろうか。異常なまでに糖分を摂取したくなってしまうようになったのだ。
■散財癖のおかげで、暴食は防げた学生時代
改めて振り返ると、学生時代、親に学費も家賃も払ってもらっていたが、バイト代が入れば古本、CD、レコードに溶かしていた。それでも、毎晩レンタルDVDをTSUTAYAで借りて見たいし、もっとiTunesに音楽を保存したい。
そこで、食費を削ることにした。朝起きたら講義の始まる30分前のため、朝食なんて食べる暇なく大慌てで大学に行き、昼は学食か売店で300~500円程度の弁当を食べる。十分安いがそれでも節約したいときは、自宅から炊いて冷凍したご飯を持ってきて、それをサークル室のレンジで温めて、コンビニのホットスナックコーナーの揚げ物をおかずに食べていた。しかし、さすがに後輩たちから哀れみの目で見られたため、おにぎりとフライドチキンを食べるようにした。それで、300円以下だ。
【画像5枚】「中島らもや吾妻ひでおの本に書いてあった通りだ!」 ストロング系を毎日10缶飲んでいた筆者。幸いにも断酒に成功するが、身体は新たな“依存先”を探して…
そして、晩は可能な限り深夜に食べる。というのも、夜遅くに食べてすぐに寝ることで、体内での食べ物の消化のスピードが遅くなるのか、日中空腹感に襲われることがないのだ。そこで、夜はカップラーメンやコンビニやオリジンで500円以下の弁当(当時は結構あった)をアルコール度数37.5%のウォッカで流し込むようにしていた。
当然、体に悪そうなことをしている自覚はあったが、それでも金がないので深夜の食事にすべてを託していた。食費を削ればもっと本が読めるし、見たことのない映画も見れるし、新しいバンドを発見できる……。サブスクリプションサービスがない時代は、とにかく能動的にインプットすることが重要だったのだ。食事は二の次で、すでに健康的とは言えない食生活だったが、良くも悪くも筆者の散財癖のおかげで暴食は防げた。
■社会人になり、ストレスの吐け口が「食事と飲酒」に
しかし、社会人になると、あまりの忙しさに、古本・レコード・CD収集、レンタルDVD鑑賞ができなくなってしまった。こうなってしまうと、もう趣味は酒と飯しかない。しかも、学生時代よりも多少は実入りが良くなったので、一晩に食べる量も徐々に増えていった。
ストレスの吐け口が食事と飲酒しかなくなった時点で、今後の人生の道筋は考え直したほうがいいと思う。しかし、筆者は「忙しい」という焦燥感に駆られることで、アドレナリンが出ていたのか、仕事量がどんどん増えて土日も休みがなくなっても、「楽しい」と思えたのが運の尽き。「今を全力で生きる」を必死で実行したのである。そう威張っているが、その結果、社会人になって1年も経たないうちに、体重は30キロ増えた。
一体、どうすればそんなに太るのかというと、朝はギリギリまで寝て、朝食を取らずに家を出て、会社に着くと昼食を取る暇もなく、晩まで一生懸命働く、そして終電で家に帰ってようやく一段落ついたら、夕食の時間である。日付が変わってから初めて食事を取るのだから、これで太らないわけがない。
最寄りのコンビニを2軒回り、ストロング系を5缶購入。これだけでまず1000円。それに追加で、コンビニか牛丼屋の500円の弁当、それにプラスしてホットスナックコーナーのフライドチキンや、ツナマヨのおにぎりかツナマヨのサンドウィッチ(晩ご飯用)を購入するため、毎日だいたい2200円くらいは食費に費やしていた。つまり、毎月の食費は6万6000円である。
「食費にいくらかけているんだよ!」という気持ちはわかるが、当時は一気にそれらを口に頬張りながら、喉に詰まった食べ物をストロング系で、胃に洗い流すことくらいしか楽しみがなかったのだ。
やがて、近所に松のやができたので、そうすると毎晩カツ丼かトンカツ定食のテイクアウトだ。そこに酒のつまみとして、しば漬け、横浜家系ラーメンのテーブルに置いてあるようなきゅうりの漬物、ニンニク醤油漬けなど、血糖値が上がりそうな漬物までも食べるようになったため、いよいよ1日の食費は3000円を超えるようになった。
当時はコロナ禍だったため、これといった飲み会がないにもかかわらず、ひとりで飲み食いして9万円なのだから、さすがに使いすぎた。給料の半分が酒と飯で消える。体重もクレジットカードの負債も増えていくのだが、見ないようにしていた。
しかし、同時に「これだけ飯を食っているのであれば、アルコール依存症ではなさそうだな」という、今考えると荒唐無稽な見立てをしていた。というのも、アルコール依存症になると連続飲酒状態が続き、食事よりも酒を優先して、痩せこけると思っていたからだ。
■断酒後の食生活はこんなふうに変わった
しかし、いくら酒をがぶ飲みしても、食べている量が量なので、痩せることはなく、年齢を重ねていくと、新陳代謝も低下して運動しても痩せにくくなる。
その結果、前編で書いた通り、酒の飲みすぎで肝臓値の値であるγ-GTPの値が「2410」という大台を叩き出した。町にいる「酒飲み」を自称するおじさんでも、彼らの数値は「400」程度らしいので、会話の次元が違う。
ちなみに、γ-GTPの値が「2410」と診断された際、実は血糖値の値である「HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)」も6.0%を超えていた。この数字が何を意味するかというと、「糖尿病予備軍」になってしまったということである。糖尿病と診断されるのは6.5%からなので、もう少しで丸々としたお腹にインスリン注射である(ここまで読んでいてわかると思うが、筆者は球体みたいな体をしている)。
そこで、まずは強制的に酒はやめさせられた。正直、自分でも「誰かに止めてもらわないと……」と思っていたので「助かった」と思った。自分ひとりの力で減酒や禁酒、断酒はできないのである。家族や友人たちのサポートが必要になる。
すると、1カ月でγ-GTPはすぐに200程度に戻った。同時にストロング系の人工甘味料を飲まなくなったからか、暴食はやめて、可能な限り1日3食取るようにしたところ、HbA1cも途端に5.5%に戻った。大体のことは酒をやめればなんとかなる。
また、「レグテクト」という飲酒欲求を抑える薬を処方されたおかげか、8年近く夜になるととどまることを知らなかった「早く泥酔して失神するように眠りたい」という願望もなくなった。
■現在、忘年会や宅飲みをするときは…
ただ、それを処方されたのも半年程度なので、今は自分の思いで飲酒欲求は抑えている。周囲からは「えらい、えらい」と褒めてもらえるのだが、最近は飲みたいという気持ちも復活しつつある。
筆者が飲まなくなってから登場した、アサヒビールの「マルエフ」、サントリーの「翠ジンソーダ」、リニューアルした「-196ストロングゼロ」のCMを見ると心が揺らぐ。これが昔みたいに「ゴクゴク……ぷはぁ!」などと音声を入れられていたら耐えられなかっただろう。「アルコール健康障害対策基本法」の賜物だ。普通の人にしてみれば、「だから、なんだ?」と思われるかもしれないが、あの音がどれだけ、アルコール依存症患者にとって危険なのか身に染みてわかるようになった。
さらに、コンビニに行ってもコカ・コーラの「ジャックダニエル&コカ・コーラ」やアサヒビールの「未来のレモンサワー」がある。飲んでみたいが、ちょっとでもアルコールを口にすると、一気に結界と覚悟が崩れてしまい、スリップ(断酒失敗)してしまうことは十分わかっている。
その飲酒欲求に打ち勝つため、会社での忘年会や宅飲みをするときは、自分が飲んでみたい酒を大量に購入していく。それをタダで飲んでもらい、相手が酔っていく姿を見ているときに「あぁ、楽しそうだな……」と喜びを感じるのだ。懐かしさと一抹のセンチメンタルさを味わいながら、自分専用として購入したノンアルコールビールを6缶すべて飲み干す。
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