( 217426 )  2024/10/01 16:26:05  
00

10月1日から始まる新型コロナワクチンの新しい枠組みについて取り上げます(写真:EKAKI/PIXTA) 

 

 新型コロナウイルスワクチン(以下、ワクチン)の接種が、10月1日から新たな枠組みで始まる。「定期接種B類」という位置づけで、重症化予防が目的だ。対象となる人や費用、メリット・リスクについてまとめた。 

 

【表で見る】3種類のワクチンの特徴まとめ 

 

■コロナはただの風邪じゃない?  

 

 「新型コロナは『軽い感染症』になったと認識されていますが、高齢者では今もなお重症化しやすく、入院、死亡のリスクも依然としてあります。ウイルスの変異とともに、2回、3回と感染する人も出てきています」 

 

 鹿児島大学微生物学教授の西順一郎さんはこう解説する。 

 

 厚生労働省のまとめでは、2023年5月8日の5類移行後に「波」は3回あった。それぞれピーク時1週間の感染者数(定点医療機関からの報告数)は減少しているが、入院患者数はむしろ増えている。例えば、2024年の初め(第10波)は3500人ほどだったが、7~8月(第11波)は4500人程度だ。 

 

【図で見る】10月1日から始まる「新型コロナウイルスワクチン」の定期接種、誰がどう接種すればいいのか?  

 

 「オミクロン株のなかで病原性が高まっていないのは確かですが、5類移行後の1年間で2万9000人が死亡している。特に高齢者にとってはインフルエンザ以上に負担が大きいといえます。小児は重症化しにくいとはいえ、2023年は15歳未満で44人が死亡しています」(西さん) 

 

 重症化だけでなく、疲労・倦怠感や集中力低下といった罹患後症状(後遺症)に悩まされる人もいる。 

 

 とにかく、「この病気には、かからないほうがいい。どうやって自分を守るか、重症化や発症予防の選択肢の1つにワクチンがある」(東京大学医科学研究所附属病院感染免疫内科教授の四柳宏さん)ということだ。 

 

■2つの条件できまる接種対象者 

 

 そうしたなか、この秋から新たな枠組みでのワクチン接種が始まる。 

 

 従来の法的位置づけは、蔓延予防に緊急に必要な「特例臨時接種」だったが、今年4月から個人の発症・重症化予防に比重を置いた「定期接種B類疾病」に移行していた。この類型では接種は努力義務ではなく、自治体による勧奨もない。対象者は次のような人で、接種は1回だ。 

 

・65歳以上 

・60~64歳で心臓、腎臓、呼吸器の機能の障害、またはHIV(ヒト免疫不全ウイルス)による免疫の機能の障害がある 

 

 

 使用するワクチンは、メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチン3種類と、組み換えタンパクワクチン、そしてmRNAレプリコンワクチンの計5種類。合わせて約3224万回分の供給が予定されている。 

 

 費用は、厚労省が1万5300円程度と公表する接種費用のうち8300円を国が助成し、残りの7000円は自己負担。さらに、その一部を自治体が補助し、自己負担を3000~4000円程度に抑える動きが相次いでいる。 

 

 自分の住む地域の状況については、自治体のウェブサイトなどでチェックするほか、役所の専門部署に電話などで問い合わせを。かかりつけ医がいる場合は、その医療機関に相談してもいいだろう。 

 

 では、5種類のワクチンのどれを接種するのがよいのか。 

 

 「種類によって効果が劣ることはないです。『今まで感染しなかったので、次も同じものを選ぶ』、『発熱や倦怠感などの副反応にこりたので、違う種類を選ぶ』という考え方でもいいでしょう。新しいワクチンもあるので、それも含めて検討を」(西さん) 

 

 接種は努力義務ではないので、今回は見送るという選択肢もある。 

 

■5種類のワクチンの特徴は?  

 

 5種類のワクチンの特徴は次の通り(外部配信先では閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)。 

 

 自分が希望するワクチンが、接種先の医療機関で採用されているか、自治体や医療機関のウェブサイトなどで情報を入手しておく必要がありそうだ。医療機関選びを優先し、そこで受けられる種類のワクチンを接種するのもよいだろう。 

 

 接種する時期は、「できれば10月中、遅くとも11月までに打つのが望ましい」と西さん。多くの人は前回の接種から1年程度が経過し、抗体の量が低下していると予想される。 

 

 なお、医師が必要と認めた場合、インフルエンザなど他のワクチンとの同時接種が可能だ。 

 

 先に挙げた定期接種の要件に該当しない人、例えば60歳未満の人は「任意接種」という位置づけで、文字通り、1人ひとりが効果、副反応、費用などを考慮して、受けるかどうかを判断することになる。 

 

 費用は医療機関が独自に定め、全額自己負担。厚労省が公表する「1万5300円程度」が目安になりそうだ。ワクチン接種についての考え方について、以下にまとめた。参考にしてほしい。 

 

■接種が望ましい人は? 子どもは?  

 

 西さんによると、特に接種が望ましいのは、コロナが重症化しやすい基礎疾患がある人。 

 

 

 「呼吸器、心臓、腎臓などの慢性疾患を持つ人は、かかりつけ医や信頼できる医師に相談してみてはどうでしょう」とアドバイスする。基礎疾患がある人や高齢者と同居している人、医療従事者、高齢者施設の職員にも接種が勧められるという。 

 

 小さな子どもはワクチン未接種であり、新型コロナに対して無防備と考えられる。重症化予防が必要なグループだといってよいだろう。「ワクチンで防げる病気はワクチンで防ぐのが基本です」と西さんは指摘する。 

 

 mRNAワクチン(一部製品)は生後6カ月なら接種が可能なので、こちらもかかりつけ医に相談してみるといいかもしれない。 

 

 2021年2月に医療従事者へのワクチン接種が始まってから3年8カ月。「ワクチンの効果は日本でも世界でも明らかです」(西さん)。 

 

 例えば、2023年10月から2024年3月までに国内で行われた研究で、オミクロン(XBB.1.5)対応ワクチンを接種した60歳以上の人は、そうでない人と比べて入院率が半分程度ですんだと報告されている。 

 

■ワクチン接種の安全性は?  

 

 コロナ後遺症については海外の研究のまとめで、ワクチンを2回接種した人は、打っていない人に比べて発現率が43%低かった。 

 

 一方、副反応には、注射部位の反応(痛み、腫れ、赤みなど)や、全身的な反応(発熱、疲労、倦怠感、頭痛、筋肉痛、関節痛など)がある。 

 

 重大な副反応としては、アナフィラキシー(急激なアレルギー反応)、心筋炎・心膜炎(心臓を包む膜に起きる炎症)があり、直近の発現頻度は100万回接種あたり1回未満となっている。mRNAワクチンとギラン・バレー症候群(神経の障害で急に手足に力が入らなくなる病気)との関連も報告されている。 

 

 ワクチン接種後の死亡例も、因果関係の有無を問わず報告されているが、国内外の研究でmRNAワクチン接種後の死亡リスクの上昇は認められていない。 

 

 こうした知見から、直近の厚生労働省の審議会(7月29日)では「安全性に係る新たな懸念は認められず、現時点において、ワクチン接種によるベネフィットがリスクを上回る」とされた。 

 

 ただし、副反応による健康被害はゼロでないことから、救済制度がある。医療費自己負担分の給付に加え、月額3万円台の医療手当などが受けられる。当事者が市町村に申請し(定期接種の場合)、厚労省の審査会での第三者審査を経て厚生労働大臣が認定する。 

 

 

 副反応が疑われる症状があれば、まずは接種を受けた医療機関、かかりつけ医などに相談したい。 

 

 コロナウイルスは変異を繰り返すたびに免疫を逃れる力を増し、感染力が高まる可能性がある。一般的にウイルスが変異すると、それまでのワクチンは効果が落ちるため、マイナーチェンジしたワクチンが作られる。 

 

 現在は、世界的にオミクロン株のJN.1系統から派生したKP.3系統が主体で、国内でも大多数を占めている(国立感染症研究所、9月18日時点)。 

 

 今回、定期接種が始まるJN.1系統対応のワクチンで、KP.3系統にもウイルスを中和する抗体が作られることは動物実験で確認ずみ。人で臨床試験を行わなくても、効果を予見できるとして承認されている。 

 

■コロナはいつまで続くのか?  

 

 それにしても、コロナはいつまで続くのか。 

 

 「本当のところは誰もわからないが、これから先、新型コロナウイルスがまったくなくなることはないだろう」(四柳さん)。西さんも、「年に2~3回程度の流行は、まだ数年続くかもしれません」と見る。 

 

 すると、来年秋以降もコロナワクチンを接種することになるのだろうか。 

 

 「重症化予防効果が半年~1年で弱まっていくことを考えると、供給量や定期接種などの枠組みはともかく、年1回秋に、そのときに流行する変異株に対応したワクチンを接種するのがよいといえます」と西さん。 

 

 その上で、「それとは別に、高齢者や医療従事者は夏季の流行に備えて5~6月にも接種し、年2回とすることも考えられます」と話す。 

 

佐賀 健 :メディカルライター 

 

 

 
 

IMAGE