( 218201 ) 2024/10/03 16:53:43 0 00 (ブルームバーグ): 石破茂首相の利上げに慎重な発言を受けて、市場では日本銀行による年内の利上げ観測が後退している。金融政策の正常化を進める日銀に政治の逆風という悩ましい要素が加わった。
石破首相は2日、植田和男日銀総裁と会談後、政策金利の引き上げに関して「政府としてあれこれ指図をする立場ではない」としながらも、「個人的には現在そのような環境にあるとは思っていない。追加の利上げをするような環境にあるとは考えていない」と記者団に語った。
市場では石破首相が日銀の独立性を尊重するとみられていただけに、今回の発言を受けて円安が急速に進んでいる。衆院選をにらんだハト派的な発言との指摘もあるが、一段の円安は輸入物価の上昇を通じた消費者物価の押し上げ要因となり、政府の物価高対策と矛盾する。日銀は円安に伴う物価上振れリスクの高まりも理由に7月に利上げしており、今後の金融政策運営は難しい状況に直面する可能性がある。
首相発言の狙いについて、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の六車治美チーフ債券ストラテジストは、27日投開票を表明している総選挙をにらんだものとみている。年内に利上げするのは政治的時間が短い上に国民からの理解を得るのも困難であるとし、想定している12月会合での追加利上げの確度はやや低下したのではないかと述べた。
先月27日の自民党総裁で石破氏が選出された後、1ドル=141円台に上昇した円相場は、3日に一時1カ月ぶりの147円台まで売り戻された。
石破内閣の支持率は岸田内閣発足時を軒並み下回った。報道各社の世論調査では共同通信が50.7%、日本経済新聞が51%、読売新聞が51%など。共同通信によると、調査手法が異なるため単純比較はできないが、最近の内閣発足時の支持率は2021年10月の岸田内閣が55.7%、20年9月の菅内閣が66.4%、12年12月の第2次安倍内閣が62.0%だった。
石破内閣支持率、岸田政権の発足時下回る-各社世論調査
みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは3日付リポートで、近年の内閣と比べ支持率が低いスタートとなったことを背景に、 石破首相が衆院選に向けて日銀の早期追加利上げ観測をけん制して円安や株高を促すことは「窮余の一策という面もある」と指摘。その上で、「日銀が年内といった早期に追加利上げに動く可能性は、政治の面から明らかに低下した」としている。
ブルームバーグが9月会合前の同月6-11日に実施したエコノミスト調査では、日銀の追加利上げの時期は12月会合の53%が最も多く、10月の15%と合わせた年内の予想は7割弱を占めていた。19%は来年1月を予想した。
植田総裁は2日の首相との会談後、金融政策運営について「極めて緩和的な状態でわが国経済をしっかり支えていく」との考えを表明。経済・物価が日銀の見通し通りに実現し、見通しに沿って経済が動けば「金融緩和度合いを調整していくことになるが、本当にそうかどうかを見極めるための時間は十分ある」と述べた。9月の記者会見での発言内容から「変化はない」とも説明した。
林芳正官房長官は3日午前の記者会見で、石破首相は金融政策の具体的手法は日銀に委ねられる方針だと承知していると語った。石破首相と植田総裁の会談では、「市場の動向を緊張感を持ち、冷静に注視していくとともに、市場とも丁寧にコミュニケーションをとっていくため、互いに緊密に連携していくことを確認した」と述べた。
(c)2024 Bloomberg L.P.
Sumio Ito, Yui Hasebe
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