( 219296 )  2024/10/06 16:53:37  
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川崎駅前の巨大商業施設、ラゾーナ川崎へ。川崎と言えば「治安が悪い街」というイメージがあるが、フードコートはというと…(筆者撮影) 

 

時にレストランであり、喫茶店であり、高齢者の集会所にもなる「フードコート」。その姿は雲のように移り変わりが激しく、楽しみ方は無限大。例えるなら「市井の人々のオアシス」だ。 

本連載では、そんな摩訶不思議・千変万化な「フードコート」を巡り、記録しながら、魅力や楽しみ方を提唱していく。 

 

【画像33枚】「ラゾーナ川崎」内フードコートはこんな感じ 

 

■「治安が悪い」イメージが先行する街・川崎 

 

 今回は、神奈川県川崎市にある商業施設「ラゾーナ川崎」内のフードコート「ダイニング・セレクション」を訪問する。 

 

 さて、川崎市といえば神奈川県下で横浜市に続く第2の都市として知られ、かつ都道府県庁所在地ではない自治体としては唯一、人口が100万人を超えるマンモス自治体だ。 

 

 そんな川崎市に対して、どんなイメージを持っているだろうか。あくまで個人的な意見として、筆者は「怖い」という認識がある。特にこのラゾーナ川崎がある川崎駅周辺は、いわゆる飲み屋街が広がり、かつ夜の店も多い。ちょっと足を延ばすと川崎競馬場があるなど、結構ガラの悪い印象を持っていた。 

 

【画像33枚】「治安が悪い」イメージのある川崎。中心地にある「ラゾーナ川崎」内にあるフードコートで見た”驚きの光景” 

 

 実際、川崎市が発表している「川崎市都市イメージ調査」の2023年版によると、隣接都市居住者からのイメージとして最も回答が集まったのは「治安が悪い」で42.3%。全回答項目のうち、唯一4割を超えた。1都3県居住者の回答でも「治安が悪い」がトップで、こちらも唯一の3割超えである。 

 

 ちなみに川崎市は政令指定都市であり、市内には7つの行政区がある。そして「川崎区」「幸区」「宮前区」など、いずれの区もユニークな名前を持つ。つまり、他の自治体に同じ名前を持つ区がない。この辺りにも「キラキラネーム」的な雰囲気を感じるのは、筆者だけだろうか。 

 

■恐る恐る訪れた川崎駅の雰囲気は… 

 

 そんなイメージを持ちながら、恐る恐る川崎駅へ。この辺りには、JR川崎駅と京急川崎駅の2駅があり、直接つながってはいない。私が利用したのはJR川崎駅で、まず改札を出て感じたこととして、とにかく人が多い。さすが、100万人都市である。 

 

 今のところ、恐れていたような剣呑な雰囲気はまったくない。飲んだくれやヤンキーがうろうろしているとかではなく、老若男女問わず――まあ若者が多いのだが――いろんな人が行き交っている。何だ、ビビり過ぎていたか。意外と大丈夫そうだ。お腹を空かせるため、まずは東口を歩いてみよう。 

 

 

 東口の空中歩道から街を眺める。高架になっている京急の線路がまず目につき、その奥には繁華街が広がっている。ビルの屋上広告にギラついたイラストとともに書かれた「カプセルサウナ」の文字が目立ち、その奥にある同様の広告には「男には帰れない夜がある」と書いてあるのは意味深である。 

 

 それはそれとして、ちょっと歩くとまずぶつかったのが「ラ チッタデッラ」。イタリアのヒルタウンをモチーフにしたという、映画館「チネチッタ」を中心とした複合商業施設である。 

 

 実は川崎は映画の街でもあり、戦前からいくつもの映画館が営業していた。太平洋戦争下の空襲で映画館街は全焼したものの、見事に復活を果たし現在は「TOHOシネマズ川崎」「109シネマズ川崎」なども営業している。 

 

 川崎的なイメージとは一線を画したおしゃれなエリアとなっているラ チッタデッラだが、道を1本隔てると、渋い飲食店が並んでいるのは面白い。さらにもう1本隔てると、先ほどの雰囲気を微塵も感じさせない路地もある。 

 

 より川崎らしい雰囲気を感じたのは「川崎銀柳街」や「川崎駅前仲見世通商店街」といった商店街である。色とりどりの看板と飲食店が多く立ち並び、昼からやっている居酒屋も賑わっている。 

 

 まあ、全体として危惧していたような危険を感じることはない。とはいえ川崎市の昼夜人口比率(夜間人口100人当たりの昼間人口)は87.3で、まさに「夜の街」。あくまで昼間は、の話で夜はどうかはわからない。 

 

■神奈川都民を意識?  フードコートも東京の店が多め 

 

 このままだと昼飲みの誘惑に負けてしまいそうなので、駅を越えて西口のラゾーナ川崎へ。ちなみに駅を境に先ほどまでの東側が川崎区、西側は幸区と分かれている。やはり区が変わるせいか、西口はすぐ東芝のビルがあったり、コンサートホールの「ミューザ川崎」があったりと、東口とは違う雰囲気を感じる。 

 

 今回の目的地、ダイニング・セレクションはラゾーナ川崎の1階にある。まず驚いたのは、真横に書店があること。だいたいフードコートは独立した一角にあることが多いにもかかわらず、書店の真横にあるのは面白い。まさかオマージュしているわけではあるまいが、先ほどのラ チッタデッラと激渋飲食店の並びを思い出す。 

 

 

 フロアマップからどんな店があるかをリサーチし、入り口にあるメニューサンプルを眺める。大きめのフードコートのほとんどが設置しているもので、フードコートへ足を踏み入れる前からワクワク感を高めてくれる最強のスターターである。 

 

 有名どころのチェーンとしては「ケンタッキーフライドチキン」と「È PRONTO」くらいか。この規模になると、その地域らしい店やメニューの一つがあるものだが、ざっと見ても見当たらない。 

 

 というか、東京の店が多い。日本橋に本店を構える天丼の「金子半之助」に「荻窪中華そば 春木屋」、さらに「洋食や 三代目 たいめいけん」など。先ほどの昼夜人口比率は、川崎に住んで日中は都内へ出勤する“神奈川都民”が多いことが大きな要因だろうが、フードコートにまで東京の波が押し寄せている、ということか。 

 

 せっかく川崎にいるのに東京を強く感じるラインナップに辟易してフードコートの中に入ると、また驚いた。先ほど見たラインナップに「二代目ぐるめ亭」という寿司店があるのは確認していたが、その店がデカデカと回転レーンを使ってイートインを展開しているのである。 

 

 この一角ばかりはフードコートではなく、回転寿司の店舗にしか見えない。 

 

 フードコートで回転寿司、気にはなる。しかしこれはただ回転寿司を食べるだけになってしまうので、心を鬼にして立ち去り、席を探す。修羅の街・川崎というイメージがなくなるくらいに、家族連れが多い。施設としてもファミリー層を取り込みたいのか、離乳食専用の電子レンジや調乳用の給湯器があった。 

 

 席も取れたので、何を食べようかとふらふら歩く。それにしても川崎、ひいては神奈川感がない。先ほど紹介した東京の店以外も「博多めんたい やまや食堂」に盛岡冷麺の「ぴょんぴょん舎 オンマーキッチン」。国外ではハワイを打ち出した「merengue」、カリフォルニア発の中華レストラン「PANDA EXPRESS」など。 

 

 

 川崎駅は都心部へのアクセスだけでなく、羽田空港へのアクセスもいい。そうした土地柄を意識して、画一的なチェーンではなく、各地、各国の店を誘致したと考えれば、それはそれで「川崎らしさ」かもしれない。 

 

■東京の名店を、川崎で味わう 

 

 今回選んだのは、たいめいけんと「白楽栗山製麺」。 

 

 たいめいけんは、ラーメンがフードコート初登場とのこと。あまりフードコートで目にしない店舗だが、調べると三井ショッピングパーク系列の施設に多く出店しているらしい。 

 

 栗山製麺は、旧東池袋大勝軒と六厘舎で修業した店主が手掛けているつけ麺店で「川崎初上陸」に目を引かれた。川崎から東京へと出ていく人が多い中、その逆で乗り込んできたのは面白い。 

 

 たいめいけんでは、ラーメンとハーフオムライスの「たいめいけんセット」を注文。意外と麺類メニューが充実していることに驚いた。栗山製麵では、オーソドックスにつけ麺を。 

 

 双方、そう時間がかからず提供された。東京産のメニューを川崎で食べる。特に何も考えなかったが、麺類×2にオムライスとは、結構ヘビーな組み合わせだ。あと、都内に住んでいるがたいめいけんって食べたことがない。東京の店を川崎で初めて食べるというのは不思議である。 

 

 麺が伸びないように、まずはたいめいけんのラーメンから。サヤエンドウが入っているのが珍しい。麺は柔らかめで、スープは非常にオーソドックスな醤油スープ……と思ったが、後味にインパクトがある。醤油の深みというか、苦みというか。一見すると変哲のないラーメンだが、結構クセがある。 

 

 オムライスは、バター感が結構ある。中のケチャップライスはそこまで癖がないので食べ進めやすい。ケチャップライスは非常にシンプルで、具はハムらしきものが少々見つかったが、それ以外には特になし。ストロングスタイルのケチャップ&ライスである。 

 

 つけ麺は、麺がもちもちで、スープは若干オイリー。具材は海苔とナルト、ネギと大ぶりのチャーシュー。ネギは刻み方が不安定で、細切れのものもあればやや大きめのものがあり、結構辛みが残っている。もったりしたスープにはこれくらい辛みがあったほうがいい。 

 

 なお、栗山製麵では店舗脇にスープ割用のポットがある。スタッフの方も非常ににこやかに接客していて、フードコートでありながら非常にサービスが行き届いていると感じた。 

 

 

 
 

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