( 219606 )  2024/10/07 15:44:56  
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就任早々、批判に晒される石破総理 

 

 専門家が「もはや炎上状態」と指摘するのも当然だろう。SNSなどネット上は荒れに荒れている。10月1日、石破茂氏は衆参両院の本会議で第102代の内閣総理大臣に指名された。夜に首相官邸で初の記者会見を行い、自身の内閣を「納得と共感内閣」と説明した。すると、たちまちXでは厳しい批判の声が殺到したのだ。 

 

【写真】「わぁ、こんなにきれいな人がこの世にいるのか!」 慶大時代、妻・佳子さんにひとめぼれしたという 

 

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 Xで「納得と共感」をキーワードに検索してみると、石破首相の政治姿勢に異議を唱える投稿が山のように表示される。その中から、ごく一部をご紹介しよう。 

 

《国会で十分議論せず、能登のための補正予算も組まずに衆議院を解散することや、裏金議員問題への対応に、納得も共感もできません》、《納得と共感を一夜にして裏切ったのは貴方でしょ》、《石破内閣はうそつきだ。これで納得だ共感だと言っている石破首相の気がしれない》、《根本が間違っているのに共感も納得も出来ないだろ》──。 

 

 石破首相の「納得と共感」というキャッチフレーズだけが問題視されているわけではない。あとで詳述するが、ネット上では石破首相がやることなすこと全てが批判の対象になっている。 

 

 石破政権は船出したばかりだ。一般的に民主的な先進国であれば、新しい政権が誕生して最初の100日間は世論もメディアも好意的に受け止める傾向が強く、これを「ハネムーン期間」と呼ぶ。ところが石破政権の場合、少なくともネット上ではそんな“蜜月期間”など存在しないようだ。 

 

 石破首相に対する批判の域を超え、“罵詈雑言”と化した投稿も珍しくない。なぜ、石破首相はこれほど嫌われてしまったのだろうか。 

 

 ここで気になるのが、総裁選の投開票前に行われた世論調査で、石破首相は「誰が新総裁にふさわしいか」との設問で常に上位に位置していたことだ。 

 

 総裁選の投開票は9月27日に行われた。その直前、毎日新聞は23日の朝刊に「自民党総裁選:次の総裁、石破氏26% 高市氏17% 全国世論調査」との記事を掲載した。社会調査研究センターが21日にスマートフォンのユーザーを対象とした調査を行い、その結果を報じたものだ。 

 

 調査の結果は石破首相が26%でトップ、2位は高市早苗氏で17%、この2氏が実際に決選投票に進んだことは記憶に新しい。ちなみに3位は小泉進次郎氏で14%だった。 

 

 さらに石破氏は鉄道、アイドル、プラモデルの熱烈なファンとして知られており、いわゆるオタク文化やネット民と親和性が高いとの声があった。にもかかわらず、首相に就任すると、いきなりネット上で袋叩きになったわけだ。 

 

 ITジャーナリストの井上トシユキ氏は「結局、石破さんがネット上で存在感を発揮できなかったことが、就任早々に炎上してしまった最大の原因だと考えられます」と言う。 

 

 

「総裁選に出馬した候補者のうち、石破さん、高市さん、小泉さんの3人は知名度が群を抜いていました。世論調査で3氏が上位に位置した理由でしょう。一方、ネットに目を転じると、高市さんなら“保守”、小泉さんなら“セクシー”や“構文”といった、代名詞的なキャッチフレーズが存在しました。ところが石破さんには何もありません。『石破さんはネット民に人気がある』と一部のメディアが過去に報じましたが、事実は違ったのです。そしてSNSのユーザーが『新総裁に選ばれた石破さんってどんな人!?』と戸惑ったことが、今回の炎上と密接な関係があると考えています」(同・井上氏) 

 

 今やXを使いこなす高齢者も少なくない。SNSを中心に作られる“ネット世論”も、老若男女の多様な意見が反映されている。大手メディアが実施する世論調査の回答母集団と、明確な違いがあるわけではない。むしろ、ほとんど同じだと言って過言ではないという。 

 

「にもかかわらず、石破さんだけは“ネット世論”と世論調査の数字には相当な乖離が認められます。このことから『SNSを日常的に使う人』は石破さんへの関心が低く、『SNSを使っても投稿まではしない人』や『SNSを日常的に使わない人』に石破さんの支持層が存在するのでしょう。自民党の新総裁が決まった瞬間、石破さんに関心の乏しいXのユーザーは戸惑ったと考えられます。そして最初に投稿を行ったのは、高市さんの支持層でした。彼らが石破批判を繰り広げたことがネット世論の形成に大きな影響を与えました」(同・井上氏) 

 

 高市氏の支持層は、もちろん普段は自民党を支持している。だが石破総裁が誕生すると、従来の主張を変えたという。 

 

「高市さんはネットで人気があります。高市さんを支持する人たちの投稿も注目され、拡散力も高い傾向があります。そして一部の高市さんの支持層は総裁選の結果を受け、『石破さんを選んだ自民党に失望した。今回だけは自民党ではなく、他党に投票しよう』と呼びかけたのです。むしろ自民党は総裁選でお灸を据えられ、下野したほうがいい。かえって高市さんのチャンスになる。野党になれば石破さんは総裁を辞任し、次は高市さんが選ばれる。高市総裁の元で自民党の再編成を行い、政権を奪取して高市首相を誕生させるのだ──という意見が相当な数に達したのです」(同・井上氏) 

 

 当然だが、ネットユーザーは自民党支持層に限らない。立憲民主党や日本維新の会など、野党の支持層も多い。 

 

 自民党支持層のうち、いわゆる“保守派”や“最右派”のネットユーザーが石破批判に転じると、それに続いて野党の支持層も参加した。 

 

 

「こうして右も左も一斉に石破さんを批判するようになりました。さらに石破政権の問題点が次から次へと明るみになります。総裁選時の主張とは異なり、石破さんは衆議院の早期解散を決めました。閣僚人事が明らかになると、週刊文春が平将明デジタル相の金銭問題を報じ、牧原秀樹法相がSNSに投稿していた内容が問題視されました。結果、もともと石破さんに関心が薄かった“穏健保守”や“中道左派”のネットユーザーも、『こんな問題の多い首相や閣僚は叩くべきだ』と判断し、批判的な投稿を始めました。こうして石破内閣は炎上状態になったというわけです」(同・井上氏) 

 

 今後の石破政権に大きな影響を与える可能性があるのは、朝日新聞デジタルが10月3日に配信した「自民、『裏金議員』原則公認へ 衆院選で比例重複も容認、首相方針」の記事だ。 

 

 自民党の裏金事件に怒っている国民は極めて多い。しかも保守や革新といった政治的スタンスを問わない。ネット上では右も左も中道も石破首相を批判し、まさに四面楚歌の状態になってしまった。 

 

「もし高市さんが総理総裁に選ばれていれば、いわゆる“ネトウヨ”と“ネトサヨ”の全面戦争になったでしょう。小泉さんなら“構文”のパロディなど、いわゆる大喜利状態になったはずです。そして石破さんの場合は自身の政権と自民党への批判が殺到しています。ネット上の炎上を見ると、自民党にとって石破さんを総裁に選んだことは悪手だったのかもしれないと思うことさえあります。いずれにしても、もう解散総選挙の準備は始まっています。ネット上では自民党に強い逆風が吹いていますが、これが実際の投票行動に影響を与えるのか、非常に重要な注目ポイントでしょう」(同・井上氏) 

 

デイリー新潮編集部 

 

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